私たちのWell-beingを考える
「未来の語り場」 神田外語大学×富士通

目次
  1. 私たちが感じている未来への期待や不安
  2. 人の繋がりや居場所の変化について
  3. “ゆたか”な生き方とは?
  4. より良く生きるために、世の中に必要なこととは?
  5. ディスカッションを通じて気づいたこと

「私たちは、未来をどうしよう?」
その答えをこれからの未来を担っていく皆さまと一緒に考えるべきだと、私たち富士通は思います。
今感じている課題、未来への展望や取り組みそして思いを次の世代と伝え合い、対話し、共に考える「未来の語り場」です。
今回は、SDGsや社会問題を研究する神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部の皆さんと「自分にとってのWellーbeingとは」をテーマに様々な対話を重ねた様子をお届けします。
(本記事は2021年10月19日~22日開催「CEATEC 2021 ONLINE」にて公開したスペシャルプレゼンテーション「未来の語り場 in CEATEC」をもとにまとめたものです。)

参加者左から

  • 富士通 理事 ソーシャルデザイン事業本部長 有山俊朗さん
  • 神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部教授・同教育イノベーション研究センター長・同学長補佐 石井雅章さん
  • 神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部 渡辺双葉さん
  • 神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部 長門 航さん
  • 神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部 田邉蒼来さん

私たちが感じている未来への期待や不安

有山さん: 早速ですが、みなさん、自己紹介と興味を抱いている事柄をお願いします。

渡辺さん: 渡辺双葉と申します。私は、昔から男女で制服がはっきり分かれていることに違和感を持っていて、高校時代はスカートではなくスラックスの制服を着用して登校していました。誰もが着たい服を着て自己表現できる世の中のほうが良いのではないか?と考え、その流れでジェンダーやジェンダーレスファッションに興味を持つようになりました。また、ジェンダーレスファッションの他に、サステナブルファッションにも関心を持っています。ただ、サステナブルな品物は高価であるため、若い人はなかなか手が出しづらいという課題があります。サステナブルな活動に取り組みたいと思った時に、制限されることがないようなシステムがあれば、より良い社会の実現に繋がると考えています。

長門さん: 1年生の長門航です。私は気象災害とAIを掛け合わせる研究をしていきたいと考えています。2019年に私自身が住んでいる千葉県を台風や豪雨などの自然災害が襲いました。自らが被害を受けて初めて「この被害は予想できなかったのか」と考えるに至り、そこからAIを使い不測の事態に備える研究に興味を持ちました。研究は災害を予測するだけでなく、災害が発生した際のリカバリーにも応用できるのではと思っています。

有山さん: 防災問題は地球環境問題とリンケージ(連鎖)しており、テクノロジーを投入して解決すべき分野だと感じています。気象庁でもスーパーコンピュータを使った予測を行っていますね。富士通もシステム部分で一部支援させていただいていますが、シミュレーションによる予測と、経験による予測の両方が必要とされています。

田邉さん: 田邉蒼来と申します。私は国際平和と難民の問題に興味を持っています。高校1年生の時、難民の半数は私と同世代であることを知り、衝撃を受けました。毎日寝る場所があり、お風呂にも入れてご飯も食べられるという、私たちにとっては当たり前のことができない人が多く存在しているのです。“当たり前の平和”ほど怖いことはないですよね。平和の価値観が人それぞれ違うということを念頭に置き、国際平和の実現に向けて自分のできることを模索している最中です。

有山さん: 私たちは今、世界中で起こっていることを知ることができますが、現実を知ったうえでのアクションが大事ですね。富士通では「私たちは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていきます」というパーパスを掲げました。ただ会社のコストをかけてSDGsを行うのではなく、収益を生むことによる持続可能な事業として社会課題の解決に取り組んでいるのです。今は時代の大きな変曲点にあります。変化を待つのではなく「新しい世界をどのように形作るのか」を自主的に考えるためにも、今日のような対話は重要だと思っています。今日はよろしくお願いします。

人の繋がりや居場所の変化について

有山さん: オンラインとオフラインのハイブリッドが求められるニューノーマルな社会において、人と人との繋がりや居場所に関して思うことはありますか?

渡辺さん: オンラインとオフラインが組み合わさったことで、人との繋がりは何倍にも広がりました。私自身、感染症拡大防止のための自粛期間中に様々なオンラインイベントに参加したり、自ら開催することにより世界中の人との人脈が広がりました。学校や家だけではなく世界に居場所ができたような感覚です。

田邉さん: オンライン化により、世界中の方と対話し、他国の文化や価値観を身近に感じることができるようになりました。対話することは平和実現への一歩だと思いますが、一方で自分と似た考えの人とばかりと繋がっていては固定観念が生まれてしまうと懸念しています。オンラインとオフライン、双方とうまく付き合うことが必要なのではないでしょうか?

有山さん: テクノロジーに携わっている身としては、オンラインの技術はまだまだ不足していると思っています。オンラインで表現できるのは言語情報と、視覚情報では顔の表情ぐらいですが、オフラインでは言語化できない気配のような情報も実際に私たちは感じとっていますよね。オンライン技術はまだ過渡期であり、より発達する余地はまだたくさんあります。

“ゆたか”な生き方とは?

