富士通執行役員が語るDX推進「OneERP+」の今
不確実な時代こそグローバルなデータドリブン経営を

不確実性が増し未来の予測が難しい今、企業は生き残りのため変革が求められています。富士通では2020年よりIT企業からDX企業への変革を推進し、OneFujitsuの理念のもとグローバルでのデータドリブン経営と業務の効率化・標準化に取り組んでいます。その中核をなす「OneERP+プログラム」(以下、OneERP+)の責任者である富士通執行役員の馬場 俊介に、富士通の現在地、変革にかける想いや展望を聞きました。

目次
  1. 不確実な時代、アナログな業務が多く残る企業は生き残りへの変革を
  2. 2,000超のシステムをシンプル化、経営層から現場までリアルタイムデータを可視化できる環境へ
  3. グローバルで業務を標準化し、変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を
  4. 単なるITプロジェクトではなく、経営プロジェクトとしての全社推進が変革を成功に導くカギ
  5. 富士通の社内実践をリファレンス化し、日本企業のDX推進を支援

不確実な時代、アナログな業務が多く残る企業は生き残りへの変革を

――企業を取り巻く不確実さが増しています。今の時代をどのように捉えていますか。

馬場: これまでも企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化し、以前からVUCAの時代(※1)と言われていました。問題は変化のスピードが爆発的に速くなり、インパクトが想像を超えるほど強烈になったということです。変化の速さ、大きさにしっかりとついていかないと、市場のゲームチェンジが一瞬で起きてしまう、それが今の時代です。

これまでのように、中長期的な計画を立てて実行していくような地に足をつけた戦略も大切ですが、ゴールまでのマイルストーンを細かく区切り、小さなステップ、いわばMVP(Minimum Viable Product)を素早く作り上げ、実行し、フィードバックしながら次のステップを決めていく、企業にはそうした取り組みが求められています。

MVPを高速に回し、この変化のスピードや大きさに追いついていくためには、経験や知見に基づいた対応だけでは難しくなってきています。客観的なデータに基づいて判断しなくてはなりません。人に依存したアナログな業務が多い企業では、それが難しい。データを整備し、データに基づいて人が判断するという構造に変革していかないと企業は生き残れない状況に直面しているのです。

  • ※1
    VUCA:Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語。社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味する。
富士通株式会社 執行役員 EVP CDPO (Chief Data & Process Officer) 補佐 馬場 俊介

2,000超のシステムをシンプル化、経営層から現場までリアルタイムデータを可視化できる環境へ

――富士通は2020年からDX企業へ舵を切りましたが、その背景には、先ほどお話しいただいたような危機感があったのでしょうか。

馬場: はい。まず、成長戦略が描きづらくなっていました。2000年以降、売上高や利益率など数字的には大きな成長を達成できていなかったのです。新たな成長軌道に乗せるには、従来と同じことをやっていてはいけないということは明確でした。そこで、DX企業へと舵を切ったのですが、その根幹にあるのがグローバルレベルでのデータドリブン経営と、業務の効率化を意味するオペレーショナルエクセレンスです。

データドリブン経営の実現とオペレーショナルエクセレンスの追求でOneERP+を遂行

現在、富士通にはグループ全体で2,000以上ものシステムが存在しています。一つの業務においても、似たり寄ったりのシステムが複数あってcase-by-caseで使い分けており、それぞれの形式でデータを保管し、そのデータをかき集めて数字を集計しているのが現状です。これでは、欲しいデータをすぐに集めることができず、スピードを要するグローバルでの経営判断に大きな影響を与えかねません。

――そこで、取り組んだのが「OneERP+」ですね。

馬場: はい。OneERP+は、データドリブン経営を実現するためのコアプロブラムです。グループ・グローバルで1業務1システムとし、データの標準化を徹底的に行い、必要なデータをいつでも素早く取り出せる仕組みを作り上げることで、データドリブン経営を目指します。

そしてもう一つのオペレーショナルエクセレンスをわかりやすく示すと「業務の効率化」です。富士通に限らず、多くの企業でも各部門・部署毎のデータが統一されておらず、その中から必要な情報だけを抽出してExcelなどで集計しているケースは少なくないでしょう。その場合、集めた情報を加工・分析することに時間がかかってしまいます。これを富士通では「Excelのバケツリレー」と呼んでいます。

こうしたバケツリレー式でデータをやり取りしていると、経営トップから「この数字の根拠となるデータを示せ」となった場合に、データの出どころがすぐに分からず、回答にもかなりの時間がかかってしまいます。オペレーショナルエクセレンスとは、こうした問題を解消する取り組みです。

具体的には、共通のシステムを使い、同じプロセス、同じフォーマットでデータを整備することで、業務の無駄を省きます。データとプロセスの徹底した標準化です。全員が同じデータを素早く確認でき、数字の根拠となったデータをすぐにドリルダウンしてアクセスできるようになります。

拠点ごとに個別運用している業務をグループ・グローバルで標準化し、品質・スピード・効率を向上

富士通では、2,000以上のシステムをシンプル化し、グループ全体の戦略から現場でのオペレーションまで、つまり経営と事業を一気通貫で管理する仕組みの構築を進めています。グループ全体で、リアルタイムデータによる「データドリブン経営」の体制作りを目指しているのです。

