2023年03月16日 更新

ビルメンテナンスのDXの基礎知識|
必要性・テクノロジー・メリット・事例を解説  

ビルメンテナンスにおいてもDXが進んでいます。現在、現場作業へのデジタル技術の活用や、業務システムの刷新を検討している企業もあるのではないでしょうか。

この記事では、主にDXを進めたい企業担当者に向け、ビルメンテナンスにおけるDXの必要性、活用されているテクノロジー、メリット、事例などを解説します。自社施策を検討するために役立ててください。

そもそもDXとは?

ビルメンテナンスのDXを解説する前に、そもそもDXとは何かを簡単に振り返っておきましょう。

DXとはデジタル技術を用いてビジネスを変革すること

DXとは、データとデジタル技術を活用することで、ビジネスそのものを変革し、競争優位性を確立する活動です。DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、「ディーエックス」と読みます。

参考:デジタルガバナンス・コード2.0 |経済産業省新しいウィンドウで表示

DXとデジタル化・IT化の違い

DXはビジネスモデルそのものを変革して競争力を得ることが目的です。つまり、企業の理想を実現する手段としてデジタル技術を用います。一方、デジタル化・IT化は、アナログ作業をデジタル作業に移し、業務効率化を進めるのが目的です。したがって、本質的に新たな商品価値やビジネスモデルが生じることはありません。

DXを推進するフロー

企業がいきなりDXに取り組むことは困難です。通常、「DXの認知、理解→ツール導入(デジタル化・IT化)→DX推進体制の整備→DX推進」のように、段階的にDXを実現します。

例えば、ビルメンテナンスの場合、「紙文書の報告書をペーパーレス化→それらの情報をデータベースに登録→AIを活用して解析→高度な自動メンテナンスに応用(=DX)」といった流れになります。

参考:DXレポート2 中間取りまとめ(サマリー)|経済産業省新しいウィンドウで表示

ビルメンテナンスにおけるDXの必要性

ここでは、ビルメンテナンス業でDXが必要な理由を、人手不足の解消、競争力の確保、サービス品質向上の3つの観点から解説します。

DXによる人出不足の解消

高齢化が進む日本では、慢性的な人手不足にあります。特にビルメンテナンス業では熟練技術者への待遇の低さもあって、人材流出も起きています。

人出不足を解消しながらサービス品質を向上するためには、DXを進めることが重要です。ビルメンテナンスでは建物の不具合、故障箇所の有無を人の目と手で確認する業務が多いため、これらをAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの先進技術を用いて、代替できるのではないかと期待されています。

ビルメンテナンス業での競争力の確保

テレワークの普及によって出社する従業員が減ったことから、ビルメンテナンス需要が下がっています。今後もこの流れが進む可能性が高いことから、DXによって競争力をつける必要があるでしょう。

DXを推進すると人件費削減が見込めるため、他社より安いメンテナンス費用を提示しやすくなる点がメリットです。また人と違い、24時間365日稼働を続けられる処理も多くなるでしょう。これらの効果によって競争力を確保できます。

ビルメンテナンスの質の向上

デジタル技術を基盤とした「スマートビル」が増えています。このような次世代のビルメンテナンスのサービスに対応するためには、自社でデジタル技術の知見、ノウハウを持つ必要があります。DXの知見、ノウハウは短期間では身につきません。現状のビルメンテナンスでまだ必要のない場合も、試験的に導入して技術を取得していく必要があります。

ビルメンテナンスのDXに活用されているテクノロジー

ビルメンテナンスのDXに活用されている、代表的なテクノロジーを6つ紹介します。

RPA

RPAとは、事務作業などの定型的なデスク業務を、ソフトウエアによって自動化する技術です。RPAは「Robotic Process Automation」の略で、直訳すると「ロボットによる業務自動化」の意味を持ちます。

RPAを導入すると定型的な業務を代行でき、従業員は本来の業務に注力しやすくなります。またデータを基幹システムに連携するなどして、DX推進に役立てることも可能です。

ペーパーレス化

ビルメンテナンスでは、点検報告書や契約書などの紙書類が重視される傾向があります。しかし、紙書類はアナログの古い商慣習になりつつあり、DXの一環としてペーパーレス化を進める必要性が増してきました。

紙文化から脱却すれば、例えばWeb会議システムを使った報告会を開くなど、顧客の利便性を高められる、新たなビジネススタイルを構築しやすくなります。

IoT(センサー、カメラなど)

IoTとは、センサーやカメラなどの小型機器がインターネットや社内ネットワークシステムにつながることです。IoTは「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳されます。

ビルメンテナンスは人の目で確認する作業も少なくありません。例えばドアの開閉、ゴミ箱の容量、設備不具合のチェックなどにIoTを活用すれば、これらの業務を効率化できるでしょう。また、IoTは不具合や老朽化の予測などにも役立てられています。

ロボット技術

ビルメンテナンスでは、ドローンによる高所の計測・点検がすでに実現されています。遠隔操作や自動運転が可能であることから、頻繁に点検できなかった箇所のメンテナンスに活用されています。この結果、劣化や不具合の早期発見も可能になりました。

