以前からセキュリティ強化や運用負荷軽減に有効とされてきたVDI(デスクトップ仮想化)。最近ではBCP(事業継続計画)やワークスタイル変革のソリューションとしての注目も高まり、大規模企業のみならず小規模企業でも検討が進みつつあるようだ。しかし一方では、導入後にI/O負荷の問題に直面する企業が多いことも調査結果から見えてくる。
(注) 本連載ではIDCのレポートを基に、中小規模の企業=1~999人以下、大規模の企業=1,000人以上と定義している。
まずはVDIの導入状況についておさえておく。IDC調査の「デスクトップ仮想化(VDI)の導入状況」によると、導入済みの企業は、全体で13.9%と、2013年版より増加。サーバ仮想化に次いで導入が進みつつある。従業員規模別で見ると、規模が大きくなるほど導入済みの割合が高くなっており、1~99人は7.1%であるが、5,000人以上になると32.4%が導入済みである。
また、1年または2年以内の導入を計画している割合は、500~999人が33.0%ともっとも多くなっている。1~99人では4.4%にとどまっている一方で、時期は未定ながら導入を検討していると回答した割合は13.9%あり、検討は進みつつあるようだ。最近では小規模向けのソリューションも登場しており、今後は小規模な企業でもVDIの利用が加速する可能性がある。
では、VDI環境で利用されている、あるいは利用が計画されているストレージはどういったものだろうか。IDC調査の「デスクトップ仮想化(VDI)環境で利用している(利用を計画している)ストレージ」によると、すべての従業員規模で上位3位に入っているのは、外付型DASとNASである。導入の容易性や管理性、コストメリットなどから既存環境で普及が進んできたNASは、仮想化環境における性能の高まりからVDI環境下でも広く利用されているようだ。このほか、中小規模の企業ではDaaSが、大規模の企業ではFC-SANが、それぞれ上位3位に入っている。
VDI導入に当たり、利用するストレージはどのような基準で選定されているのだろうか。IDC調査の「デスクトップ仮想化(VDI)環境におけるディスクストレージシステムの選定基準」によると、選定基準は1位から順番に「ユーザー1人当たりの導入コスト」(45.0%)、「大容量」(42.0%)、「システム価格」(41.3%)となっており、少し離れて「容量や機能の柔軟な拡張性」(36.8%)、「高いI/O性能(SSDや大容量キャッシュの利用)」(23.8%)が続いている。このことから、導入前は容量と初期コストを選定基準とする企業が多いことがわかる。
しかしその一方で、運用の開始前よりも開始後に課題として認識されることが多いのが、拡張性や性能である。IDC調査の「導入実績別 デスクトップ仮想化(VDI)環境におけるストレージ管理の課題」において、「ピーク時のI/O負荷の急上昇」と回答した割合は、VDI導入済みの企業のほうが計画中/検討中の企業よりも9.8ポイント高く、ギャップとしては10選択肢中もっとも大きい。また「デスクトップ仮想化環境でのストレージの性能維持」も、ギャップが6.0ポイントと2番目に大きい。
導入済みおよび計画中/検討中を平均した回答率の高さで見ると、1位は「データ量の増大」(40.8%)で、「デスクトップ仮想化環境でのストレージの性能維持」(39.4%)、「セキュリティの強化」(34.3%)、「ピーク時のI/O負荷の急上昇」(30.4%)、「ストレージハードウェアコストの増加」(22.7%)と続き、拡張性や性能に関する課題が上位を占めている。
2013年は仮想化環境向け需要が拡大し、ミッドレンジ、ローエンドの高成長につながったが、2014年もその傾向は継続すると見られている。大量のリード処理や高集約密度が求められるVDI環境においては、共有ストレージのI/Oがボトルネックになることが多い。特にピーク時のI/O低下はユーザーにも直接関係し、ビジネスへの影響も出かねないことから、対策が求められる。そのため、VMwareなどの仮想化ソフトウェアとストレージを連携するAPIやSSD(フラッシュストレージ)、データの自動階層制御など、ストレージの機能による効果的な活用がカギとなるだろう。
また、サーバの仮想化統合やVDIが進んでいる大規模な企業においては、グローバルで本番環境を仮想化統合する事例も出てきている。高性能なSSDを交えたデータの自動階層制御や、仮想マシン単位での性能・容量管理やスナップショットなど、導入や運用の容易性と高い処理性能の維持がいっそう求められる。
ある調査結果によると、VDI導入によるROI(投資利益率)は約400%、投資回収期間約1年という高いROIが期待できるという。一方で、単純にPCの置き換えと比較すると、コスト高に見え、導入が進んでいないのが現状である。さらなるビジネス成長への有効なソリューションとするためには、まずVDI導入の目的を明確化することが必要である。そして、ICT部門で数値化しやすい直接効果に加え、数値化しにくい間接効果(情報漏洩や事業継続)やユーザーの生産性、イノベーション(顧客満足度や売上拡大など)といった点も含めたROIの考え方により、VDIを推進していくことも重要である。
富士通は、VDI環境における安定したストレージ性能とスケーラビリティ、高可用性を実現するソリューションを提供しています。
ETERNUS TR series 仮想化環境専用ストレージは、煩雑な構成設計や性能チューニングを行うことなく短時間で導入できる一方で、仮想マシン単位での自動QoSや性能・容量管理を実現しています。また、IOに関しては99%をフラッシュ(SSD)で処理し、大容量を必要とする処理はVAAIを活用してHDDにオフロードするといった、フラッシュメモリとHDDによるハイブリッド構成をとり、性能、容量、コストにおいて最適化を実現しています。
そのほか、最新フラッシュテクノロジー「Extreme Cache」を搭載したディスクストレージシステム ETERNUS DX S3やオールフラッシュアレイ ETERNUS DX200F、ファイルサーバに特化したETERNUS NR1000 series ネットワークディスクアレイなど、お客様の多様なビジネス要件に応えるラインナップを豊富にご用意しています。
掲載日:2014年10月14日