エシカルなサプライチェーンとは?
~社会・環境・地域への貢献から見える改善点

エシカルサプライチェーンを想起させるイメージ画

近年、グローバル化した社会においてサプライチェーンを取り巻く環境はますます複雑化しており、透明性の高いサプライチェーンの重要性がより一層高まっています。もはや製品をA地点からB地点へ運ぶだけの仕組みではなく、製品の原材料や、それが誰によって、どのような状況下で生産されているのかといった情報が求められるようになっています。つまり、「安くて良い商品」が求められた時代から「社会・環境・地域に貢献する商品」が求められる時代へと変わりつつあるのです。企業はいま、エシカルサプライチェーンをどのように捉え、取り組むべきでしょうか。富士通の事例も交えご紹介します。

目次
  1. 環境や社会に配慮されたサプライチェーンの重要性
  2. エシカルサプライチェーンの実現に向けた課題
  3. エシカルサプライチェーンを実現するための道筋
  4. 富士通のエシカルサプライチェーンに関する取り組み

環境や社会に配慮されたサプライチェーンの重要性

エシカルサプライチェーンとは環境や社会に配慮されたサプライチェーンのことです。近年では、単なる道徳的な義務以上に、現代ビジネスにとって欠かすことのできない要素になっています。消費者は自分の購買行動が社会や環境に与える影響について意識を高めており、若年層を中心に倫理的な取り組みを行う企業を好む傾向にあります。

アメリカのサプライチェーンマネジメント協会(ASCM)のCEO、Abe Eshkenazi氏は、「消費者は今や、自分が購入する製品が経済的、倫理的、そして環境に配慮した方法で製造されていることを求めている(※1)」と述べています。これを裏付けるように、サプライチェーンの専門家の83%がこの考え方の重要性に同意(※2)しています。

また、エシカルサプライチェーンは、長期的なコスト削減効果も期待できます。持続可能な調達は非再生資源への依存を減らし、価格変動や供給不安のリスクを軽減することができます。そして公正な労働基準は、従業員の士気と生産性を向上させ、人材の流出と採用コストを抑える効果も期待できます。その他、例えば不必要な二酸化炭素の排出や製品の廃棄、あるいは無駄な業務の存在などを見直すことも、エシカルサプライチェーンの重要な要素として捉えられています。

人が製品ラベルでサプライチェーンをチェックしているイメージ画

エシカルサプライチェーンの実現に向けた課題

明確な利点がある一方で、エシカルサプライチェーンの実現は簡単ではありません。課題の一つは、グローバルサプライチェーンにおける透明性の欠如です。日本では1990年代以降にコスト低減を目的にグロバール・バリュー・チェーンと呼ばれる国際分業体制が構築されました。異なる法制度を持つ国々に拠点を持つ企業が増えた結果、各国の法制度を理解してサプライヤーの行動を監視することは容易ではありません。

また、コスト面も課題となります。公正な賃金の支払いや持続可能な素材への切り替えなど、倫理的な取り組みはコストが増える傾向にあります。そのため、これらの取り組みは長期的な利益をもたらす一方、短期的な利益に影響を及ぼす可能性があり、特に中小企業にとっては導入が難しい場合があります。

エシカルサプライチェーンを実現するための道筋

ASCMの報告(※3)によれば、これらの課題を解決するためには三つの主要な要素が必要とされています。

まず一つ目は、組織全体でエシカルな戦略とビジネスの目標を一致させ、責任を明確にすることです。現在、サプライチェーンの管理は競争力を獲得するための重要な要素となっていますが、関連部署が多岐にわたるため、誰が推進すべきか不明確になりがちです。この問題を解決するためには、組織内で責任の所在を明確にし、円滑なコミュニケーションを確立することが必要です。

次に、明確なエシカルガイドラインを設定し、それを全ての関係者に伝えることが重要です。これには、労働者の権利、環境基準、公正な取引に関する企業の期待を示す行動規範を作成することも含まれます。エシカルな基準を具体的なルールとして実行するためには、指針や指標を設けて方向性を示すことが有効です。

最後に、サプライチェーンの透明性を確保することが必要です。これは、IoTセンサーを用いて温度・湿度・照度などのデータを自動的に収集し、労働環境を数値で表現することや、ブロックチェーン技術を用いて商品の流通やサプライヤーの行動を追跡し、エシカルガイドラインの遵守を監視することを指します。透明性は、エシカル基準の遵守を確認するだけでなく、消費者との信頼関係を構築するためにも重要です。さらに、収集されたデータを多角的に分析することで、従来の方法では見つけられなかった新たな洞察を得ることも可能となります。

企業リーダーがデータをチェックしているイメージ画

富士通のエシカルサプライチェーンに関する取り組み

富士通では、エシカルサプライチェーンの構築にブロックチェーンやIoTのテクノロジーで様々なお客様を支援しています。ここではエシカルサプライチェーンへの取り組みとして、ブロックチェーン技術で取引の透明性を確保し社会や環境に貢献した事例とIoTセンサーでエネルギー効率を分析し、地域や環境に貢献する事例をご紹介します。

国や業界を超えたフェアなコメ取引(ライスエクスチェンジ社)

国際的なコメ取引は、信用評価、売買マッチング、契約書作成など複雑で手間のかかる作業が多く存在します。そのため、取引の透明性と効率性の向上が長年の課題となっていました。この課題に対応するため、シンガポールのライスエクスチェンジ社(Rice Exchange)は富士通と協力して、ブロックチェーンを活用した国際的なコメ取引プラットフォームを構築しました。
この新しいプラットフォームは、コメの品質情報や取引の全過程を記録し、取引プロセスを自動化することで、透明性と効率性を同時に実現しました。これにより、公正な価格での取引が可能となり、地球環境に配慮した農業や小規模農家の収入向上に寄与しています。

エネルギー効率の最適化と職場環境の監視(ドイツ・バルスビュッテル)

インタネットでモノが繋がるIoTの時代になり、今までにない自社やサプライヤーのより詳細なデータを収集することが可能になりました。ドイツの地方都市バルスビュッテル(Barsbüttel)ではエネルギーコストの急激な上昇に対応するため、富士通と協力してIoTを活用したエネルギーデータ分析システムを構築しました。
このシステムは公共施設のエネルギー効率を最適化させるための試みとして始まりました。具体的には、学校や役所に複数のセンサーを設置し、温度・湿度・明るさ・CO2濃度といったデータをリアルタイムで収集し、学校施設や労働環境の監視を行いました。
この取り組みの結果、暖房を使った時のCO2濃度が基準値を超えていることや、夏季に教室の温度が30度以上になると、生徒や教師の集中力が低下することなどが明らかになっています。
これらの発見は、エネルギー節約の具体的な方法を特定するだけでなく、より良い労働環境を作るための手がかりとなりました。つまり、IoT活用によるデータ分析がエネルギー効率や労働環境の改善に有効であることが証明されました。

企業は利益を追求する組織であるため、エシカルな考え方は利益と相反すると見なされがちでしたが、SDGsなどの地球規模の課題が浮上する中で、その視点は変わりつつあります。エシカルサプライチェーンに取り組まないことが、企業のブランドやビジネスに悪影響を及ぼすかもしれないというネガティブな視点だけでなく、取り組むことによってそれらに良い影響を与えるというポジティブな視点もあるということを忘れてはなりません。

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