ケーキで未来を可視化。富士通がユニークな形で環境問題へ一石を投じる

テーブルの上に置かれる黒いケーキ

環境問題に関心のある専門家やメディア、インフルエンサーを招待し、ケーキを通して環境問題を考えるイベント「わたしたちの空気を考えるCARBON CAKES」が、富士通主催のもと開催されました。

今までの富士通のイメージにはない本イベント。ソーシャルデジタルツイン™技術を用いた環境問題解決への富士通の取り組みについて、ご参加された有識者によるトークセッション、イベント後のフジトラニュース独自取材の様子とともにレポートします。

目次
  1. 食べられないケーキが披露されたイベント 「わたしたちの空気を考えるCARBON CAKES」
  2. トークセッション 「見える化することで解決できる環境課題とは」
  3. イベント前後で富士通のイメージはどのように変わったか

食べられないケーキが披露されたイベント「わたしたちの空気を考えるCARBON CAKES」

人々の社会・経済活動から生み出されるCO2は気候変動に影響を及ぼし、PM2.5は健康被害をもたらします。しかし、多くの人はそれらを簡単に認識できるわけではありません。なぜなら目に見えないものだからです。人は、それらの脅威が「可視化」されることで初めて認識することができます。富士通はCO2やPM2.5を「ケーキ」で象徴的に表現することで課題の自分ゴト化へ導くためのイベント「わたしたちの空気を考えるCARBON CAKES」を開催しました。この招待制のイベントでは、全国に多くのファンを抱える人気の「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」による一夜限りの食べられないケーキが披露されました。

黒色~白色の食べられないケーキ。
大気の状態に応じて、ケーキの色が変化していく。

ケーキは、大気の状態と私たちの行動がどのように社会に影響をもたらすかを表現しており、CO2やPM2.5の量に応じて色や形が変化しています。そのレシピは富士通のソーシャルデジタルツイン™技術を活用したものとなっています。

ソーシャルデジタルツイン™とは、コンバージングテクノロジー(※1)を用いて、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現するとともに、人々の行動特性に基づく未来の行動や起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援するものです。

イベントでは、食べられないケーキのお披露目の他、CARBON CAKESプロジェクトムービーの放映や、社員による展示の説明、有識者によるトークセッションが行われました。

テーブルの上にずらりと並ぶCARBON CAKES
白衣を着た富士通社員が、環境問題の「可視化」をコンセプトとしたCARBON CAKESの説明を招待客に行っている様子 環境問題の「可視化」をコンセプトとしたCARBON CAKESの説明を熱心に聞く招待客。
白衣を着るのは富士通社員。
  • ※1
    コンバージングテクノロジー: 特定の目的を達成するために2つ以上の異なる分野の科学や技術を融合した技術。特に、持続可能な社会の実現に向けて多様で複雑化する都市の課題を解決するために、人文社会科学と計算機科学の融合領域の研究開発に取り組む。

トークセッション 「見える化することで解決できる環境課題とは」

トークセッションでは、環境活動家の清水 イアン氏がモデレーターとなり、経済思想家の斎藤 幸平氏、起業家のハヤカワ 五味氏、タレントの新内 眞衣氏を迎え、富士通研究所 コンバージングテクノロジー研究所の山田 亜紀子とともに「見える化することで解決できる環境・社会課題」等についてお話いただきました。

有識者5名によるトークセッションの様子

清水 氏

まずはCARBON CAKESについての感想を教えて頂けますか。

ハヤカワ 氏

空気もケーキもどちらも口に入るものなのに、ケーキという形で空気の汚れがわかるとこんなにも心理的な抵抗感が増すことに驚きました。気候変動が進んでいると言われてもあまり実感できないですよね。暑すぎる日なんかに、やっと「あ、やばいかも」と思えるくらいだと思います。これがケーキで見えるのは面白いと思いました。

清水 氏

ところで富士通は、なぜこのようなケーキを作ろうと思ったのでしょうか。

山田

私たちは、人の行動変化を予測して見える化し、どのような未来が待っているかを予測するソーシャルデジタルツイン技術を用いて、社会課題の見える化・解決を目指す研究開発を進めています。可視化するにあたっては、レーダーチャートを使う場合がほとんどなのですが、これを身近なケーキで表現すれば、より課題を自分ゴト化できるのではないかと思ったからです。

