「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」に協力~日本のデジタル技術を世界へ発信~

※写真提供:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター

COVID-19やウクライナ侵攻、気候変動問題など、世界は不確実性や社会のサステナビリティへの懸念に直面しています。経済安全保障の確保やサプライチェーン・リスクへの対応など、レジリエンスのある社会を実現するためにITインフラやサービスの重要性が高まっています。一方で、社会や産業の構造に大きな影響を及ぼす可能性のある生成系AIをはじめとする新興技術に対して、我々の社会がどのように向き合っていくべきなのかが問われています。

国際社会における合意形成が難しいという課題が山積する中、自由、民主主義、人権などの基本的な価値観を共有するG7が果たす役割への期待は大きくなっています。
こうした状況下、G7広島サミットに先立って開催されたG7群馬高崎デジタル・技術大臣会合では、AIガバナンスや新興技術の推進、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT:Data Free Flow with Trust)といった重要なテーマが議論されました。

富士通はFujitsu Uvanceのもと、社会のサステナビリティに関する課題に取り組む企業としてこの会合の趣旨に賛同し、関連イベントでは当社代表取締役社長の時田による登壇や併設展示会へのブース出展という形で協力。日本のデジタル産業界を代表する形で会合の合意文書への提言や国際的な議論の促進に貢献するとともに、富士通のビジョンや最先端テクノロジーを発信しました。ここではその様子をレポートします。

目次
  1. 「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が開催
  2. 社長時田がG7のデジタル産業界を代表し、提言を行いました
  3. Gメッセ群馬で「デジタル技術展」が開催。富士通ブースを出展
  4. 最後に

「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が開催

G7広島サミットに先立ち、各国のデジタル・技術担当の閣僚が参加する「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が2023年4月29日から30日にかけて開催されました。
G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合とは、仏、米、英、独、日、伊、加(議長国順)の主要7か国とEUの首脳が参加する「G7サミット」にあわせて、各国のデジタル・技術担当大臣が会する関係閣僚会合です。
日本政府が提唱する「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT:Data Free Flow with Trust)の推進、オンラインの安全性並びに信頼性を向上させる新興技術の促進、6Gを含むICTインフラや人工知能などを主要テーマとして議論が行われ、成果文書として「G7デジタル・技術閣僚宣言」が採択されました。

社長時田がG7のデジタル産業界を代表し、提言を行いました

デジタル・技術大臣会合の開催に向けては様々な関連イベントが開催され、国際的な議論や提言が行われました。その主要な関連イベントに、社長の時田が参加し、G7各国の官民を交えた議論を主導しました。

まず、G7各国の政府やデジタル産業界(Tech7)による議論・提言の場として4月27日に開催された「G7デジタル・技術大臣会合に向けた官民会合」において、時田はTech7の代表(電子情報技術産業協会(JEITA)会長)として、河野太郎デジタル大臣、松本剛明総務大臣、西村康稔経済産業大臣を交えた議論をファシリテートするとともに、「Tech7共同声明」を表明しました。

G7デジタル・技術大臣会合に向けた官民会合

Tech7共同声明(提言項目)

  • 国際経済の回復を維持・促進するためのデータフローの促進
  • 気候変動やエネルギー転換などの地球規模の持続可能性課題への対処におけるデジタル技術の活用
  • 人間中心のAI原則の世界的な普及
  • 信頼を守るサイバーセキュリティ
  • 社会の新たなデジタル化の機会に向けたコネクティビティの促進(6G)
  • 基礎から高度なデジタルスキルを向上させるための積極的な協力

また、公式官民イベントとして4月28日に開催された「デジタル・トランスフォーメーション・サミット(DXサミット)」においては、時田はセッション「DX for Green Society」にも登壇し、富士通の取り組みの紹介や今後のGX(Green Transformation)に向けたグローバルな官民連携の必要性を提唱し、大臣会合に向けた提言に反映されました。

デジタル・トランスフォーメーション・サミット(DXサミット)
※写真提供:世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター

Gメッセ群馬で「デジタル技術展」が開催。富士通ブースを出展

富士通ブース外観

一方、Gメッセ群馬の会場では、最先端のデジタル技術や取り組みをG7各国関係者にアピールし、今後の国際展開や連携を促進することを目的とした展示会「デジタル技術展」が開催されました。この「デジタル技術展」には日本を代表するおよそ100の企業や団体が出展し、富士通からも人々の幸せとウェルビーイング、誰も取り残されない持続可能な未来の実現をテーマとした「体験型」の最先端テクノロジーを展示。ここからはその「体験型」展示品の4つをご紹介します。

常時認証技術で安⼼と、より個⼈とサービスの連携が可能に

富士通ブースには複数のカメラを設置。各カメラ映像から人物を検出し、そこから特定の人物を再同定するための特徴量も抽出します。各カメラからの検出・抽出結果をもとに複数カメラ間で同一人物を紐づける技術によるデモンストレーションを実施しました。会場にはカメラとその映像を取得してクラウドに送信するPCがあるのみで、常時認証にかかる処理はすべてクラウド上で行われています。