また、人と同じように自動または遠隔操作で清掃できるロボットの活用も進んでいます。例えば掃除用アバターロボットは人手不足の解消に効果的です。

AI(人工知能)

AI(人工知能)は人間の知的な思考、行動をプログラムとして実現する技術です。近年は自動学習機能などによって、技術の飛躍的な進歩が見られるのが特徴です。

例えばビル全体の省エネ運転や、複数台のエレベーターの運行最適化などにAIが応用されています。また、過去の膨大なビルメンテナンスの報告データを基に、備品の交換時期を予測して補充する在庫管理システムが実用化しています。

BIM

BIMは「Building Information Modeling」の略で、コンピューターによって立体モデルを作成し、実際の建物の設計・工事、管理に活用できる技術です。建材や設備機器のメーカーや種類など、ビルメンテナンスに必要な情報を見える化できる点が特徴です。

BIMはビルメンテナンスに携わる人の作業効率や質の向上が期待できます。また、近年では施設管理を含めた建物全体のライフサイクルマネジメントに、BIMが応用され始めています。

ビルメンテナンスのDXを推進するメリット

企業がDXを推進すると、さまざまな成果に結びつきます。ここでは顧客獲得や紙文化からの脱却など、5つのメリットを解説します。

高まる安全安心・快適性へのニーズに対応できる

コロナ禍以降、室内空間の安全安心や快適性へ意識が高まった人が多いと言われています。つまり現在では、従来は許容されていたような換気状況であっても、顧客からのクレームが起きるリスクが高いです。逆にいえば、AIやIoTなどの先進技術を活用した次世代型のビルメンテナンスシステムを実現することで、ニーズを満たして顧客を獲得できる可能性が高まります。

紙文化から脱却できる

DXを推進すれば、点検報告書や建物の図面、契約書などの紙書類をペーパーレス化して、紙文化から脱却できます。

実際、タブレット端末を用いて点検後の報告をその場で完了させ、ビジネススピードを向上させているビルメンテナンス会社が増えてきました。また、ペーパーレス化した文書を一元的に情報共有することで、現場作業員のサポートを強化している企業もあります。

非対面業務を増やせる

デジタル技術を導入すると、非対面業務を増やせます。例えば、Web会議ツールや清掃ロボット、点検用のドローンなどを用いれば非対面業務を増やせます。このような技術は、感染症対策や災害時の事業継続計画(BCP)、人手不足の解消などに効果的です。

働き方改革を推進できる

DX推進によって、結果的に従業員の残業時間が減るケースは珍しくありません。したがって、働き方改革で掲げられている長時間労働是正の目標を達成しやすくなります。

脱炭素化・SDGsへの対応につなげられる

スマートビルやAIによるビル全体の省エネ制御などにより、脱炭素化、環境問題に関するSDGsなどに貢献できる可能性があります。企業に強く求められるようになった社会的な責任を果たすことができます。

ビルメンテナンスのDX事例

ここではビルメンテナンスのDX事例を紹介します。取り上げる2社の事例は、富士通Japanのソリューションを導入によって、顧客満足度の向上や事務処理プロセスの標準化の達成へと導いた事例です。具体的なDXのイメージを持つための参考にしてください。

DXで管理物件の稼働率や収益を見える化

法人向け不動産サービス事業を展開する三菱地所リアルエステートサービス株式会社様は、会計処理が独特であるため自社開発のシステムを構築していました。しかし管理物件の増加や、ビルオーナーからの要望が多様化するなか、追加や改修を繰り返すことに限界を感じていました。

そこで導入したのが、会計処理に加えて顧客管理や営業支援の機能が豊富で、かつ柔軟なカスタマイズが可能な「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart 不動産 プロパティマネジメント」です。

この結果、業務フローが改善し、迅速な問い合わせ対応によって顧客満足度も向上しました。また業務の属人化の問題も解消できたと言います。

DXで事務処理プロセスの標準化

星光ビル管理株式会社様は、オフィスビルや商業施設のビル管理事業を営んでいます。従来の業務システムの課題は、主に次の3点でした。

  • 業務が複雑化し、ノウハウを共有できない
  • 各機能のデータ連携ができず入力処理に時間がかかる
  • サーバやシステムに通信負荷が集中している

そこで導入したのが販売管理システムと不動産マネジメントシステムを統合できる「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart 不動産 プロパティマネジメント」です。

事務処理プロセスの標準化と一元化を進めることで現場業務を3割効率化でき、ノウハウ共有も進みました。また統合によってデータ連携が容易になり、サーバやシステムの通信負荷も軽減できました。

まとめ

近年、ビルメンテナンス業においてもDX推進の重要性が増しています。人手不足の解消、競争力の確保などの目的に合わせて、AIやIoTなどデジタル技術を活用することでビジネスを刷新していけるでしょう。本記事で紹介した事例のように、自社の基幹システムを刷新するのが効果的な施策の1つです。

多数の導入実績のある富士通Japanは、お客様の経営課題の解決に真摯に向き合った結果得られた業種・業務ノウハウと、ICT業界の最前線で培ったテクノロジーを持っています。富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組みます。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
下田 茂生

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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