ともにイノベーションを!神山まるごと高専×富士通のコラボがスタート-前編-

神山まるごと高等専門学校(以下、神山まるごと高専)は、起業家精神を育み、「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育成することを目指して2023年に創設された新しい高等専門学校です。富士通はこれに賛同し、奨学金基金を拠出するスカラーシップパートナー11社のうちの1社になりました。神山まるごと高専とのコラボレーションを通じて、富士通は何を目指しているのか。富士通と一緒に活動中の学生と富士通社員の対談を通じて、その想いを前後編で紹介します。

目次
  1. 神山まるごと高専のビジョンに賛同。毎年4名が「富士通奨学生」に
  2. 将来の「起業」を見据えて神山まるごと高専に
  3. 富士通奨学生が心に秘める「野心」とは

神山まるごと高専のビジョンに賛同。毎年4名が「富士通奨学生」に

神山まるごと高専は、「テクノロジー×デザインで、人間の未来を変える学校」をコンセプトに、2023年4月に徳島県名西郡神山町に設立された高等専門学校です。ソフトウェアを中心としたテクノロジー教育やデザイン教育、そして、起業家精神を育み「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育成することを目指し、起業家が現地に赴き特別授業をするなどのユニークなカリキュラムが組まれています。また、奨学金基金と長期的な寄付によって学費の無償化を実現する制度が創設されているのも特長です。(※1

神山まるごと高専 神山まるごと高専

富士通は神山まるごと高専のコンセプトやビジョンに賛同し、奨学金基金に寄付や拠出をする11社のスカラーシップパートナーの1社となりました。このスカラーシップパートナーという枠組みのもと、毎年4名の学生が「富士通奨学生」となり、担当教員や「神山クルー」と呼ばれる富士通グループ社員有志のサポートを得ながら、5年間にわたって富士通とのコラボレーション活動に参加します。そして、5年生時には新規事業を提案します。

神山まるごと高専と富士通とのコラボレーションでは、社会へ価値をもたらすイノベーションをともに生み出すべく、現在多様な活動を並行して行っています。富士通奨学生の4名は社内イベント登壇、新規事業創出プログラム「Fujitsu Innovation Circuit」やハッカソンへの参加、各事業部とのディスカッション等の活動を通じて、必要な関係構築やスキルセットの獲得を行い、富士通奨学生と富士通の相乗効果を図ります。

2023年9月 富士通奨学生4名を富士通のオフィスに招き、ワークショップ等を実施
2023年9月 富士通奨学生4名を富士通のオフィスに招き、ワークショップ等を実施

2023年9月 富士通奨学生4名を富士通のオフィスに招き、ワークショップ等を実施

2023年度の富士通奨学生は、名和 真結美さん、付 媛媛さん、宮野 柊太さん、山口 空さんの4名です。次章のインタビューでは、宮野さんと山口さんにご登場いただき、神山まるごと高専を選んだ理由、学びたいテーマ、将来の目指す方向性などをお聞きしました。神山まるごと高専生のリアルな姿に迫ります。

将来の「起業」を見据えて神山まるごと高専に

――宮野さん、山口さんはお二人とも関東ご出身とのことですね。近くにも沢山の高校がある中、徳島県の神山まるごと高専を選んだ理由を聞かせてください。

宮野さん:じつは私自身が神山まるごと高専のことを当初から知っていたわけではありません。親が知人から聞いて私に話してくれました。自分で進学先を積極的に探して調べて神山まるごと高専に決めたというのではないのです。

ただ、今、振り返ると、もともと自分の中に「社会に何か新しいものを生み出したい」という気持ちはあったと思います。中学時代、自分の夢を実現するなら「やはり起業するのがいいのかな」という、漠然とした考えは芽生えていたのかなと。神山まるごと高専のことを調べてみたら「起業家精神を育む」とあったので、徳島県で遠いなぁとは思いながらも、将来、起業するなら他の学校に通うよりは近道になるだろうと決めました。

山口さん:私も自分で探して決めたのではなく、きっかけは父の言葉でした。中学校の三者面談のときに、父が担任の先生に「私が中学生だったら通いたい高校がある」と話したのです。それが神山まるごと高専でした。私にとって父は尊敬する人の一人で、その父が通いたい学校ってどのようなところだろうと気になって調べてみたら、どうも普通の高校とは違うということがわかりました。

実際に学校説明会を聞いてみたら、他の学校にはない自由さがあると感じました。神山まるごと高専を設立したのが起業家たちだったことも、私にはインパクトがありました。

――なるほど。お二人とも自身で進学先をあれこれ調べて、その中で「絶対、ここがいい!」と決めたのとはちょっと違うようですね。とはいえ、決めたということは、抱いていた期待感があったと思います。入学して半年が経過しますが、今の感想はいかがでしょうか。

宮野さん:中学生のときも、神山まるごと高専に入学するときも「何歳までに起業しよう」、具体的に「どのような事業をしよう」といったことは考えてはいませんでした。それが、授業や仲間からの影響もあり、なんとなく「道が定まってきた」ように感じています。少しずつ実感が持てるようになってきたところというのが感想です。