まず、入り口付近のカメラに写った来場者の映像から、来場者ごとの特徴を抽出します。来場者がブース中央に移動すると別のカメラの映像がディスプレイに映し出されますが、そのディスプレイでは入り口付近のカメラで登録された方を同一人物として認識して色分けします。

ブース中央のディスプレイ。入口付近のカメラで認識した来場者を特定し、色分けして表示

常時認証を実現できると、防犯などセキュリティ用途での活用はもちろん、利用者とサービス提供者とのタッチポイントを無限に設けることができ、パーソナライズされた高いUX(顧客体験)を実現できます。本技術はまだ研究開発途上のものですが、今後はさらに混雑した状況や類似した服装であっても高精度に追跡できる技術を実現するなど、早期の実用化に向けて研究開発を加速させていきます。

ウェルビーイングへのポイント
  • 防犯などセキュリティ用途だけでなく、適切な状況でその人の行動に合ったサービスの起動をすることで、人が暮らしやすい「ウェルビーイングな社会」を目指します。

AIによる行動検知と自律行動ロボットで、安心・安全な社会の実現に貢献

行動解析AI “Actlyzer”(アクトライザー)は、年齢・性別・身長といったその人の属性の推定、人が「ヒトと話している」「モノを持っている」といった、人と「ヒト・モノ・環境」との関係性のセンシング、次にとる行動の予測をする技術です。インシデント発生時の迅速な初動対応と作業効率の向上を実現し、人手に頼らず安心・安全な都市生活を実現します。

富士通ブースでは、行動解析AI ”Actlyzer”が、盗難の可能性がある行動を検知し、自律型ロボットにアラートを発信、ロボットが対象者を追尾して声かけするデモンストレーションを行いました。

画面手前のツボを触ってはいけない設定となっている
対象のツボを触るとAIが検知
AIと連動したロボットが追跡してお声がけする仕組み

その他の活用シナリオとしては、犯罪・事故・自殺などの「予兆」を検知して、ドローンなどの様々なシステムやデバイスと連携することで、対象者への声掛けや追尾。さらには警察官との連携等を実施することを想定しています。

ウェルビーイングへのポイント
  • AIによる行動検知と自律行動ロボット、そして事が起きる前の予兆検知によって、人が安心・安全に暮らせる「ウェルビーイングな社会」を目指します。

現実と仮想が融合するメタバースで、制約から解放された新たな体験を提供

ブース内では、リアル空間(汐留にある富士通の事業所の一室)のライブカメラ映像をローカル5G経由で解析し、メタバース空間へリアルタイムに反映した、VRを用いた没入感や臨場感のあるコミュニケーションの体験デモンストレーションも実施しました。

事業所にいる社員が動くと、メタバース上のその社員のアバターも、リアルタイムに動く仕様になっており、デジタルツイン(※1)になっています。

  • ※1
    デジタルツイン:実際に稼働している物理的な設備を、仮想空間内においても同様の環境で実現するもの。ツイン=双子。
画面上:富士通の汐留事業所のライブカメラ映像
画面下:その様子をリアルタイムで映し出したメタバース
4名の人とアバターが連動していることがわかる

実際にVRゴーグルを被ると、そこはメタバース上の汐留の事業所。群馬県にいながら、東京汐留にいる社員のアバターと、リアルタイムでコミュニケーションを取ることができます。

ローカル5Gを活用すると、Wi-Fiなどと比べて大容量の映像データを低遅延で伝送できることや、カメラの追加や設置場所の変更を有線よりも柔軟にできることが特徴です。今回は他事業所と繋ぐのみでしたが、以下のような活用方法も検討できます。

ウェルビーイングへのポイント
  • 人の身体的な制約や距離などの条件から解放され、誰もがコミュニケーションを取って繋がり合える、人の幸せと「ウェルビーイングな社会」を目指します。

「音」の可視化で、ダイバーシティの相互理解を目指す

駅のアナウンスや電車の音といった環境音を、文字や手話、オノマトペとして視覚的に表現することで、鉄道を誰もが使いやすく、楽しくなるような体験を目指した装置「エキマトペ」もご紹介しました。音を見える化することで、ろう者にとって安全安心な鉄道利用になることはもちろん、健常者の方もエキマトペを見たときに、考え方や行動が変わることを期待しています。2022年にJR上野駅(東京都台東区)の実証実験で実際に設置した装置を展示し、来場者にも「エキマトぺ」を体験していただきました。

上野駅で設置されたエキマトぺ
自販機の上部に設置し、ホームの音を可視化している
ウェルビーイングへのポイント
  • 安心安全な駅の利用だけでなく、ダイバーシティの相互理解を促進して、人の幸せと「ウェルビーイングな社会」を目指します。

最後に

時田が登壇した官民会合およびDXサミットでは、G7各国の政府や各界の有識者との議論を交えることで、デジタル技術を通じた社会課題解決やそのためのルール形成に向けた国際的な議論の促進や連携に貢献できたことかと思います。また、デジタル技術展では来場者に最新技術を体感していただくことで、富士通への期待やテクノロジーの活用方法などについて多様な方々との対話ができた意義深いイベントとなりました。今後も富士通は日本のデジタル産業界をリードする立場として、社会に向けて新しい価値を生み出す取り組みを国内外に発信していきます。

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