脱炭素実現に向け、分野を超えたデータ連携の有効性を実証

富士通は、「フリートマネジメントオプティマイゼーション(Fleet Management Optimization:FMO)」を活用したデジタルコラボレーションの実証で、輸送サービスを展開する配送事業者の配達車(EV)の充電によるCO2排出量を15%削減できることを10月26日に発表しました。
これはWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議:World Business Council For Sustainable Development)の活動の一環で実施したもので、27日に開催されたWBCSDの総会で富士通の執行役員EVP高橋美波より説明しました。その内容についてご紹介します。

目次
  1. WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)とは?
  2. 脱炭素交通の未来を実現するデジタルコラボレーションの有効性を実証
  3. データが生み出す、その先の未来
  4. WBCSDと富士通が目指す世界は同じ

WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)とは?

WBCSDは、世界200社以上のさまざまな企業のCEOが集い、ビジネスを通じた持続可能な社会の実現を目指す国際団体です。
富士通は2013年より参画、2018年からは理事企業に就任し、「Vision 2050」の改版(※1)にも関わりました。参加企業は持続可能な社会の実現に向け、さまざまな団体・企業と危機感をもって共働・コラボレーションしています。

  • ※1
    ビジョン2050:大変革の時:2050年までに90億人以上の人々が地球の限界内で豊かな暮らしを送る社会の実現に向けて、国際的な課題や果たすべきチャレンジについてロードマップ等をまとめたもの。2021年3月改訂版発表。

脱炭素交通の未来を実現するデジタルコラボレーションの有効性を実証

WBCSDが推進する「企業間データシェアリングによる脱炭素交通」の一環として、富士通はWBCSDのほか、オランダのコンサルティング会社「アルカディス」(Arcadis)、イギリスの電力会社「ナショナルグリッド」(National Grid)と共同で、脱炭素交通の実現に向けたデジタルコラボレーション(分野を超えたデータ連携)の実証を行ないました。

ネットゼロ(※2)の達成に向けて、欧州を中心に車両のEV化が進んでいますが、EVの充電は電力網への負担がかかります。EV増加は電力消費増加にもつながるため、追加需要に対応できるよう交通、エネルギーといった分野を超えたアプローチが必要となります。

  • ※2
    ネットゼロ:温室効果ガスの排出が正味ゼロ(カーボンニュートラルは温室効果ガス排出ゼロ)にすること。カーボンニュートラルとほぼ同義。

今回の実証では、脱炭素交通の実現を目的に、食品や飲料品などを配達するEVの運行や充電に関するデータと、電力のグリーン度を表すカーボンインテンシティ(単位あたりのCO2排出量)等のオープンデータを、富士通のFMOを活用し掛け合わせ、シミュレーション分析しました。その結果、グリーン電力(風力・太陽光発電など)が豊富な時間帯にEVを充電できるようサポートしたことで、配送事業者(フリート事業者)のEV充電によるCO 2排出量を15%削減できることを確認したのです。

今回の実証により、様々な業界にあるサイロ化されたデータをデジタルテクノロジーを活用して統合することで、データに価値が生まれ、ネットゼロのような社会課題の解決に貢献できることが証明されました。

本実証の概要

データが生み出す、その先の未来

富士通は今後の計画として、以下の2点を強化します。
1つは、業種のさらなる拡大です。今回のフリート事業者や物流業者向けの取り組みだけでなく、Trusted SocietyにおいてMVP(※3)開発を加速させ、ユースケースを拡大し、人の移動を支える交通サービス事業者への展開に向けて幅広く対応します。
そして2つ目は、都市レベルでデジタルリハーサルを行うソーシャルデジタルツイン(※4)の実現です。富士通は人や物、経済、社会の相互作用をデジタルに再現し、社会の実態を把握することで、多様で複雑化する課題の解決に向けた施策立案などを支援していきます。

  • ※3
    MVP:Minimum Viable Product(実用最小限の製品)。プロジェクトのアイデアや仮設が果たして本当に人が欲しがるものなのかを検証していくために必要なプロセス。
  • ※4
    ソーシャルデジタルツイン:人・物・事の相互作用(ミクロな事象)や社会現象(マクロな事象)まで社会全体を丸ごとデジタル化し、人と社会の現実を把握・理解した上で、勘所を見定めて人・社会に働きかけることで、多様で複雑化する社会における課題を解決する技術群。

WBCSDと富士通が目指す世界は同じ

富士通は、世界をより持続可能なものにするという目的と情熱を持っています。この目標を達成し、お客様の成功を促進するため「Fujitsu Uvance」というビジネス・フォーカスを用意しています。
Fujitsu Uvanceは、7つの重点分野で構成されています。「誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくる」というビジョンのもと、社会課題を解決するクロスインダストリーの4つの分野と、それを支えるテクノロジー基盤の3つの分野です(図1)。

図1 Fujitsu Uvance

富士通はFujitsu Uvanceを通じ、人々が豊かで安心して生活できる世界の実現に貢献していきます。私たちは、WBCSDのビジョン(Vision2050)はFujitsu Uvanceで行おうとしていることと一致していると考えています。今回の実証による経験と実践により、富士通はWBCSD活動をさらに加速させ、日本および世界のさまざまな業界/市場を通じて社会的課題にアプローチしていきます。

さいごに、今回の実証に携わった担当者からのコメントをご紹介します。

関係者のコメント

今回Arcadisには、ネットゼロ達成でのデータ連携の重要性や、富士通の仮説やパッションに共感しデータ提供に協力していただきました。今回、National GridとArcadisから提供されたデータのおかげで、データに価値を与え、CO2が削減できる実証結果を得られました。感謝の意を表すとともに、その価値を広く周知したいと考えています。

Uvance本部 Portfolio Strategy室
丸橋 隆行(まるはし たかゆき)

Fujitsu Research of Europe Ltd.
Converging Technology Research Group
久富 真紀子(ひさとみ まきこ)

Fujitsu Technology Solutions Sp. z o.o.
GDC Poland DX Services, Solutions Architect
Zawisza Hodzic(ザビシャ・ホジッツ)

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