山口さん:私の父は「人と人を繋ぐ」を理念とした会社を起こした、一番身近な起業家でもあります。その父を見てきたから「起業する」、「起業家になる」というのは、自然な将来の選択肢の一つでした。それは今もあまり変わっていない、というより、むしろ宮野君と同じように起業を考えている仲間も多いので、より具体的に身近に感じることができるようになりました。

――お二人とも、まだ16歳、それで「起業が身近になった」とはすごいですね。やはり、神山まるごと高専の仲間たちからの刺激や影響もあるのでしょう。仲間のみなさんは、それぞれが何か「尖がったところ」を持っていて、お互いが刺激しあっているような印象です。お二人は、どんなところが自分の尖がったところ、強みだと思っていますか。

山口さん:幼い頃から手先が器用でものづくりが得意でした。神山まるごと高専には、いろいろなモノを作って、試して、また作ってみるという環境が整っていて、思い立ったらすぐに作れるのがいいですね。しかも、自分で思い描いたモノ、例えば頭の中でイメージしたモノなどを作るのにあまり失敗しないのが私の取柄です。そこが強みかなと思います。

宮野さん:探究心があって、自分が面白いと思ったことなら集中して調べたり、勉強したり、深く追求していけるのが自分の強みかなと思います。中学時代を振り返っても、「あの時期には、あのことにのめり込んでいたな」というのがはっきりとありました。「これだっ、となったら徹底的に深く追求していけること」、これが強みです。神山まるごと高専では、そんな自分が好きになれるものをひとつでも多く探したいと思っています。

オンラインミーティングでの宮野さん(右下)・山口さん(真中左)と富士通社員 オンラインミーティングでの宮野さん(右下)・山口さん(真中左)と富士通社員

富士通奨学生が心に秘める「野心」とは

――神山まるごと高専の理事長である寺田 親弘氏が、あるインタビューの中で「第一期生の皆さんは、9倍もの倍率を勝ち抜いて合格した『野心溢れる人たち』です」と話されていました。お二人は、神山まるごと高専の5年間でどんなことをやり遂げたいか、今、心に抱いている「野心」について聞かせてください。

宮野さん:「野心」か…。自分は、「これをやりたい」というのはまだ具体的には決まっていません。ただ、ハードウェアの製品を作るよりは、サービスで世の中に変化をもたらしたいとは考えています。世の中にインパクトを与えるようなサービスを生み出せたらいいなと思いますね。

その視点では、いくつか考えていることはあります。先ほど、神山まるごと高専では一つでも多く自分が好きになれるものを探したいと話しましたが、動画や画像の制作はこれまでもずっと好きだったことの一つです。中学時代からのめり込んでいました。ただ、クリエイターが使う動画や画像の編集ソフトは機能が多いと使いにくく、使いやすいとその分、できることが少ないというトレードオフの関係になっています。

入学当初に考えていたアイデアの一つには、それを改善できるようなサービスもありました。使用する人にとって使いやすいように、自動的に機能や画面が変わるようなものです。

「野心」とまではいきませんが、動画や画像の制作に関連したことにはずっと興味を持ち続けてきたので、今はまずその分野で力を発揮したいと考えています。それが神山まるごと高専を選んだきっかけとも言えるかもしれません。

山口さん:宮野君は今、サービスやソフトウェアの話をしましたが、私は神山まるごと高専に入学するとき、最初は自動浮遊するドローンを作りたいと思っていました。ハードウェアです。イメージとしては、自分が歩いていると、その後を自動でついてきてくれるドローンです。ただ、それが入学してから変わってきました。

もともと自動浮遊するドローンを作りたいと思ったきっかけは、街灯が少ない地域に住んでいたので夜道が暗く、危ないなと思ったからでした。そこで、例えば子どもが暗い道にさしかかったら、そこに配置してあるドローンが勝手に浮き上がり、ライトで道を照らしながら子どもの後をついていくような、そんなことを考えました。今は、もう少し発展して、ハードウェアだけでなくサービスとして、地域に役立つような形でやりたいと思うようになってきています。

じつは小学生の頃、折り紙をたくさん折って、自宅の前を通る人に一つひとつあげたりしていました。その頃から手先が器用で作るのが好きというのもありましたが、それよりも自分が何かをすることで周囲の人が喜んでくれるのが嬉しかったのです。考えてみると、そういった気持ちは今も変わらず、それが、起業して世の中の役に立ちたいという想いにつながっているのかもしれません。

5年後に実現したいサービスについては、まだ具体的には決め切れていないですが、今、話したように自分が暮らす「地域」のことに関連して、人と人、人と地域が繋がるようなことをやりたいと考えています。地域のお困りごとを解決する仕組み、システム、サービスとかですね。折り紙を道行く人にあげるのだって、隣人の顔も知らない暮らしが当たり前の世の中になったらあり得ないこととも言えるでしょう。以前なら地域でひとつの家族みたいなところもあったように記憶しています。そうした繋がりが失われつつある世の中を少しでも変えていくようなことに取り組んでみたいと考えています。

ここまでの前編では、富士通奨学生の宮野さん、山口さんのお二人に神山まるごと高専を選んだ理由や、5年間で取り組んでみたいこと、将来の目標などについてお話を聞きました。後編では、お二人をインターンとして受け入れている富士通データサイエンス部のメンバーを交えての対談をお届けします。

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