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Japan

Poynting for Microwave 解析事例
メタマテリアル完全吸収体の吸収特性解析

電磁メタマテリアルに基づく完全吸収体を解析した事例です。電気リング共振器とカットワイヤから構成されるメタマテリアルをモデル化し、マイクロ波帯での吸収特性を評価します。パラメータスイープ機能を用いて比誘電率に対する吸収率の依存性を評価しています。

メタマテリアル完全吸収体(Metamaterial Perfect Absorber: MMPA)

メタマテリアル(MM)は、負の屈折率媒質など、自然界には通常存在しない物理特性を実現する人工的な複合材料です。メタマテリアルは波長に比べて微細な構造を有し、その電磁特性は微細構造の幾何学的形状や材料定数によって制御できるため、マイクロ波・ミリ波からテラヘルツ波・光波まで広い周波数帯で応用が期待されています。

メタマテリアルの巨視的な電磁特性は、複素誘電率ε(ω)= ε1 + j ε2と複素透磁率μ(ω) = μ1 + j μ2によって表現されます(jは虚数単位)。従来のメタマテリアル応用では、負の屈折率媒質を作り出すため、複素誘電率と複素透磁率の実数部(ε1, μ1)に着目していました。これに対して、損失に対応する複素誘電率と複素透磁率の虚数部(ε2, μ2)にも着目することでほぼ100%の吸収率を有する「完全な電磁波吸収体」を実現できることが2008年に示されました(*1)。文献[1]で提案されたメタマテリアル完全吸収体は、電気的・磁気的な共振現象を独立に制御することで入射電磁波の電界と磁界両方を吸収し、かつ周囲の空間ともインピーダンス・マッチングするというアイデアに基づいて設計され、直接の応用としてボロメータが想定されています。

下図にPoyntingを用いてモデル化した10GHz付近の電磁波のみを吸収するメタマテリアル完全吸収体(MMPA)を示します。文献1と同様に、このMMPAは薄いFR4基板(緑色)の表裏にそれぞれ実装された電気リング共振器(表)とカットワイヤ(裏)から構成されます。

メタマテリアル完全吸収体

参考文献:
(*1)“Perfect metamaterial absorber”, N.I. Landy, et al., Phys. Rev. Lett., vol.100, 207402, 2008.

解析モデル

解析領域 40mm x 4.2mm x 12mm
格子数 20.45万格子
励振波 差分ガウシアン波(~15GHz,平面波)
境界条件 周期境界条件(図中灰色部)
吸収境界条件(図中赤色部)

解析モデル

解析結果

吸収率

Poyntingにより解析したMMPAモデルの吸収率スペクトルを以下に示します。吸収率は10GHz付近でほぼ1となっています。したがって、下図はこの構造がピーク周波数の電磁波に対して完全吸収体として振る舞うことを表しています。

吸収率

表面電流(定常状態)

ピーク周波数での電気リング共振器(基板表側)とカットワイヤ(基板裏側)上の表面電流ベクトルの解析結果を以下に示します。逆平行の表面電流が発生している様子が確認できます。この特徴は本構造における磁気的な共振現象の存在(*2)を表しています。

表面電流(定常状態)

参考文献:
(*2)“A metamaterial absorber for the terahertz regime: Design, fabrication and characterization”, H. Tao et al., Opt. Express, vol.16, pp.7181-7188, 2008.

電界分布のアニメーション

ピーク周波数での電界分布のアニメーションを以下に示します。

電界分布のアニメーション

基板の比誘電率に対する吸収率の依存性

Poyntingのパラメータスイープ機能を用いて、基板の比誘電率εrに対する吸収率の依存性を評価した結果を以下に示します。εrを大きくすると、吸収率のピークが低周波側にシフトしていきます。基板材料のパラメータを変化させることにより、完全吸収体の吸収特性が変化することを表しています。

基板の比誘電率に対する吸収率の依存性    

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