株式会社山善様
このページの情報は、2004年に掲載されたものです。
生産財と消費財の専門商社である株式会社山善では、ビジネスの根幹を支える基幹システム全体の再構築プロジェクトに着手。その第一弾として、新会計システムを2004年4月から本稼働させた。会計データの一元化・即時化を図ることで、最適な企業経営を実現するのが狙いである。新システムには富士通の統合会計ソリューション「GLOVIA/SUMMIT」を採用し、財務会計と管理会計の完全一致を実現。セグメント別の事業管理や財務基盤強化など、様々なメリットを実現している。
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高精度な事業管理を実現すること | ![]() |
財務三表をセグメント別に作成し、ビジネスの現状をタイムリーに把握できる環境を実現 |
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会計データの統合化・即時化 | ![]() |
現場入力とシステム間連携により、デイリーでのデータ集約を実現 |
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市場環境変化への対応 | ![]() |
「GLOVIA/SUMMIT」を導入し、法制度変化などへの即応を実現 |
昭和初期の大阪・立売堀(いたちぼり)を舞台に、機械工具問屋に丁稚入りした型破りな若者の活躍を描いた花登 筐氏の小説「どてらい男(やつ)」。テレビドラマや映画の原作ともなった人気作品だが、この主人公である山下猛造のモデルとなったのが、山善の創業者・山本猛夫氏である。
東証・大証一部上場の大企業となった同社だが、現在でも機械・工具をはじめとする様々な生産財の販売事業を、コア事業の一つとして位置づけている。山善 管理本部 執行役員 財務部 部長 掛川 隆司氏は、同社の事業を「当社では、工作機械などを取り扱う機械部門、産業システム・機器などを取り扱う産業システム部門、各種機械工具を取り扱う工具部門、それに生産設備やシステムの提案を行うシステムエンジニアリング部門の4部門が展開する生産財事業と、住宅設備機器や建設資材などを取り扱う住設建材事業、家電やインテリア、アウトドアなど家庭用品を取り扱う家庭機器事業をコア事業として明確化しています」と説明する。
生産財事業の動向は、産業全体の今後を占う先行指標として注目されることも多い。設備投資需要が高まるということは、顧客企業の事業が上昇基調を示しているからである。最近では日本経済もようやく復調したとの声も聞かれるようになったが、掛川氏も「バブル崩壊以降は厳しい状況が続いていましたが、最近では再び設備投資需要が拡大する傾向が見られます」と語る。
もっとも、業界全体の浮き沈みに業績が左右され続けるようでは、企業としての安定的な成長は望めない。掛川氏は「生産財事業が不調のときには住設建材、家庭機器部門の消費財事業が会社全体の落ち込みを支えたこともあります。現在では生産財事業と消費財事業の比率が6:4程度になっています。生産財事業が落ち込むことなく、消費財事業が伸長し、そのシェアが5:5に近づくことが理想ですが、両分野の補完で経営の安定化に好影響を与えています」と力強く語る。
同社のビジネスのもう一つの特徴として、メーカーや販売会社とのパートナーシップ強化に取り組んでいることが挙げられる。各地域の主要取引先で構成される「エース会」には、約1,500社の販売会社が参加。また仕入れ先であるメーカーとも相互発展を目的に、「山善親交会」(約350社)と呼ばれる交流会を組織している。さらにこのネットワークを活かして、昭和51年より様々な商品の展示即売を行う商談会「どてらい市」を開催。各地域の販売店が主催店、山善が事務局、メーカーが出品者となり、各地域のユーザーに対して商品や技術情報などを提供している。
「『どてらい市』の年間開催数は最大で約60回に達し、約20万人以上のお客様にご来場いただいています。これも販売会社様・メーカー様・当社が三位一体となって、販売共同体作りに取り組んできた成果と考えています」と語るのは、山善 管理本部 経理部 部長 松村 嘉員氏。掛川氏も「かつては流通の中抜き現象が話題になった時期もありましたが、専門商社ならではの付加価値をご提供できれば、今後も成長を続けていけると確信しています」と続ける。
同社では「産業構造の変革に対応し、モノ作りを支え、快適生活空間を創造する専門商社として、市場での存在価値を確立する」を経営ビジョンとして掲げている。この目標を実現すべく、2004年3月期を初年度とする中期3カ年計画を推進中だ。掛川氏は「市況が好転したことも幸いして、初年度から堅調に推移しています。ですが、油断することなく、今後も企業価値を高めるべく、より一層尽力していきたい」と意気込みを語る。
先に挙げた経営ビジョンを具体化するための方策として、同社では(1)「収益力向上」(2)「ローコストオペレーション」(3)「財務体質強化」の3点を掲げている。
(1)「収益力向上」では、コア事業の明確化や経営資源の最適・再配分による「競争力・収益性の強化」。(2)「ローコストオペレーション」では、業務プロセス/物流体制の抜本的見直しなどによって「利益を生み出す体制の実現」。(3)「財務体質強化」では、キャッシュフロー(CF)強化、有利子負債の圧縮、自己資本の充実などによる「企業価値向上」を、それぞれ目指しているのだ。
だが、こうした取り組みを進めていく上では、解決すべき課題も残されていた。現代のビジネスは、情報の戦略的活用抜きには成り立たない。しかし肝心のITインフラが、こうした要求に応えることができなくなっていたのである。
山善 管理本部 情報システム部 副部長 大坂 二氏は「メインフレームを中核とする旧システムは、導入から既に30年以上を経過しており、新しいビジネス要件を取り入れることが難しくなっていました。また必要な機能をその都度継ぎ足してきたため、メンテナンス性の面でも問題が生じていました」と語る。
このままの状態では、とてもこれからの時代に即したビジネス環境を作り上げていくことはできない。そこでITインフラの全面的な刷新に着手。その第一弾としてスタートしたのが、会計システムの再構築プロジェクトである。
システム構築にあたって課題となったのは、財務会計情報をはじめとする基幹データの一元化・統合化である。「当社には国際部門がありますが、ここでは為替関連の機能が必要になるため、本社会計システムとは別のシステムを動かしていました。税務申告の作業なども、国内用と国際用で別々の処理を実施し、それをまた合算するといったことを行っていたのです。会計システム再構築にあたっては、これを一本化することが課題でした」と松村氏は語る。
また、企業経営の最適化、可視化の実現も大きな課題であった。掛川氏は「日本企業はこれまで損益中心の経営を行っていましたが、現在ではB/S経営、CF経営を目指さなくては生き残れなくなっています。そのためには正確な財務情報を詳細に分析・活用することが求められる。この環境を実現することが、新会計システム導入の大きな目的でした」と振り返る。
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