お客様や従業員の「声」を新たな経営指標に、VOICEプログラムの取り組みとは

2022年2月、SAPジャパン主催の「SAP Japan Customer Award 2021」で、富士通は「Experience Management部門」を受賞しました。Qualtrics®を活用した、お客様や従業員の声を収集・分析する「VOICEプログラム」が、ニューノーマル時代の企業経営において不可欠とされるお客様・従業員体験を高める取り組み(エクスペリエンスマネジメント)として評価されました。富士通の取り組みもまだ発展途上ではありますが、どのあたりが評価されたのか、ポイントを探ります。

目次
  1. 企業とお客様・従業員の間に横たわる「体験」のギャップ
  2. 「声」を「行動」につなげるVOICEプログラム
  3. 世界のお客様の「声」を経営に活かす体制を実現
  4. 1,000を超えるプロジェクトで進む「声」の活用
  5. 社内実践のノウハウを活かし、価値あるCX・EXの提供を支援

企業とお客様・従業員の間に横たわる「体験」のギャップ

ニューノーマル時代に企業が持続的に成長するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して企業経営やビジネスのあり方を変革することが大切です。最初のステップとして重要となるのが、お客様と従業員の「声(VOICE)」に耳を傾けること。そして、お客様体験(カスタマー・エクスペリエンス=CX)と従業員体験(エンプロイー・エクスペリエンス=EX)を向上させることです。

お客様の「声」を集める取り組みは、以前から多くの企業が実施してきました、しかし、せっかく集めた「声」が企業経営やビジネスに活かされ、優れたCXを提供してきたかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。

ベイン・アンド・カンパニーの調査 *1によれば、「自社が最高の体験を提供している」と回答した経営者の割合が80%であるのに対し、「最高の体験をした」と回答した消費者の割合は8%にとどまっています。このギャップを埋めることがCX向上のためには不可欠です。

あわせてEXの向上も大切です。従業員満足度を高め、従業員エンゲージメントを改善することは、人材の流動化や労働力不足が指摘される今、企業が競合優位性を保ち、ニューノーマル時代を生き残るために取り組むべき課題のひとつといえるでしょう。

ただし、企業とお客様との間にCXに関するギャップがあるのと同じように、企業と従業員の間にもEXにおける認識のギャップがあります。これらはエクスペリエンスギャップと呼ばれ、このギャップを埋めること、つまりエクスペリエンスマネジメントがニューノーマル時代を生き抜くキーポイントの一つとなるとしています。

「声」を「行動」につなげるVOICEプログラム

お客様や従業員の「声」を集めてギャップを埋める必要に迫られていたのは、富士通も例外ではありませんでした。“営業担当者やSEから間接的にお客様の「声」を聴くだけでなく、ダイレクトにより多く、聴く必要があるのではないか”“富士通グループの従業員13万人の「声」を拾い上げて経営に生かすことができないか”そうした課題認識から生まれた活動が「VOICEプログラム」です。

2019年9月の経営方針説明会で、富士通はパーパスを発表。IT企業からDX企業に進化することを宣言しました。そして、2020年10月には、全社DXプロジェクト「フジトラ」を本格始動。そこで、変革を加速しパーパスを実現する要素の一つとして、VOICEプログラムもスタートしました。

VOICEプログラムのコンセプトは「声を力に変えて、変革の風を起こす」。お客様や従業員の「声」をリアルタイムで聴き、事業活動における判断の迅速化、行動の変革、新たな気づき・出会いの発掘に生かすことで企業競争力を高めることを目指す活動です。

お客様や従業員の「声」はアンケートを通じて調査・収集し、分析・可視化され、その結果をもとに、業務改善や施策立案などがスピーディーに実施されます。改善アクションが実行されることで、存在していたギャップが埋まっていくのです。

肝心なのは、「声」の収集・可視化を入り口として「行動」「変革」という出口につなげる仕組みです。集まった大量の「声」に、富士通がもつ膨大なデータや知識を組み合わせて現状の背景や原因を読み解き、そこにある課題を明確にして改善行動を続けるといったように、「声」を起点に「行動」の循環を生み出すのがVOICEプログラムの特徴です。

お客様や従業員の「声」を「行動」につなげてギャップを解消につなげるVOICEプログラム

世界のお客様の「声」を経営に活かす体制を実現

VOICEプログラムの推進にあたり、富士通は2つのチャレンジに取り組みました。1つめは従来行っていた「顧客満足度調査(CS調査)」を「お客様ネット・プロモーター・スコア調査(お客様NPS調査)」に変えたこと。2つめは、お客様NPS調査の導入と合わせて「グローバル共通の調査」を取り入れたことです。これらのチャレンジによって、次のようなポイントが強化されました。

