社内のレガシーシステムを変革せよ!富士通が実践するDXとは

経済を停滞させ、国際競争力の低下を招くと言われる「レガシーシステム」。DX化を推進する富士通も例外ではなく、社内の決裁システムがレガシー化し変革が求められていました。そこで、新システムを導入し、今までかかっていた時間を30%減らすことに成功しました。ここでは、新システム導入までの経緯にフォーカスを当て、どうやってレガシーシステムから脱却したのか、今までと何が違うのか、富士通の取組みをご紹介します。

目次
  1. レガシーシステムを使い続けると、年間最大12兆円の経済損失に
  2. 社内決裁システムは20年以上が経過。刷新に向けた富士通の取り組み
  3. 「ありたい姿」を描く、デザイン思考のアプローチ
  4. 決裁にかかる時間30%減!新システムで実現できたこと
  5. 社会課題の解決のため、必要とされる会社でありたい

レガシーシステムを使い続けると、年間最大12兆円の経済損失に

「2025年の崖」という言葉を聞いたことがありますか?
経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会のDXレポート(※1)で、「2025年までにレガシーシステムの刷新ができなければ、DXが実現できないだけでなく、2025年以降に年間に最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と言及され、レガシーシステムを抱える各界からは驚きをもって受け止められました。

レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みを使用して構築された、最新技術が適用しにくいシステムのこと。数十年も前に独自開発されたものが多く、技術面における老朽化が発生しています。最新の技術を適用できなかったり、処理能力不足からシステム障害を引き起こしかねなかったりと、多くの問題を孕んでいます。

同レポートによると、21年以上稼働しているレガシーシステムが、2025年にはシステム全体の6割を占めると予測しています。スピード感を求められる現在のビジネスにおいて、レガシーシステムは経営の重荷になりかねません。そして、経済の停滞を引き起こし、国際競争力を低下させてしまいます。
既存システムの見直しは、待ったなしの状況なのです。

社内決裁システムは20年以上が経過。刷新に向けた富士通の取り組み

富士通も社内にレガシーシステムを抱えていました。それは、システム構築からすでに20年以上が経過した決裁システム。システム自体が老朽化し拡張が困難なうえ、部門ごとに独自の方法で決裁のワークフローを回しており、承認まで時間がかかっていたのです。また、この20年で富士通の事業構造も大きく様変わりし、システムと業務との間に大きなギャップができていました。

2020年、柔軟な意思決定を達成するためにグローバル共通でプロセスを標準化していく方針が打ち出されました。
本プロジェクトは、これまでなかなか手を付けられなかったシステムリニューアルという開かずの「ドア」を開き、また従業員にとってはあまり身近ではないDoA(Delegation of authority=権限委譲の略)をより親しみやすく開放していくという思いを込めて『Open DoA』と名付けられました。

「ありたい姿」を描く、デザイン思考のアプローチ

Open DoAプロジェクトで最初に取り組んだのは「ありたい姿」を描くということです。そこで取り入れられたのが、未知の課題を解決する「デザイン思考」のアプローチです。
世界180か国に展開するグループ会社約400社、所属する約12万人の全従業員が納得できるよう、担当者から役員クラスまで、幅広い階層にいるユーザにアンケートやヒアリングを行い、生の意見を直視し理解する。課題点を洗い出して方向性を決めていったのです。

「当初はプロジェクトメンバー間の中でも、刷新するか、現行システムの仕様に従うかなど目指すところがバラバラでした。さまざまなユーザの声を聞いて、あるべき姿を描くことで、同じ方向を向くことが重要でした」と、ガバナンス・コンプライアンス法務本部の平田愛佑子は振り返ります。
さまざまな承認を行う経営層にもヒアリングしました。デザインセンター ビジネスデザイン部の西澤菜月は次のように話します。「経営層にインタビューをすると、これまでは見えていなかった承認する側の働き方や利用シーンを知ることができました。たとえば、『移動中や業務の合間など、スキマ時間を活用できるよう、モバイル対応してほしい』というように、忙しい経営層の働き方にフィットした機能も重要という意見がありました。そのため、働く場所に依存しない、新しい働き方に応じた機能も搭載すべきという案が浮上しました」。

こうして、ToBe像としてプロジェクトが目指すべき6つの軸を次のように策定しました(図1)。

図1:プロジェクトが目指すべき『6つの軸』

決裁にかかる時間30%減!新システムで実現できたこと

プロジェクトに携わったメンバーは80名ほどで、部門も複数にわたりました。プロジェクトを進めるための5つの柱を明確にし(図2)、デザイン思考で取り組むという大きな方針のもと、プロジェクトをアジャイルで進めてきました。このように進めてこられたのは、2020年に富士通自身を変革する全社プロジェクト「フジトラ」が本格始動し、全社一丸となった変革活動が浸透してきた証なのかもしれません。

図2:プロジェクトを進めるための『5つの柱』

こうして新しい決裁システム『KESSAI』の構築は2021年8月にスタートし、半年後の2022年1月に第一弾としてグループ会社向けに、2022年5月に第二弾として富士通本体向けにリリースされました。
これによって、以下を実現できたのです。

新システムで実現できたこと

  • 起案から決裁までの所要時間を約30%削減
  • グローバルでのワークフロー系システムが共通インスタンス上で運用できるため、変化する業務フローにも柔軟に対応
  • 社内システムとの連動が容易
  • グループ会社を含め、グローバルに共通化
  • マルチデバイスに対応し、場所を問わず利用が可能
  • 回送先の自動設定や、案件の保存・検索機能の実装でユーザビリティが向上
  • 申請フローのシンプル化、標準化

KESSAIが目指すOne Fujitsuプログラムを最適に運営するための統制を司るデジタルシステムプラットフォーム本部クラウドサービス統括部のシニアマネージャー木村幹奈は、「決裁業務がシームレスになることで、生産性向上にも寄与しています。全グループ12万人のロスタイムを削減することを考えると、 この決裁システムは大変な意義があると思います」と話します。

社会課題の解決のため、必要とされる会社でありたい

新システムではさまざまな効果があがっていますが、これで決裁システム刷新の取り組みが完了するわけではありません。
ガバナンス・コンプライアンス法務本部 法務知財内部統制推進本部 シニアマネージャーの堀川剛史は次のように話します。「その次にやるべきことは、データ分析に基づいたプロセス改革です。決裁のワークフローを運用する中で捉えたボトルネックを継続的に分析・解消し、新たなワークフローに反映し続ける必要があると考えています」。

全社変革プログラム「フジトラ」プロジェクトをリードする富士通 執行役員EVPCIO(兼)CDXO補佐 福田譲は、「社会全体の課題の解決のため必要とされる会社でありたいと願っています。自分たちがこうありたいと願う姿になるために、ワクワクしながら前進していく。そんなプロジェクトを展開したいと思っています」と話します。

課題の解決のため、閉ざされていた「ドア」を躊躇なく開ける。
富士通の変革への挑戦は続いていきます。皆さんも、ともにそのドアを開けませんか。

KESSAIプロジェクトのメンバー
(写真左から、ガバナンス・コンプライアンス法務本部の堀川、デジタルシステムプラットフォーム本部の木村、高橋、ガバナンス・コンプライアンス法務本部の平田、デザインセンターの内田、西澤)
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