富士通では2020年よりフジトラ(Fujitsu Transformation:IT企業からDX企業へ生まれ変わるための変革プロジェクト)を開始しています。グローバルで12万人を超える社内を変革するのは容易ではありませんが、社長自らがリードするトップダウンと全員参加型のボトムアップ、両輪によって粘り強く実践する中で日本型DX推進の形が見えてきつつあります。
本記事ではフジトラを通した自社実践ノウハウを活かし、同じようにDXおよび企業変革にチャレンジされているお客さまに伴走支援するDX Business Consultant(以下、DXBC)の取り組みを、DXBCの一員である間瀬 正康よりご紹介します。
- 目次
フジトラ(Fujitsu Transformation)で培ったもの
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタルを活用してビジネスモデルや既存業務のプロセスを大胆に変革し、企業の競争力を高めることです。富士通でも「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現に向け、4Xに取り組みながら、フジトラ(Fujitsu Transformation)を推し進めています。
2020年から開始したフジトラでは、グローバルで業務とシステムを標準化していくOneERP+という大規模なプロジェクトや、社員のWell-beingを実現するWork Life Shift等、これまで多種多様なプロジェクトを実施してきました。
- [記事] 富士通執行役員が語るDX推進「OneERP+」の今 不確実な時代こそグローバルなデータドリブン経営を
- [記事] 働き方改革の本質とは。Work Life Shift 2.0で富士通が目指すもの
そして、フジトラによって様々なフレームワークも生まれました。例えば、お客さまや社員の声を起点に変革の風を起こす「VOICEプログラム」や、個人のパーパス(存在意義)を削り出し、言葉にして共有する対話型プログラム「パーパスカービング」などは変革の原動力となっており、お客さまから紹介のご依頼をいただく機会も多いです。
DXBCでは上記のフジトラのフレームワークを活用しながら、自社での実践ノウハウを基に、企画立案から施策実行・定着化までシームレスにお客さまを伴走支援するサービスを提供しています。次の章では、自社で上手くいった経験だけでなく、上手くいかなかった経験をも強みに繋げながら、お客さまのDXをともに考えるDXBCの伴走支援の取り組みについて詳しく触れます。
~お客さまと共に~DX Business Consultantによる支援内容
DXBCにおける、自社実践に基づく伴走支援の一例をDXBCメンバーに聞きました。
――DXBCの活動概要を教えてください。
渡邉: 先の見通せないVUCAの時代にお客さまが求めるのは、要求事項を忠実にこなすベンダーではなく、お客さまと同じ目線に立ち、悩み、支えあい、共感しながら共に進む伴走者です。DXBCはフジトラで得た知見を活かしながら、データを活用したデータドリブン経営やプログラムマネジメント(※1)等、様々な形のご提案をしています。その中でもDXジャーニーのファーストステップである「ビジョン策定」のご支援例についてお話します。
DXを進める上ではまずビジョンを策定することが重要です。ビジョンが無いままDXを試みてしまうと目指すべきゴールや変革の必要性が共有できていないために、変革への抵抗感が生まれ、活動が頓挫してしまったり単なるデジタル化に留まってしまったりと、狙った効果を得られません。
ただ現状は、明確なDXビジョンが定まっていない、経営ビジョンと紐づいていない、そんな状態の中、IT部門主体でDXにチャレンジされているお客さまが多くいらっしゃいます。その結果、行き詰まってしまい、支援のご相談をいただくケースが増えている印象があります。そこでお客さまがビジョンを腹落ちさせて自分事化するためにも、一方的にアドバイスするのではなく、ご納得いくまで私たちと一緒に考えていただけるようなご支援の形を心掛けています。
――ビジョン策定における具体的な支援内容やポイントを教えてください。
村田: 例えば、データドリブン経営を実現したいお客様をご担当する場合、まずはデータを集めてどう活用するかを決めないといけません。しかし、会社が大きくなればなるほど既存のシステムによる業務が動いているため、難易度は高くなりますよね。そこで、まずは経営トップに直接インタビューを実施します。強い推進力を持って変革を断行するためには必ずトップのコミットメントが必要になるからです。
そして、そこで掘り下げた「ありたい姿」をベースに各現場のトップおよび、キーマンを巻き込んだワークショップなどで「ありたい姿」の解像度を上げていき、言語化だけでなく視覚的にも訴えられるようなビジョンマップに落とし込んで全社員に浸透するようにします。ちなみに富士通にはデザイナー部門もあり、きめ細やかな絵を描けることも、お客さまには喜んでいただけています。
また、持続的で全員参加型の変革にするためにはチェンジマネジメント(※2)も必要となり、そのために整備しているフジトラフレームワークをしっかりと活用し、適宜、情報提供しながら一緒に考えることを意識しています。このように自ら実践した経験があるからこそ、お客さまと同じ目線に立つことができ、本当の意味でお客さまに共感できているのだと感じます。
- ※1 プログラムマネジメント:複数のプロジェクトを束ねて全体を管理し、お客さまのプロジェクトを成功に導く。
- ※2 チェンジマネジメント:経営戦略や組織の変革を効率よく成功に導くためのマネジメント手法。人やお金といった既存の資源で成果を出そうとする従来型のマネジメントと異なり、ビジョンや戦略を考え出し、変革の必要性を社員に浸透させ、変革に向けた行動を根付かせることに重きを置く。
DXBCのその他の取り組み事例については、以下でもご紹介しております。ぜひご覧ください。
すべては個人のパーパス、企業のパーパス実現のため
本記事の執筆を担当した、同じくDXBCのメンバー 間瀬 正康のDX支援への意気込み
まず私のパーパスについてお話します。私のパーパスは「“挑戦”の楽しさを体現し、共感の輪を拡げていく」です。これまで20年以上ITに携わってきた経験を活かして少しでも社会貢献したい!世界と比べて日本の危機的なデジタル化遅れをなんとかしたい!という想いから、このパーパスを削り出しました。
現在、私は副業・兼業で自治体DXに参画し、総務省の自治体DX推進計画や内閣官房のデジタル田園都市国家構想に沿った取り組みにもチャレンジしています。富士通に入社したのは最近のことですが、入社した理由の根底は同じで、この会社のスケールの大きなリソースを上手く使えば、日本のDXを前進させることができると思ったからです。
Will(やりたいという気持ち)を伴うチャレンジは本当に楽しいものであり、それが自分事化、その先の成果にも繋がってくると実感しています。DXBCというロールを通じてこの気持ちに共感してくれる人を増やせるよう、今後もお客さま企業のDX推進に向けた伴走支援に取り組んでいきます。
富士通では自社のありたい姿を目指して、現在進行形でフジトラの活動を進めていますが、このような自社の変革は「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」という企業パーパス実現のための手段に過ぎません。今後も私たちは、自社の変革を推し進め、その経験や価値を、今回ご紹介したDXBC等の取り組みを通してお客さまにも提供してまいります。