データ収集の範囲拡大

VOICEプログラムを開始するまで、富士通のCS調査は世界の各地域で個別に実施していました。調査を通じて寄せられたお客様の「声」はそれぞれの国・地域で収集・分析されるにとどまり、富士通グループ全体の経営に生かすことは困難でした。

そこで2020年から、質問内容をグローバルで共通化。調査プロセスなども統一し、世界6地域(リージョン)・30カ国超のお客様を対象に調査を実施する体制を整えました。これにより、世界中に点在するお客様から寄せられる富士通への期待、要望、課題などを「声」として収集し、同じ指標で評価・共有することが可能になりました。

お客様NPS調査のグローバル共通化のロードマップ

改善行動もグローバルに展開

加えて、世界6地域(リージョン)で合計17人のCXリーダーを選任し、グローバルで横断して組織を運営する体制を整備。各地域の調査結果や改善アクションは各地域でフィードバックされると同時に、他地域においても有益なものであれば共有されるようになりました。世界中のお客様の「声」を現場から経営層までが1つのプラットフォーム上で共有・活用できるようになり、「声」の収集→要因分析・フィードバック→改善アクション→成果の検証・レポーティングのサイクルをスピーディーに循環させることも可能になりつつあります。

お客様の「声」を経営指標化

富士通はパーパスの実現に向けて、財務・非財務両軸での経営指標を定めました。その非財務指標の一つに「お客様NPS」を掲げています。お客様との信頼関係を客観的に評価するお客様NPSを経営目標として定め、改善・向上を図ることで、富士通が提供するCXの価値を高め、企業価値向上につなげることができます。VOICEプログラムによって世界規模で聴くことができるようになったお客様の「声」が、富士通グループ全社の経営に組み込まれ、経営やビジネスに活用されるようになりました。

「声」を継続改善につなげるフィードバックの循環

1,000を超えるプロジェクトで進む「声」の活用

現在では1,000件を超えるプロジェクトでVOICEプログラムが利用され、その活用が定着しつつあります。

富士通は2020年7月に、ニューノーマル時代における新たな働き方改革のコンセプト「Work Life Shift」を発表していますが、この施策立案においてもVOICEプログラムが活用されました。

「新しい働き方を考えるうえで、まずは従業員の『声』を聴くことが不可欠」として、富士通グループ全従業員を対象として調査を実施。得られた約3万7000件の回答を分析し、施策内容や優先順位に反映しました。VOICEプログラムで集めた多くの従業員の「声」が、会社の「判断の迅速化」と「行動の変革」を促す力となり、2.5カ月で施策立案を実現したのです。

さらに、施策発表・実行後も再度アンケートを実施してフィードバックを取得。施策の効果を把握したうえで改善策を検討するなど、アクションを継続しています。

VOICEプログラムの活用で、現場の「声」をスピーディーに取得

加えて、社内実践で蓄積されたノウハウをもとに、お客様のビジネスにVOICEプログラムを応用する動きも加速しています。劇場を運営するお客様への提案では、VOICEプログラムを活用して富士通グループの従業員13万人から「芸術文化への思い」や「芸術文化振興の在り方」などに関する声を収集。従業員としてではなく、多様な趣味や嗜好を持つ「一人のエンドユーザー」としての回答を得て、芸術文化振興における本質的な課題を明確化し、付加価値の高い提案へとつなげました。

社内実践のノウハウを活かし、価値あるCX・EXの提供を支援

富士通では現在、VOICEプログラムを経済産業省が提唱する「DX推進指標」の評価にも活用しています。これまでのインタビュー形式による評価ではインタビュイーとなる部門長の主観が入ることも懸念されましたが、多くの従業員の「声」による評価を加えることでその懸念は解消され、より客観的なDX推進度の評価や部門の課題可視化が可能となりました。さらに、DX推進指標の評価だけではなく有効なアクションに繋げるために、実際に寄せられた従業員の様々な声をピックアップし、声を起点に議論・施策を考えるワークショップ「ムキアウ」を経営層や各部門、コミュニティ等、様々なレイヤで実施しています。

このように、「声」を収集・分析・活用する実践が社内で進むごとに事例やノウハウが蓄積され、活用の幅も広がります。今後は、その成果をお客様に対する提案に一層活かし、お客様が「声」を活用して価値ある顧客体験を創造・提供できるようお手伝いをさせていただきます。そして、ニューノーマル時代にDXを推進するお客様とともに、価値あるCX・EXを創出し、よりよい未来、サステナブルな社会づくりに貢献したいと考えています。

「全員参加型のDX推進」を目指す

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