この不確実な時代、持続可能な社会に向けて、企業はどのように変革を起こすべきでしょうか。ビジネス変革を成功に導く5つのテクノロジーについてご紹介する連載企画。前回のAIに続き、今回はコンバージングテクノロジーに焦点をあてご紹介します。
人々が安心して暮らせる、持続可能な地域社会の実現に向けて、多様で複雑化する社会課題の解決に向けた施策立案により、社会がどのように変化してくのか予測することは困難な状況にあります。政策の実施によって人々がどのような反応や行動を起こすか仮説を立てることは可能ですが、あまりにも多くの要素があるため、粗い粒度での近似値程度しか算出することができません。そのため、地方自治体が取り組むスマートシティなどで意思決定に必要な情報が不足しています。未来を予測することはもとより、個々の人間が施策による影響を受けて、どのような行動へ変わるか見通すことが困難となっています。
施策効果の検証を可能とするためには、行動経済学とAIを組み合わせたデジタルリハーサル技術により、天候などの間接的な影響要因も含む実世界の人の行動に近いモデルをAIによる生成が必要です。実際の都市を再現したデジタルツインと融合させる先駆的な取り組みについて、デジタルトランスフォーメーションのコンサルティングをリードするKhong Sheau Yanに話を聞きました。
革新的なソーシャルデジタルツイン技術
富士通は、小規模な工場など構成要素が限られたデジタルモデルによるデジタルツインの開発を進めています。このデジタルツインから人文科学の知見を応用し、人と環境の影響を組み合わせたソーシャルデジタルツイン(SDT:Social Digital Twins)の構築を、都市全体、地域全体、さらには社会全体にまで活用を広げようと取り組んでいます。実世界をセンシングし、人文科学による洞察を加えることで、デジタル空間上に実社会を再現します。
例えば、デジタルリアリティソリューションのグローバルリーダーであるHexagonと提携し、ドイツ・シュトゥットガルト市の「Urban Digital Twin project」を支援するプラットフォームを提供しました※1。シュトゥットガルトの土木事務所では、このSaaSソリューションを利用して、街中にある水道、道路など様々なインフラ設備にIoTセンサー情報からモニタリングした結果を可視化・分析し、都市環境における適切な保守アクションをとることで60万人の住民の生活の質の向上に取り組んでいます。
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※1
また、富士通は、機能を向上させるためにActlyzerなどのAIテクノロジーを活用し、将来のソーシャルデジタルツインに不可欠な基盤を構築しています。Actlyzerは、人の行動や表情、人と人、物と物との関係、周囲の環境などをセンシングする技術の一つです。ヒューマンセンシングやコンテクストセンシングで得た人に関わるデジタル情報を用いて、人の心理状態を推定し、次の行動を予測することができます。
ソーシャルデジタルツインが描く未来
富士通は、米国カーネギーメロン大学(CMU)と、ソーシャルデジタルツイン技術の開発に焦点を当てた複数の研究プロジェクトで協業しています※2。社会実装に向けて、交通規制や車両移動状況などの実データを用いて、動的に人流の発着地を推定して交通量の管理や調整を行うことで、CO2排出などの環境問題や経済効率などの都市問題を解決するための施策による有効性の検証を進めています。グローバル社会における共同研究・技術の実用化を模索することに重点を置いています。
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※2
社会は、デジタルツインのようなテクノロジーと行動科学からの洞察を融合することで得られる潜在的な可能性に気づき始めました。富士通は、これらの分野に積極的に投資し、社会計画の未来を形作るツールとモデルを構築しています。
今後も、コンバージングテクノロジーによる交通ネットワークの最適化やスマートシティ化、およびその他のソーシャルシステムのデジタルツイン構想に、ソーシャルサイエンス主導のモデルがどのように組み込まれるかに注目してください。

富士通 APAC
Uvance Vertical Offerings、シニア・ディレクター
Khong Sheau Yan
ICT、デジタルソリューション、小売、モビリティ、製造、およびその他の業界向けDXコンサルティングで26年の経験を持つデジタルトランスフォーメーションリーダーであり、ヒューマンセントリックデザイン思考法と、データ分析、AI、IoT、RPA、クラウド、モバイルなどの高度なテクノロジーを活用しています。
- ※この記事はFujitsu Blogに掲載された「Social policy is on the edge of a digital revolution」の抄訳です。