6/5は世界環境デー!
「カーボンニュートラル」について改めて考えてみませんか

今、世界中で、カーボンニュートラル(カーボンニュートラリティ)に向けた取り組みが活発化しています。さまざまなメディアで「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といったキーワードが取り上げられるようになり、多くの企業や自治体で様々な取り組みがされています。本稿では、カーボンニュートラルに向けた世界各国の優良事例、富士通の取り組みなどを、6/5の世界環境デーに合わせて紹介します。「そもそもカーボンニュートラルってなに?」「世界ではどんな取り組みがトレンドになっているの?」などなど……、“カーボンニュートラルの今とこれから”を紐解いていきましょう。

目次
  1. カーボンニュートラルとは?なぜ実現するべきか
  2. カーボンニュートラルはもう古い!? 世界のトレンドは「その先」へ
  3. 大企業だけでなく中堅企業も。参考にしたい世界の取り組み
  4. 国内の状況と富士通の取り組み─国内でもいよいよ浸透フェーズへ!

カーボンニュートラルとは?なぜ実現するべきか

カーボンニュートラル(カーボンニュートラリティ)とは、人間の営みによって生まれた温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いて、プラスマイナスゼロにしようという考え方です。

大気中に排出される温室効果ガスのうち、もっとも排出量が多いのが二酸化炭素です。実に全体の65%が化石燃料由来の二酸化炭素だと言われており、特に先進国の企業が事業活動によって排出する二酸化炭素が大きな問題になってきました。また、家畜のゲップなどに含まれるメタンガスも全体の約15%と比較的大きな割合を占めています。

これらをこのまま放置していると、地球の気温はどんどん上昇すると言われています。既に世界の平均気温はここ100年で0.73度上昇しており、日本の平均気温に至っては約1.3度も上昇しているのです。現時点で豪雨や猛暑などさまざまな影響が出ていますが、今後は、例えば海面の上昇によって消滅する国が出てきたり、豪雨や猛暑によって失われる命が増えたり、生命が育つ土壌が消えていく可能性も……。より深刻な気候変動や生態系への影響が予測されており、まさに待ったなしの状態だと指摘されています。

こうした状況をなんとかすべく、2015年のパリ協定で「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)」「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」が合意されました。これは全世界が選んだ手段であり、これによって、世界中で急速に取り組みが進められるようになったのです。

カーボンニュートラルはもう古い!? 世界のトレンドは「その先」へ

最近、注目を集めているのが、「カーボンポジティブ」や「リソースポジティブ」といった言葉です。これは、「温室効果ガスの量をプラスマイナスゼロにする」というところからもう一歩踏み込んで、「温室効果ガスの吸収量を増やし、排出量をマイナスにしよう」という考え方。ヨーロッパをはじめとする国々のカーボンニュートラル先進企業やグローバル企業が提唱し始めており、カーボンニュートラルの先を行く考え方として話題になっています。

これまでに、イギリスに本社を置く大手消費財メーカーや、アメリカの大手アウトドアメーカー、スウェーデンの大手家具メーカーなどがカーボンポジティブに関する声明を発表しており、なかには「カーボンポジティブに向けて数百億の投資を行う」と表明した企業もありました。

世界のトレンドは、カーボンニュートラルのその先へ─。日本でも進み始めているカーボンニュートラルですが、ワールドワイドでは、考え方、取り組みともに大幅に進展しつつあるのです。折しも、政府の働きかけによって国内でのESG投資()が活発化してきた昨今、日本企業も、カーボンニュートラルだけでなくその先にあるカーボンポジティブを意識して、経営計画や方針を策定する必要があると言えるでしょう。

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大企業だけでなく中堅企業も。参考にしたい世界の取り組み

では、世界の企業は、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。世界のユニークな取り組み事例をいくつかご紹介します。

アメリカの大手コーヒーチェーンは、2021年3月、二酸化炭素、水、廃棄物のフットプリントを半減させる環境目標を正式に決定し、「リソースポジティブ」を実現すると宣言しました。具体的には、カーボンニュートラルなコーヒー(生豆)づくりに取り組み、その過程で使われる水を2030年までに半減させるという目標を設定しています。注目したいのは、この企業が2001年には環境問題に関するチームを発足させているというところ。実に20年以上前から危機感を持って環境問題に取り組み、調査や研究を行って、段階的に経営計画のなかに目標や施策を盛り込んできたのです。店舗で使用電力の再エネルギー化、プラスチックストローの廃止など多くの施策を行った末のリソースポジティブ宣言だということを理解しておく必要があるでしょう。

