2023年03月16日 更新

不動産テックで解決できる課題は?
3つのカテゴリー別にサービスの詳細を解説  

海外で始まった不動産テックは、日本でも注目されています。不動産テックを活用すると業務が効率化し、顧客に対する不動産商品の訴求力が高まります。

この記事では、不動産テックの概要や解決できる課題、サービスの詳細を解説します。不動産テック導入の具体例も紹介するため参考にしてください。

不動産テックの概要と市場規模

不動産テックについて、一般社団法人不動産テック協会の定義や、近年の市場規模について解説します。

不動産テックとは【不動産×テクノロジー】

不動産テックとは、不動産業界に関わるIoT(モノのインターネット)や、AI(人工知能)などの技術を活用した取り組みです。一般社団法人不動産テック協会は、不動産テックを以下のように定義しています。

“不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。“
引用:不動産テック カオスマップ|一般社団法人不動産テック協会新しいウィンドウで表示

2020年代における不動産テックの市場規模

株式会社矢野経済研究所は、2021年に調査した結果を基に不動産テックの市場規模について報告しました。2017年度から2020年度にかけて、不動産テックの市場規模は拡大しています。2025年の不動産テックの市場規模は、2020年度比の203.9%に相当する、1兆2,461億円に拡大すると予測されています。
参考:不動産テック市場に関する調査を実施(2021年)|株式会社矢野経済研究所新しいウィンドウで表示

不動産業界の現状と課題

不動産テックが注目されていますが、2022年現在の不動産業界には、データやテクノロジーに関する課題があります。

質の低いデータベースと空き家問題

データベースに反映されていない中古物件により、中古物件市場が停滞しています。買い手が見つからなかった中古物件は空き家となり、販売機会の損失だけではなく、建物の老朽化・犯罪リスクの増加などで近隣にも影響を及ぼしかねません。近年、中古物件は増加の一途をたどり、空き家問題が深刻化しています。

テクノロジーの導入を拒否する現場

対面営業や内覧、ハンコやFAXなどの利用が多い不動産業界では、テクノロジーの導入が伸び悩んでいました。しかし、近年は一般企業のDX化を受けて、不動産業界にもテクノロジーの導入に前向きな企業が増えています。コロナ禍による非対面営業に対するニーズの高まりも、テクノロジーの導入を後押ししています。

不動産テックを導入するメリット

不動産テックを導入すると、業務効率化などの効果が期待できます。不動産テックを導入するメリットを解説します。

不動産関連の業務が効率化する

一般的に不動産業界は多忙であると言われていますが、不動産テックを上手に活用することで業務効率化が期待できます。不動産業界では、以下のような業務が日々発生しています。

  • 契約書類の作成
  • 広告のラベル変更
  • 入居者やオーナーへの連絡
  • 家賃や契約金の管理
  • 内見関連の業務
  • 顧客情報・物件情報などを含む書類の管理

システムに作業を任せると、人は重要度の高い業務に集中できます。接客のレベルや仕事のクオリティを高められると、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。また、システムで情報を一元管理するためには、業務の標準化が必要です。業務を標準化すると、効率化に加え属人化の解消にもつながります。

不動産業界が活気づく

顧客の購入意欲を高める不動産テックを導入すると、売上向上が見込めます。例えば、後述するコンピュータによって作られた世界を疑似体験できるVR(バーチャル・リアリティ)を使うと、限られた時間で多くの物件を見てもらうことが可能です。オンラインで物件情報を閲覧できるシステムなど、集客や見込み客へのアプローチに有効な不動産テックもあります。

不動産テックの3つのカテゴリー

不動産テックは、以下の3つのカテゴリーに分けられます。

  • 業務支援系
  • 情報発信・マッチング系
  • スマートハウス・ビル系

以降では、一般社団法人不動産テック協会が作成した「不動産テックカオスマップ第8版」の内容に基づき、それぞれのカテゴリー別に不動産テックの詳細を解説します。
参考:不動産テックカオスマップ第8版|一般社団法人不動産テック協会新しいウィンドウで表示

業務支援系の不動産テック

業務支援系の不動産テックとして、不動産情報を管理するサービスや、仲介・管理業務に役立つサービスを紹介します。

不動産情報

不動産情報とは、物件情報以外の不動産に関する情報を提供するシステムです。システムは不動産会社が利用します。システムで提供される情報には、不動産登記情報をはじめとして、物件概要書・家賃表・修繕費などがあります。

仲介・管理業務支援

仲介とは、顧客と不動産をマッチングさせる業務です。仲介業務に関するサービスの一例を、以下にまとめました。

  • 顧客情報管理システム
  • 営業支援システム
  • 見込み客の傾向分析ツール
  • 物件確認に対応する自動音声ツール

管理とは、不動産経営で発生する数々の業務をオーナーに代わって担当することです。管理業務に関するサービスの一例を、以下にまとめました。

  • 顧客情報管理システム
  • 契約管理システム
  • 鍵管理システム
  • 売上管理システム
  • オーナーの連絡に役立つシステム

情報発信・マッチング系の不動産テック

情報発信・マッチング系には数多くの不動産テックがあります。VR・ARをはじめとする、各サービスについて解説します。

VR・AR

上述したVRとは、腕や手首、頭などに装着するウェアラブルデバイスによって、顧客に内覧を疑似体験してもらうシステムです。また、AR(拡張現実)を活用すると、家具の配置のシミュレーションなどを通じて、新居での生活をイメージしてもらえます。

