トレンドテクノロジー解説【ブロックチェーン】

第8回 ブロックチェーンで国際貿易の手続きを劇的に容易化

国境を越えた貿易をする際には、輸出元と輸出先両方の国や地域で、様々な法令に沿った煩雑な手続きが必要になります。また、1つの品のやり取りに関わる企業や人の数も膨大です。例えば、生花をアフリカから欧州に運び込むには、200以上の書類を整え、30社の企業、100人以上の関係者が関わることになるそうです。海外旅行のおみやげを持って帰るように、簡単にはいきません。

貿易に際しての煩雑な手続きは、必要なものではありますが、円滑な物流を妨げる要因となっていることは確かです。例えば、貿易貨物の約9割を担っている海運では、半世紀以上前にコンテナが導入されて以来、積載量や運ぶ作業の効率は劇的に向上しました。しかし、事務的な手続きには大きな変化がなく、今では文書による手続きにかかるコストは、実際の輸送費用の2倍以上を占めるようになっていると言われています(図1)。そして、この状況を一気に解決する手段として、ブロックチェーンの活用に期待が集まっています。

図1 国際貿易で求められる煩雑な手続きをブロックチェーンを活用して容易化 出典:AdobeStock

物流コストを削減、輸送時間も短縮

世界最大の船会社であるデンマークのA.P. Moller-Maersk社を中心として、ブロックチェーンを用いた貿易に関わる手続きを簡略化する、情報プラットフォームの構築が進められています。書類での手続きや管理をデジタル化し、物流に関わるすべての関係者が、貨物の位置や輸送状況、通関に必要な書類の準備状況、受領証などあらゆる文書データを瞬時に共有・確認できるようにするものです。ブロックチェーンをベースにすることで、トレーサビリティの確保やデータの改ざん防止もできます。これによって、物流コストの削減が進むとともに、輸送時間を40%も短縮できると言います。

貿易に関わる作業の効率化を狙ったブロックチェーンの活用効果は絶大であり、世界中の物流システムに展開されつつあります。イスラエル最大の貨物運送会社であるZim社は、電子船荷証券の取引を効率化する情報プラットフォームをブロックチェーンを活用して構築。その他にも数多くの実証実験が、物流関係の企業によって進められています。ブロックチェーンの活用によって、国際貿易のハードルは低くなり、国を越えたモノの動きが急激に活発化するかもしれません。また、世界各地の消費者の嗜好の変化に柔軟かつ迅速に対応できるようにもなることでしょう。

著者情報

林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

伊藤元昭
エンライト 代表

1989年東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 材料科学専攻 修士課程修了。同年、富士通に入社。人工衛星搭載用の耐放射線デバイス、SOIデバイスの研究開発に従事。1992年、日経BP社に入社 日経マイクロデバイス、日経エレクトロニクスの記者として、半導体、電子部品の業界・技術に関する記事を執筆、1997年編集委員、1998年 副編集長。2003年より、三菱商事と日経BPが合弁で設立したコンサルティング会社、テクノアソシエーツ プリンシパル 技術戦略担当として、電子・機械分野の事業・技術戦略のコンサルティング事業に従事。2007年、日経エレクトロニクス、日経マイクロデバイスにて、編集委員、副編集長。2009年、電子・機械局広告に企画編集委員として転属。2014年、日経BP半導体リサーチ 編集長。同年、株式会社エンライトを設立。

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