持続可能な社会「Trusted Society」の実現に向けた5つのユースケース

グリーントランスフォーメーション(GX)を実現するDX

富士通は、ビジネスを加速し社会課題に挑むソリューションFujitsu Uvanceにより、持続可能な社会「Trusted Society」の実現を目指しています。その取り組みの1つとして、2022年6月、Hexagon Safety, Infrastructure & Geospatial division(以下、Hexagon)とデジタルツイン技術の領域での提携を発表。ユースケースの作成を進めています。今回はそのうち、脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の取り組みを中心に5つのユースケースをご紹介します。(2022年11月29日開催「HxGN LIVE Japan」セミナーより)

目次
  1. 来たるべき2030年の世界とは
  2. 都市が解決すべき社会課題と、解決のポイント
  3. サステナブルな社会課題の解決に向けた5つのユースケース
  4. サステナブルな世界の実現に向けて

来たるべき2030年の世界とは

誰一人取り残されないサステナブルな社会とグリーンな未来社会の実現に向けて、世界中でいまSDGs(持続可能な開発目標)を掲げ様々な取り組みが加速しています。それでは、SDGsがゴールと定める2030年とは、一体どのような世界でしょうか。
それは、地域や人々・組織・モノなどあらゆるものが今より密接にデータで繋がりあい、生活者視点での価値の提供や、社会課題の解決に立脚したイノベーションが当たり前のように起こる世界だと富士通は考えます。IoTという言葉が身近になって久しいですが、それでもまだ、いまの世の中では全てが常時接続しているとは言えません。都市が抱える様々な社会課題を解決するには、既存の社会構造の隔たりを超えて、もっとすべてがデータで繋がる必要があると考えます。富士通はTrusted Societyというコンセプトの元、信頼できるデータとそれを預かるトラステッドなシステムによって、人々が安心・安全に暮らせる未来づくりに取り組んでいます。

都市が解決すべき社会課題と、解決のポイント

それでは、都市が抱える、解決すべき社会課題にはどのようなものがあるでしょうか。富士通は日本だけでなく世界中の都市をベンチマークした結果、次の3つの課題を割り出しました。Social Service(住民参加型のインクルーシブな公共サービス)、Transportation(人とモノのサステナブルな移動の実現)、Energy Cycle(クリーンエネルギーによる脱炭素社会の実現)の3つです(図1)。

図1:2030年を見据えた社会課題テーマ

これらの課題は一朝一夕で解決できるものでなく社会全体で取り組む必要があり、業種を超えてつながるエコシステムをいかに構築するかが解決のポイントになると考えます。また、課題解決にはデジタルツインの活用が効果的ですが、どのデータと繋げるかの組み合わせ方も重要です。例えば、官庁が持つ都市データやオープン化された統計データに、民間企業が収集・蓄積したモビリティや流通などの動的データを繋げることでデータが生き、新たな価値が生まれます。この業界を超えた「組み合わせ」と「組み合わせ方」が社会課題を解決し、価値を最大化するポイントだと捉えています。

これらを実現するための第一歩として富士通は、2022年6月にHexagonとパートナーシップを締結。富士通の強みである動的データを活かすダイナミックなデジタルツインや、予測・分析サービス、富岳をはじめとするHPCや、量子現象に着想を得たデジタルアニーラ等のコンピューティングサービスなどに、Hexagonの強みである静的なデジタルツインを地理空間上で表現するプラットフォームM.App Enterpriseや、地理空間情報ソフトウェア製品群LUCIADなどをかけ合わせ、サステナブルな社会課題を解決するユースケースの構築を進めています。

サステナブルな社会課題の解決に向けた5つのユースケース

それでは、富士通とHexagonが共同で取り組んでいるユースケースを5つご紹介しましょう。

ユースケース1 : 移動の渋滞緩和・CO2削減(ミュンヘン市、ベルリン市)

1つ目は、ドイツのミュンヘン市、ベルリン市の事例です。欧州では移動手段にシェアバイクがよく使われており、都市交通におけるCO2削減や渋滞緩和に貢献しています。日本のシェアバイクは各地に設置されたステーションで借り、返却するのが基本ですが、欧州ではステーション以外の場所で乗り捨てるのが一般的であり、乗り捨て禁止エリアにまで放置されるという問題が多発していました。これに対し、富士通とHexagonでMVP(Minimum Viable Product:実用最小限)で開発したダッシュボードを導入。シェアバイクの位置情報などの動的データと、都市の静的な地図データを組み合わせることで、市は、シェアバイクがどこに放置されたのかをリアルタイムに分かりやすくマネジメントすることができるようになりました。