――実際に進めてきて、現時点で見えている課題は何ですか。

馬場: データを徹底的に標準化する、標準化されたデータをもとに業務を効率化する、こうした取り組みはグループの「全体最適」の考え方に基づきます。一方、グループ各社や各リージョン、あるいは部署・部門で個別に最適化されてきた現場のやり方があるのも事実で、「すべてを全体最適に合わせることは難しい」という意見も出ています。

そうした意見や考え方に対して、現場の従業員に納得してもらうにはどうしたらいいのか。これは、OneERP+を遂行するにあたって、とても重要な課題です。そこで考えるべきことは、富士通にはデータドリブンと対になる「パーパスドリブン」があるということ。富士通ではパーパスを定めていますが、これは、いわば「北極星」のようなものだといえるでしょう。VUCA時代の企業経営は、荒波の大海を航海するようなイメージです。どちらの方向に船を進めるべきか迷ったら、北極星、つまりパーパスに立ち戻り、そこから再び舵を切ろうということです。

グループ各社や部署・部門を船に例えると、それぞれの船が「個別最適」だけで進んでしまうと富士通グループはバラバラになってしまいます。全ての船が北極星を見ながら、パーパスドリブンで経営の舵取りをしなければいけません。グループ各社、部署・部門の立場からすると、「全体最適にはメリットがない」と感じることもあるかもしれません。そうしたときには「北極星を見てください」と説明したいです。富士通グループ全体が目指すべき方向はパーパスであり、「そのために今取り組むべきことがOneERP+」ということです。

グローバルで業務を標準化し、変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を

――グローバルで標準化に取り組むことの重要性について、どのようにお考えでしょうか。

馬場: 富士通はヘッドクォーターが日本にあるグローバル企業です。経営においても日本の色がどうしても強くなりがちで、つい「日本ファースト」で考えてしまうこともあります。ただし、冒頭で説明したように変化のスピードとインパクトがこれまでにないほど大きくなっている今、グローバルで迅速かつ柔軟に対応できる体制の整備が急務です。そのためには、日本ファーストでなくグローバルファーストに意識転換することが大切なのです。

――とはいえ、グローバルで標準化するのは簡単ではないでしょう。どんなことに注意しながら進めていくのでしょうか。

馬場: 大切なことは、変革は「目的」とセットであるべき、ということです。目的を達成するために、「グローバルで標準化する」という手段があるのです。データドリブン経営も手段であり、目的ではありません。ところが実際に進めていると、目的と手段が曖昧になり、その手段を実現することが目的だと履き違えてしまうこともよくあります。そうならないように、常に「目的」は何かを見失わず進めることが大切です。

単なるITプロジェクトではなく、経営プロジェクトとしての全社推進が変革を成功に導くカギ

――OneERP+の推進を含め、富士通がDX企業への変革を成功させるためのカギはどこにあるとお考えですか。

馬場: 「OneFujitsu」という考え方を説明しています。これは、一番上位に位置するプログラムで、その下にOneERP+のようにOneから始まるプロジェクトがいくつかあります。富士通が取り組む変革プロジェクトでOneが付く条件としては、そのプロジェクトの「スコープがグローバルである」ことで、日本国内の富士通だけを対象とした取り組みではないという意味です。

さらに、Oneが付くプロジェクトは、OneFujitsuの理念のもとに全てが繋がっていなくてはなりません。つまり、富士通がDX企業への変革を成功させるには、Oneが付く各プロジェクトが全て連動して動くことが大切なのです。そのために、OneERP+をはじめ、OneCRMなど各プロジェクトを横断的に把握し横串を通すようにガバナンスを強めることも必要だと考えています。グローバルをスコープに、OneERP+以外のプロジェクトも連動させて、DX企業への変革に取り組んでいる、それが現在の富士通の姿であり、全グループでの変革を成功に導くカギだと考えています。

OneFujitsuで目指すのは富士通グループの持続的な成長と収益力の向上

富士通の社内実践をリファレンス化し、日本企業のDX推進を支援

――今後、OneERP+の取り組みをどのように進めていきますか。

馬場: 現在、OneERP+は要件定義が終わり、実行フェーズに入っています。大きな変革やステークホルダーが多い中での変革を成し遂げるのに、「魔法」はありません。小手先の魔法を探すことに時間を使うよりは、地道に一つひとつ、課題を見つけて解決し、関係者に納得してもらうという取り組みが結果的に一番の近道になる。これは、過去に何度も経験してきました。

富士通の従業員へ、OneERP+をはじめとする変革の当事者は「みなさん一人ひとりです」ということを強調したいです。変革は「誰かがやること」「誰かがやってくれること」ではなく、社員一丸となって、まさにOneFujitsuとして取り組むことなのです。DX企業への変革に向かう船はすでに動き出しました。従業員に早くこの船に乗ってもらいたい。そして、今後はOneERP+の社内実践で得た知見、ノウハウを最大限に活用し、お客様のDX推進を強力にご支援したいと考えています。

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