清水 氏

このようなソーシャルデジタルツイン™技術をどのように活用できるでしょうか。

斎藤 氏

脱炭素に焦点を当てて考えてみます。2050年までに二酸化炭素の排出を実質0にすることが謳われていますが、これを本当に実現するには劇的に減らさないといけません。ただし脱炭素だけをがむしゃらに進めると経済が上手く回らず、様々な便利さが犠牲になります。ですから、どこから何を脱炭素していくのか色々な計画を立てることが大切です。ソーシャルデジタルツイン™技術を活用して、プランAではこの産業の脱炭素化を優先させる、プランBは経済よりもとにかく脱炭素だけを推し進める、というように色々なシナリオを提示できれば全員が納得する計画を実施できるようになると思います。

新内 氏

環境問題を考えてもどうしたらいいか分からないという層は多くいると思います。何個かパターンがあり選択できる未来があると、自ら納得して決めることができるのでいいですよね。また、ケーキを見て一番に思ったのは、子供でも分かりやすいということです。レーダーチャートだと小さい子供たちはわかりにくいですから。ケーキから環境問題が学べて最後には食べられるなんて素敵です。こういう技術が未来の環境問題を良い方に加速化させていくんじゃないかと思います。

ハヤカワ 氏

ビニール袋有料化やプラスチックのストロー廃止が、ビフォーアフターでどう変わったのか分からないように、環境問題解決のために何かアクションを起こしても、それが実際にどれだけ効果があったかは分からないことがほとんどだと思います。どうせ何にもならないという無力感だけが残るんですよね。でも実際に1年後はこうなる、10年後はこうなると可視化されれば「期待感」を持てていいなと思いました。

清水 氏

繋がりが断絶されていることが環境問題の根本にあります。例えば1本のペンを買うことで、どこかの木が伐採されたかもしれません。自分の行動が、どれほどのマイナスインパクトとなっているのかが一切見えない今の世の中に、繋がりを取り戻すという意味での可視化が促進されると、一人ひとりの正しい行動が見えてくると思います。

イベント前後で富士通のイメージはどのように変わったか

イベントの最後には食べられる白いケーキが提供されました。招待客は美味しいケーキとアップサイクルティーを嗜みながら、”富士通のソーシャルデジタルツイン™技術を用いた可視化によって、自分ができることは何か” 等について対話され、有意義な時間を過ごしているようでした。

食べられる白くて美しいケーキがズラリと並ぶ こちらは、イベント最後にご提供された食べられるケーキ
白い煙が上がる最後の仕上げの演出を楽しむ招待客の様子 ケーキの演出を楽しむ招待客

最後に、ご登壇者の皆様から、本イベント前後で富士通のイメージがどのように変化したかや、本イベントでの体験を通じて今後活かしたいことについて、コメントを頂きました。

新内 氏:私自身の就職活動等の経験から、富士通に持っていたイメージは「昔からある日本の大きな企業」「パソコンを売っている会社」でした。こんなにも環境を変えていくというビジョンを持った企業だとは知らなかったのですが、今日はそれを知れて良かったです。とても新鮮な体験でした。

清水 氏:ブロックチェーンやデジタルツイン等、先進的なことに関わられている企業だとは知っていましたが、今回のようにケーキといったお洒落なアイテムを用いて活動しているのはかなり予想外でした。富士通、変わってきているんですね。

新内 眞衣 氏(画面左)/ 清水 イアン 氏(画面右)

ハヤカワ 氏:「パソコンメーカー」といったくらいで、これといったイメージはありませんでしたが、今回、具体的な取り組みをお伺いし、ただモノを作るというだけに留まらず、広い視点で色々と取り組まれているんだということがわかりました。また、このイベントを通して可視化の重要性を強く感じました。私自身の事業においても、環境負荷や配送負荷を減らすために、簡易包装等を実施してきました。ただそれによってどの程度環境に影響があるのかについては、正直あまり説明できていなかったなと。今後はそういったことをお客様に具体的にお伝えしていけたらよいと思います。

斎藤 氏:真面目なイメージでしたが、ガラッと変わりました。これから違うことを始めて変わろうとしている気配・気概を感じました。社会を変える手段として、デモ活動等が挙げられますが、日本ではその規模は小さく影響力も少ないです。富士通のような大企業がビジョンやパーパスを持って動かしていくとその影響力は大きなものになりそうです。また、多くの人に理解してもらうためにケーキを使用するのは良いアイデアだと思いました。「食べる」ことは毎日する身近な行為なので。ただ、ここで終わりではなく、ここからどう繋げていくかを改めて課題として考える必要がありますね。本日は良い対話の場になったと感じます。

ハヤカワ 五味 氏(画面左)/ 斎藤 幸平 氏(画面右)

参加者の様子やコメントから、本イベントは大成功を収められたのではないでしょうか。しかし、ここで満足してはいけません。富士通は、今後もソーシャルデジタルツイン™技術を用いて“社会をまるごとデジタル化”することで、様々な社会課題にアプローチしてまいります。

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