トレンドテクノロジー解説【5G】

第10回 5Gで非常時に必要な物資を必要とするヒトに確実に届ける

モバイル通信では、時と場合によっては極めて多くの端末との接続が求められるケースが出てきます。その典型的なケースが、地震や台風など天災の発生時です。発生直後には、家族や仕事の取引先などの安否確認の電話やメールが殺到します。5Gが持つ超多数接続の特長は、こうした非常時に生かされることでしょう。災害発生時の5Gの貢献はこれだけではありません。避難しようとしている人たちを確実に誘導したり、避難者が必要とする物資を確実に送り届けたりするための物流に、5Gを活用する検討が始まっています。

混乱状況下で必要とする人に必要なモノを確実に届ける

公園や橋の下などで、「防災倉庫」と書かれた倉庫を見たことがある人もいるのではないでしょうか。ここには、ヘルメットや消火器、救急用品、テントなど非常時に必要な物資や機材が備蓄されているのです。そして、非常時にはそれを必要とする人の元に届けることになります。

ただし、災害発生後の混乱した状態の中で、必要なモノを必要な人に確実に届けるのはかなり難しいことです。散在する避難所のそれぞれで足りない物資が出てくる傾向があります。非常時の確実でタイムリーな物流を実現するためには、相応の仕組みが必要なのです。

そこで、支援物資の1つ1つにRFIDタグを取り付け、さらに支援を必要とする人にも端末を持ってもらい、5Gを通じて支援物資の位置や中身を把握しながら的確に届ける仕組みの構築が検討されています。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、神奈川県横須賀市において、5Gの超多数接続の特長を生かして非常時の物流の円滑化が可能なことを実証する実験を行いました(図1)。

図1 約2万台の端末を同時接続し、支援物資とそれを求める避難者をマッチング 出典:NICT

市内103カ所の防災倉庫、避難所となる69校の小中学校を対象として、1基の基地局で約2万台の端末と同時接続できることが確認されました。この実験では、従来の4Gに当たるLTE方式でも同じ条件で試しましたが、約100台の端末でも、一斉接続ができない場合があったといいます。あまりその効果を実感したくはない例ではありますが、天災が頻繁に発生する日本では欠かせない仕組みになりそうです。

著者情報

林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

伊藤元昭
エンライト 代表

1989年東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 材料科学専攻 修士課程修了。同年、富士通に入社。人工衛星搭載用の耐放射線デバイス、SOIデバイスの研究開発に従事。1992年、日経BP社に入社 日経マイクロデバイス、日経エレクトロニクスの記者として、半導体、電子部品の業界・技術に関する記事を執筆、1997年編集委員、1998年 副編集長。2003年より、三菱商事と日経BPが合弁で設立したコンサルティング会社、テクノアソシエーツ プリンシパル 技術戦略担当として、電子・機械分野の事業・技術戦略のコンサルティング事業に従事。2007年、日経エレクトロニクス、日経マイクロデバイスにて、編集委員、副編集長。2009年、電子・機械局広告に企画編集委員として転属。2014年、日経BP半導体リサーチ 編集長。同年、株式会社エンライトを設立。

この記事に関するお問い合わせ

ページの先頭へ