トレンド&デジタルテクノロジー解説【キャッシュレス社会】

第5回 加速するQRコード決済に必要なインフラはネットと充電環境

国内でキャッシュレス決済と言えば、クレジットカードか交通系ICカードによる決済が一般的でした。そうした中、新しいキャッシュレス決済として注目を集めているのがスマホアプリを用いたQRコード決済です。

QRコード決済とは、あらかじめ専用スマホアプリをダウンロードした上で、そのアプリをクレジットカード、電子マネー、銀行口座などと紐付けたり、現金を先払いしたりするなどの準備した上で利用するキャッシュレス決済方法です。2017年以降、多くの国内企業がQRコード決済サービスの提供に乗り出しています。

QRコード決済の方法は大きく二つあります。

一つは、店舗が商品の料金情報をプリントしたQRコードで掲示し、利用者がスマホアプリでそのQRコードをスキャンすることで決済する方法です。ここで用いられるQRコードは時間経過とは無関係に普遍的に使えるものなので「静的コード」と呼ばれています。お店側は静的コードを印刷した紙を用意すればいいので、手軽にQRコード決済で商品を販売することが出来ます。実際、QRコード決済先進国である中国では、露天商などの小さな店舗でもQRコードをプリントした紙を並べています。QRコード決済は手数料が安く、静的コードなら店舗側の投資が少なくて済みますし、すべてQRコード決済にして現金を取り扱わないようにすればお店側の作業負荷を大きく減らせることができるので、小さな店舗でも導入メリットは大きいです。

ただし静的コードは人間が見ても内容を理解できないので、悪意を持つモノが店頭に掲示してあるQRコードを差し替えて入金先を別のところにするという詐欺犯罪が問題になっています。

もう一つの方法は、利用者が自分のIDに相当するQRコードをスマホアプリで生成し、それを店舗側に読み取ってもらうやり方です。スマホアプリで生成するQRコードは、生成する時刻によって異なるため「動的コード」と呼ばれています。動的コードは専用サーバーを経由して正しい個人IDに紐付けられます。この仕組みがあるので、高いセキュリティが実現されます。この方法での決済を実現する場合には、お店のPOS端末にQRコード決済用の読み取り機能を持たせる必要があります。国内では、例えば富士通が提供する「スイッチングゲートウェイ」のような決済中継サービスを利用すれば対応できます。

富士通のQRコード決済対応サービス「スイッチングゲートウェイ」の仕組み QRコード決済サービスを小売店舗のPOSレジで利用可能にする。対象決済サービスはAlipay、Wechat Pay、Origami Pay、d払い、PayPay、pring、LINE Pay、楽天ペイなど

国内におけるQRコード決済の利用促進は、「キャッシュレス・ビジョン」の提言を踏まえて2018年7月に発足した「キャッシュレス推進協議会」が中心になって進められています。同協議会は、産学官を横断するメンバーで組織されており、国内外の関連諸団体・組織・個人、関係省庁との相互連携を図り、キャッシュレスに関するさまざまな推進活動を通じて、早期のキャッシュレス社会を実現することを目的としています。

キャッシュレス推進協議会の推進活動の一つに、QRコード決済を普及するための標準化活動があります。今は決済サービス事業者ごとに作られている決済方法や手続きを標準化することで、多くの利用者にとって使いやすい決済方法に進化させようという狙いがあります。QRコード決済の標準化活動の結果については、2019年春にまとめられて同時期に発行が予定されている「キャッシュレス・ビジョン2019」に掲載されることになるでしょう。

QRコード決済の標準化の概要(出所:キャッシュレス推進協議会)

店舗においてQRコード決済を導入するときに注意したいことは、店舗側のレジ担当者の教育です。たくさんの企業が参入していることから、企業名やブランド名が似ていることや、同一グループで複数の決済サービスを提供するケースが生まれています。その結果、利用者自身もブランド名を間違ったり、サービスの使い方を誤認したりすることがあります。

他の注意点としては、利用環境を整備があります。QRコード決済は、スマホアプリがリアルタイムで通信することを前提とした決済手段です。スマホが電波をつかめないケースを想定してWiFi環境を整備しておくのはもちろんですが、スマホの充電切れ対策として中国では街中で見かけるレンタルバッテリーを用意しておくのも一案かもしれません。

中国ではさまざまな場所でレンタルバッテリーを借りることができる(上海のWeWorkで撮影)

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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