もうひとつ紹介したいのが、欧州の大手タイヤメーカーの取り組みです。同社では、レース用タイヤの天然素材比率を上げ、「脱炭素タイヤ」を開発するプロジェクトを進めています。2021年6月には、環境に良い持続可能な材料比率を46%まで上げたタイヤを開発したと発表、2050年までに持続可能な材料比率を100%にする目標を表明しています。同時に事業活動における脱炭素化も掲げ、2050年にはカーボンニュートラルを達成する構え。自社の製品と事業活動の両輪で、総合的に脱炭素化を実現することを目指しています。

ヨーロッパでは、大企業だけでなく中堅企業での取り組みも盛んです。イギリスのハーブティーメーカーは、オフィスで消費する電力を100%再生可能エネルギーに切り替える取り組みを行いつつ、消費者に向けて「ケトルで沸かすお湯は必要量だけにしてほしい」「省エネ仕様のエコケトルを使用してほしい」と啓蒙。顧客に対しての呼びかけも積極的に行っています。また、イタリアのワインメーカーは、ワイン倉庫の温度管理に太陽光発電を使用する、ボトルにリサイクルガラスを使用するなどの工夫を行い、大幅に二酸化炭素排出量を減らすことに成功しました。

企業によって規模や内容はさまざまですが、多くの企業ができることから少しずつ始め、長期的な目標の達成へとつなげているのです。カーボンニュートラルに向けた取り組みは、先送りにせず、今始めることが肝要。時間がかかると心得て、「準備ができてから」と考えるのではなく、着手できるところからすぐに始めるようにしたいものです。

国内の状況と富士通の取り組み─国内でもいよいよ浸透フェーズへ!

最後に、国内の現状と富士通の事例を見ていきましょう。
日本では、カーボンニュートラルを目指す自治体を「ゼロカーボンシティ」と認定し支援する取り組みや、火力、原子力、再生可能エネルギーを組み合わせて発電する「エネルギーミックス」の取り組みなど、政府が主導もしくは支援する活動が進んでいます。また、主に大企業を中心にカーボンニュートラルへの取り組みが進み、例えばエコ住宅の開発・販売を強化する住宅メーカーや、EV車の販売比率を大幅に上げる自動車メーカー、工場の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替える物流企業など、非常に多くの企業が優良な取り組みを行っています。

富士通でも様々な取り組みを実施しています。
2021年4月より、富士通グループで有数の大規模事業所である川崎工場(本店)にて使用する電力量をすべて再生可能エネルギーに変える取り組みを開始(※1)。同年9月からは汐留本社事務所も同様にすべての電力を再エネ化しました。現在、データセンターなど各施設の再エネ化も進めています。
また、株式会社IHIとともに、ブロックチェーン技術を活用しCO2削減量などの環境価値を取引市場に流通させるプラットフォームを立ち上げ、効率的な環境価値の流通を目指すプロジェクトも実施(※2)。社内外で積極的に、カーボンニュートラルを実現するための活動、開発、実験を行っています。
ほかに、2021年11月から2022年3月にかけて、SBテクノロジー株式会社を主体に、4つの自治体において、分野を超えてデータ交換可能な「CADDE(ジャッデ)」を用いた公用車(EV車)のCO2の排出量や削減量を可視化する実証実験の支援も行いました。(※3)。

活動はもちろん国内だけにとどまりません。富士通は、2022年4月より、アイスランドのベンチャー企業Atmonia ehf.(アトモニア社)とともに、燃焼してもCO2を排出しないカーボンフリーの次世代エネルギーとして注目されるアンモニアを、クリーンに合成するための研究を行っています(※4)。
また、果物や野菜、サトウキビなどを濃縮する過程で廃棄されてきた水をろ過し、「植物由来の純水」(Botanical Water)に変えるという画期的な特許技術を開発したイギリスの企業Botanical Water Technologies Ltd.とパートナーシップ契約を交わし、このモデルを世界規模で展開するためのデジタル基盤を提供、支援しています(※5)。

これらをはじめとする支援・貢献が評価され、富士通は、CDPが実施した「気候変動」および「水セキュリティ」の調査において、最高評価である「気候変動Aリスト」企業に5年連続で選定されています。また、「水セキュリティAリスト」企業においても3年連続で選定されました(※6)。富士通とRidgelinez(リッジラインズ)では、顧客のSDGsを達成するコンサルティングサービスと、CO2排出量を算定・可視化する独自のソリューション・サービスを提供(※7)。これら富士通ならではの情報と経験を集めて磨き上げ、社会に対して、より広く、深く、カーボンニュートラルを浸透させていきたいと考えています。

2022年2月に、経済産業省によって、「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想」が発表されました。GXリーグとは、GXに積極的に取り組む「企業群」が、官・学・金とともに、社会のシステムを変革するための議論や実践を行う場だとされています。これを作ろうという動きが始まったということで、国内でもカーボンニュートラルに関するルールメイキングなどが進む見通しです。ますます加速するカーボンニュートラル。その動きにしっかりとついていくためにも、大企業・中堅企業を問わず、ぜひ今から対策を講じたいところです。

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