シェアバイクの稼働状況データ

ユースケース2 : 交通事故の削減・抑止(損保会社A社)

2つ目は、交通事故削減への取り組みです。損保会社は、交通事故への対応を迅速・適切に行うためにドライブレコーダーのデータを活用しています。そのドライブレコーダーの映像データに、どこでどのような事故が発生したのかをひも解く富士通の映像解析技術と、事故状況の統計を地図に可視化するHexagonのGIS機能をMVPで組み合わせてご提供しました。事故情報、ドライブレコーダー映像、位置情報、地図などの情報を組み合わせています。
今はコネクテッドカーの時代。事故情報だけでなく急ブレーキをどこでかけたのかといった情報も車から入手でき、それらの情報は損保会社に最も集まります。それらをマップで見える化した情報は価値が高く、たとえば、運輸会社の運行管理者や、通学路をもつ自治体や学校に展開することで、事故を抑止する取り組みにつなげることができます。

ドライブレコーダーの映像解析

ユースケース3 : 持続可能な都市環境インフラの維持管理(シュトゥットガルト市)

MVP事例の3つ目は、ドイツのシュトゥットガルド市の環境最適化に向けた意思決定を支援する取り組みです※1。市民70万人が利用する上下水道、道路などのインフラの情報をデジタル化し、かつ、そこから収集した空気、水道、道路など様々なIoTセンサー情報をモニタリングすることで、都市環境における適切な保守アクションをとることができるようにしたものです。これは、富士通が提供するクラウドインフラストラクチャーサービスと、Hexagonの可視化ツールM.App Enterprise、IoTフレームワークXalt | Integrationにより構成しています。
都市としてまずはベースのインフラ基盤のデジタル化を整備し、今後、この上に例えば電力や風力など、さらに様々なデジタルツインを増設していく予定です。

ユースケース4 : 自然災害から社会インフラの安定を守る

今、世界各地で気候変動による自然災害が深刻化し、時に生活者の安全やビジネスに大きな影響を与えています。一方、成熟した都市では水道管や橋・トンネル等の社会インフラの老朽化による維持管理も喫緊の課題です。これら2つの課題に対し、気象データから自然災害を事前に予測することで、被害を最小限にくい止めようとするものです。
平時では、気象・自然災害の予測をもとに、被害を受ける可能性が高い順に対処することで被害の抑制に貢献します。また、同じく自然災害の予測から、ハザードマップの作成や避難訓練などへの活用も可能です。
実際に災害が発生したときには、災害状況を即座に把握することで、復旧の優先度の見える化や早期復旧作業が可能になります。また、住民へのスムーズな避難誘導や、物資を運ぶトラックを誘導し物流停滞を避ける等も可能です。
有事への対策だけでは費用対効果が合わないため導入しにくいといった声を一部の自治体から伺うことがありますが、そのような悩みを解決するためにも、平時のデータ活用と合わせて考えることが重要です。災害予測だけではダメで、その情報をどう活用するか、ぜひ皆さまとも議論したいところです。

平時の見える化(左)と有時の見える化(右)の例

ユースケース5 : 脱炭素交通の実現

CO2の削減を考える際、ガソリン車、ディーゼル車を禁止しEV化する話題が世界で加速していますが、肝心の電力が火力発電所で作られては、その効果も低減してしまいます。こちらのユースケースでは、EV車両の稼働情報とグリーン電力(風力、太陽光などの自然エネルギー)の発電状況をくみあわせて、フリート車両の稼働効率を維持しつつ、グリーンな電力で充電することでトータルなCO2を15%削減できることを確認しました。詳細は、以下の記事※2でご紹介しています。

サステナブルな世界の実現に向けて

今回は、都市が解決すべき社会課題のうちTransportationとEnergy Cycleを中心にユースケースをご紹介しましたが、社会課題は無数に存在します。ただしいずれも、業種横断でデータを組み合わせることで、解決は加速していくものと考えます。
社会課題は当然1社だけで解決できるものではありません。富士通は各業種・業界の皆さまとともに、従来の枠組みや垣根を超えてアプローチし、人々が豊かに暮らせる、環境ファーストでレジリエントのある、サステナブルな社会作りに貢献します。

富士通株式会社
Uvance本部 Trusted Society
Lean Development Office シニアディレクター
井上 大悟

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