自動車への応用を想定した80GHz付近のミリ波帯を透過する多層周波数選択性表面(Multilayer FSS)を解析した事例です。電界分布を可視化し、透過係数スペクトルを算出します。パラメータスイープ機能を用いて金属パッチ幅に対する透過係数の依存性を評価しています。有限サイズの周波数選択板モデルも解析し、ミリ波帯における透過特性を検証しています。
FSSのバンドバス特性を広帯域化するための一手法として、多層構造を用いたFSSが提案されています(*1,*2)。本事例では、文献2で示されているパッチ-ダイポール-パッチ(PDP)の素子構成に基づき、自動車への応用を想定して80GHz付近のミリ波帯に合わせて寸法をスケールさせた多層FSS構造(下図)を解析します。
参考文献:
(*1)”Frequency-selective surfaces to enhance performance of broad-band reconfigurable arrays”, Y.E. Erdemli et.al., IEEE Trans. Antennas Propagat.. Vol.50, no.12, 2002
(*2)“THz periodic surfaces to enhance spectroscopic measurements”, W. Yeo et al., Proc. ICEAA, 2012.
解析領域 | 1.8mm x 1.8mm x 10mm |
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格子数 | 12.5万格子
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励振波 | 差分ガウシアン波(~120GHz,平面波) |
境界条件 | 吸収境界条件(図中灰色部)
周期境界条件(図中赤色部) |
Poyntingにより解析した多層FSSモデルの透過係数スペクトルを以下に示します。透過係数は80GHz付近の広い周波数範囲でほぼ1となっており、広帯域なバンドパス特性が得られていることがわかります。
解析した62GHzと77GHzの電界分布を以下に示します。62GHzではFSSの後方に波は伝搬していないのに対し、77GHzでは正弦波の振幅がほぼ一定で伝搬している様子が確認できます。
Poyntingのパラメータスイープ機能を用いて、金属パッチ幅wに対する透過係数の依存性を評価した結果を以下に示します。wを大きくすると、透過係数のピークが低周波側にシフトし、帯域幅も狭くなっています。構造パラメータを変化させることにより、ミリ波の広帯域な透過特性が制御できることを表しています。
解析領域 | 4cm x 12.8cm x 9.2cm |
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格子数 | 2億6691万格子
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励振波 | 連続波(77GHz/62GHz,ガウス分布) |
境界条件 | 吸収境界条件(全6面) |
単位構造 | 上述の多層FSSの解析モデルと同じ |
解析した62GHzと77GHzの電界分布を以下に示します。有限サイズの周波数選択板の場合であっても、62GHzではFSSの後方に波はほとんど伝搬しないのに対し、77GHzでは正弦波の振幅がほぼ一定で伝搬していることがわかります。
62GHz
77GHz