工場自動化が製造業にもたらすメリットと発展への道筋(前編)

テスラが時価総額でトヨタを上回った要因は工場自動化?

2020年7月、自動車業界に衝撃が走りました。米テスラの時価総額がトヨタ自動車を上回り、自動車メーカーで世界首位になったのです。2019年のテスラの販売台数は、トヨタの約30分の1。それでも時価総額が上回ったのは、それだけテスラが投資家に期待されているからです。

期待されている最大の理由は、テスラが上海に建設したEVの生産拠点「ギガファクトリー」の操業が軌道に乗ったことにあります。同工場の最大の特徴は多くの生産工程を自動化していること。中国といえば新型コロナウイルスの影響を最も早く受けた国です。人の移動が大きく制限された結果、多くの工場は生産停止に追い込まれました。ところがギガファクトリーは、一時の生産休止はあったものの生産を続けることができました。

もちろんテスラの強みは商品の競争力にあります。しかし、実際に製品を生み出せなければ、その価値を顧客に届けられません。未曾有の事態においてもヒット商品を供給し続け、時価総額で自動車業界1位になったテスラの例は、工場自動化が製造業の生き残る道の一つであることを、改めて知らしめたと言えます。

工場自動化のメリット、人同士の接触も回避

製造業が工場自動化を取り入れるのは、もちろん今に始まったことではありません。古くは1950年代の半ばから、リレー、タイマ、スイッチなどを利用した機械の自動化が行われ、一部の人手作業を機械が代替してきました。そして今では、「無人化工場」という文字がメディアで踊るように、ほぼ無人化を達成した工場も出現しています。

では工場を自動化するメリットはどこにあるのでしょう? 以下に自動化のメリットの代表的なものを6つピックアップして説明していきます。

  • 人手不足への対応
    自動化の最大のメリットは人手がいらないことです。例えば1980年代後半から90年代はじめのバブル期には、工場労働がいわゆる3K(きつい、汚い、危険)職場として若者から敬遠されました。人手を確保するのが難しくなったことから、この時期に一気に工場の自動化が進んだといわれています。
  • コスト削減
    人手が少なくなれば、人件費の削減につながります。人件費が安い国で生産を行えば、自動化への投資は必要ないかもしれません。大手の製造業では、人件費の安い国を探して、次々と生産拠点を移すという動きもありますが、その国が裕福になれば、人件費は高騰します。自動化を実践することで、日本で生産してもコスト競争力で劣らない体制を整えることが可能です。
  • 生産効率の向上
    工場の自動化では、ムダが省かれた作業を機器が行うことが大前提です。また、人手による作業スピードの違いなども生じません。メンテナンスを適宜行うことで、長時間の稼働も可能なため、生産効率が向上します。
  • 品質向上
    人手作業は柔軟性が持たせられる反面、どうしても品質にバラツキが生じます。自動化設備であれば、バラツキを抑えられ、その結果、品質の向上につながります。また近年では、例えば製品内部の欠陥など、人間ができないような確認も自動で瞬時に行えるようになっており、さらなる品質向上を可能としています。
  • 容易に移転が可能
    自動化設備を確立すれば、その設備と同じものを設置することで、どこでも同じものが生産できます。重要なことは、人が介在していないため、同じ品質のものを同じ効率で生産できること。海外において製品に需要があった場合、初期投資は必要となるものの、現地で生産、供給できる体制を整えられます。
  • 人同士の接触を回避
    最後のメリットとして挙げるのは、コロナ禍だからこそ認められることとなった、人同士の接触を減らし、密接が避けられることです。自動化を実現すれば、人の数が工場から少なくなるのですから、人同士の接触は減るわけです。

工場自動化のレベルを自動運転にならって定義してみる

多くのメリットを持つ工場の自動化ですが、一言で自動化といってもレベルはバラバラです。1つの単純な作業を自動化したものから、無人化工場と言えるまでの高度な自動化まで。自社の自動化を進めるうえで、レベルのようなものが定めてあれば、目標としやすいかもしれませんが、残念ながら公的な機関が定めている工場の自動化のレベルはありません。

一方で、自動化のレベルを定めているものにクルマの自動運転があります。最近では、テスラのイーロン・マスクCEOが2020年7月9日に上海で開催された世界人工知能大会に寄せたビデオメッセージの中で、「レベル5の達成が近い」とコメントしたことで話題となりました。工場の自動化もこの自動運転で定めているレベルと、対比すると分かりやすいかもしれません。

クルマの自動運転で定められている自動化のレベルを、工場の自動化に当てはめて対比。
クルマの自動運転のレベルは、アメリカのSAE Internationalという非営利団体が設定。

レベル1とレベル2は、作業者の作業支援の範疇であり、自動化とは言えません。レベル1は、例えばねじを締める作業において電動ドライバーを利用して作業者を支援するようなレベル。一方でレベル2は、ねじを締めるという作業に限っては専用機などによって機械にすべて任せるようなレベルを指します。

レベル3は、複数の作業のそれぞれを機械化やロボット化したうえで連結。数時間分、あるいは1日分は部品などを供給しておくことで、自動化を達成するレベルを指します。すべての部品を消費し、その分だけの完成品を取り出せば、一部は人手による作業を伴いながら次の加工分の段取りを行うという格好です。

レベル4では、段取り工程や検査工程も含めての自動化を指します。ここでは、生産工程からは人がいなくなります。レベル4を実現するためには、各工程の進捗状況や稼働状況などを外部から監視できる仕組みが不可欠となるでしょう。

最後のレベル5は、工場全体を自動化する「無人化工場」を意味します。需要変動に応じて生産計画をたて、生産工程に部品を供給し製造、製品の梱包までをすべて自動で行う。レベル5を実現するためには、高度な判断ができるAI(人工知能)が必要になってくるでしょう。

上記の工場の自動化のレベルに照らし合わせると、現在の多くの工場は、レベル3にいるのではないかと思います。一部、少品種大量生産品に限定すれば、大手企業でレベル4に到達していますが、レベル5で定義したような“真の無人化工場”に到達するまでは、さらなるAIの発展などを待たねばならず、まだ先の話かもしれません。

後編では、現在の工場自動化の最先端の事例を見たうえで、これから自動化工場がどのように進化していくのかをご紹介します。

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