スペースシェアリング

スペースシェアリングとは、一時的にスペースを利用したい人と、スペースを貸し出したい人をマッチングするシステムです。スペースシェアリングの対象として、会議室や駐車場、空き部屋などがあります。

リフォーム・リノベーション

リフォーム・リノベーションとは、顧客側が利用するサービスです。サービスでは、リフォーム・リノベーションを手がける業者の情報が提供されます。また、業者と顧客のマッチングをサポートするサービスもあります。

クラウドファンディング

不動産テックのクラウドファンディングは、不動産投資のサポートを目的としています。クラウドファンディングを通じて、不動産事業に関する資金を必要とする人と、資金を提供する人をマッチングします。

マッチング

マッチングとは、スペースシェアリング、リフォーム・リノベーション、クラウドファンディング以外で、不動産に関わる人同士をマッチングさせるサービスを指します。

価格可視化・査定

価格可視化・査定は、不動産売買や不動産投資のタイミングを検討する際に役立ちます。サービスでは特定の物件の査定が可能です。また、エリアごとの不動産価格や賃料分布などを調べられるサービスもあります。優れた解析技術を搭載したシステムを使うと、将来的な不動産価格や賃料の推移を予測できます。

ローン・保証

ローン・保証は、顧客のローンや保証選びに役立つサービスです。サービスでは、不動産取得に関するローンや保証サービスの提供・仲介・比較ができます。

物件情報・メディア

物件情報・メディアとは、物件や不動産に関する多様な情報やサービスを掲載するメディア全般です。サービスの一例として、不動産会社が運営するオウンドメディアが挙げられます。

スマートハウス・ビル系の不動産テック

不動産テックカオスマップ第8版によると、スマートハウス・ビル系の不動産テックとは、IoT(モノのインターネット)に相当するサービスです。Webカメラやセンサーを使った不動産のチェック・電子錠による入退室管理システム・取得したデータを分析するシステムなど、IoTにより各不動産の利便性は向上しています。

不動産テックが普及した流れ

不動産テックはアメリカで誕生した概念です。不動産テックが普及した流れを解説します。

不動産テックの始まり

不動産テックは、2010年代のアメリカで注目され始めました。CompassやOpendoorをはじめとする、数多くの不動産テック関連の企業が勢力を伸ばしました。同国のベンチャー企業が不動産テック関連で調達した資金は、2014年で累計10億ドルを突破しています。

不動産テックの広まり

2010年代中頃のアジアで、不動産テックが活発化しました。そして、海外の不動産テックの流れを受け、日本でも不動産テックを活用した新たなサービスが始まりました。

不動産テック カオスマップとは、近年の不動産テック関連のビジネスやサービスについてまとめられている業界地図です。不動産テック関連のビジネスやサービスは、2017年時点では80件ほどでしたが、2022年時点では430件にまで急増しています。
参考:不動産テック カオスマップ|一般社団法人不動産テック協会新しいウィンドウで表示

不動産テックの具体例

不動産テック導入の成功事例を紹介します。課題や導入の効果を確認し、自社での導入をイメージしてみましょう。

星光ビル管理株式会社様の事例

星光ビル管理株式会社様は、ビルの管理・メンテナンス・保安警備・清掃などの業務を手がける企業です。同社は、営業所や担当者ごとに異なる業務体制に悩んでいました。業務の進め方が異なれば営業所間でノウハウを共有できないためです。

同社はデータを一元管理できるシステムを導入し、これまで営業所に任せていた業務を本社でまとめて管理するよう変更しました。また、システムの導入に合わせて、業務の標準化も実施しています。システム導入により作業を効率化し、データの重複や入力ミスを削減できました。

三菱地所リアルエステートサービス株式会社様の事例

三菱地所リアルエステートサービス株式会社様は、不動産の仲介・賃貸・パーキング事業などに展開する企業です。同社は20年以上独自のシステムを利用していましたが、多様化する顧客の要望に対応するべく新しいシステムの導入を決めました。従来のシステムは会計処理に特化したものであり、スムーズに業務を進めるには、営業支援機能や顧客管理機能が必要でした。

新しいシステムを導入したところ、物件ごとの集計作業が効率化しました。また、データ検索や書類作成が効率化されたことで、顧客満足度が向上しています。

まとめ

IoTやAIを活用した不動産テックは、業務支援系、情報発信・マッチング系、スマートハウス・ビル系の3つのカテゴリーに分けられます。不動産テックを導入し、業務効率化や売上向上に役立てましょう。

富士通Japanは、不動産テックの導入をはじめとしてお客さまの課題を解決します。業種・業務ノウハウやICT業界の最前線で培ったテクノロジーを駆使し、富士通グループの知見を結集させ、全社をあげて課題の解決に取り組みます。不動産テックの導入をお考えなら、ぜひお問い合わせください。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社
流通ソリューションビジネス統括部
下田 茂生

【事業内容】
流通業における準大手、中堅・中小企業向けのソリューション・SI、パッケージの開発から運用までの一貫したサービス提供。
AIやクラウドサービス、ローカル5Gなどを活用したDXビジネスの推進。

富士通Japan株式会社

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