有山さん: 今回のテーマは「Well-being」ですが、ゆたかな生き方について思うことや、ゆたかさを感じられる場面などを共有していただけますか?

渡辺さん: 自分の個性や自分らしさを最大限に生かし、周りに示しながら生きていくことがゆたかな生き方だと思います。今現在、時に一人ひとりの個性を制限する場面に出合うことがあります。しかし、個性を生かすことこそが、多様な生き方を促すためには重要です。私は自分らしさ全開で、ゆたかに生きていきたいと思っています。

有山さん: 絶賛、応援します! 多様に生きていくうえで課題はありますか?

渡辺さん: ありますね。私は男性・女性以外の性別があっていいと思っています。例えば駅のトイレに男子用・女子用・障がい者用があると、私は「自分は女性にカテゴライズされるんだな」と感じてしまいます。生き方をカテゴライズしないオープンなスペースが様々な場面で増えていくと良いなと思います。

長門さん: 私は、何気ないことで喜べることがゆたかさだと思っています。自分の心の中に余裕があるからこそ喜びという感情が芽生えてくる。日常の何気ない生活の中にこそ、ゆたかさが潜んでいると思います。

田邉さん: 海外に住んでいる友だちと電話で話す時、「日本のこういうところが好き」と言ってもらえると嬉しいですね。同時に相手が住む国のことも知りたいと思います。お互いの文化を知ることは世界にとっても良いことですし、小さな幸せやゆたかさを感じる瞬間です。

有山さん: ゆたかさとは人それぞれで、また幅広いものですね。ゆたかであるためには心身ともに健全であることが望ましいですが、身心の健全な状態を保つために、社会に対してこうあって欲しいという理想や、変わらないで欲しいことはありますか?

渡辺さん: 私は高校時代、大学受験に向けて意欲的に勉強していたのですが、入試のための勉強を続けていくうちにその意義を見出せずに悩み、入試直前に燃え尽き症候群になりました。勉強が手につかず、食事が喉を通らない時期もありました。もし、同じような経験をした人たちと会い、対話できる場があったら、心に余裕が生まれたのではないかと思っています。家族や学校の先生、メンタルケアの専門家だけではなく、自分のことを全く知らない誰かに、自分の想いを打ち明け、心の叫びをダイレクトに受け止めてくれるコミュニティやシステムが存在することで、救われる人は多いと思います。

田邉さん: 健康状態とは周囲の人間関係に影響を受け変化するものですよね。オンラインが普及し様々な方と交流できる世の中になりましたが、対面で交流する機会はアフターコロナでも大切にしたいと思います。

有山さん: 富士通は、サステナブルな社会の実現を目指す事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定しました。その中で、2030年に向けて「Healthy Living」をテーマに新しいビジネスを検討しています。例えば、自分の疾患や悩みを共有、提供することで、同じ悩みを持つ人が救われるのなら、信頼性がある仕組みの中で一人ひとりのデータを共有、交換するようなことも技術的には可能な時代になってきます。そういった技術を提供し、世の中をより良くしていきたいとお話を聞いて思いました。

より良く生きるために、世の中に必要なこととは?

有山さん: 最後の質問ですが、何か「欲しいこと」があった場合、その実現のために必要なことは何でしょうか?どういう世の中になれば良いと思いますか?

長門さん: 未だにAIについては賛否両論がある状態です。AI自体の必要性など、立場により定義から根本的に違っているために対立が起こっているのです。しかし、互いに否定しあうのではなく、切磋琢磨しながら研究を進めることができれば、より良い結果が得られるはずです。私は、中学・高校時代からAIに興味があり、AIに触れ、体験できる機会に恵まれました。非常に貴重な経験だったと感じており、今後も企業の方々には若者がAIと接することができる場を提供し続けて欲しいと思っています。

有山さん: 社会で受け入れられるAIとは何かを考え、最終的な商品を作ることは重要ですね。またAIとはどういうものなのかを、世の中に向けて説明していくことが大事なのだと改めて痛感しました。

渡辺さん: 私たち需要側の要求が供給側にダイレクトに伝わる関係性の構築はこれから必要になってくると思います。例えばファッションの大量生産、大量消費は問題になっていますが、ユーザーが量より質を見るようになれば、供給側も必然的に変化するはずです。そのためには私たちの意識チェンジも必要ですよね。若い世代だけでなく、日本の経済を回している一人ひとりを取り残さず、ともに取り組むべき問題です。

有山さん: 私自身も、今まさにロジスティックスやサプライチェーンをどう変えられるかを考えています。どんどん作り、消費するという消費文化は劇的に変わってきています。富士通は「Rice Exchange」というお米の生産者から食卓までの流れをトレースできる技術を持っています。つまり、今、渡辺さんが言ったような需要のバランスを調整するテクノロジーが社会に実装され始めているのです。例えば、東名高速道路を走行するトラックの6割が行きは物を積んでいますが帰りは積荷がないそうです。例えばドライバーが運搬可能なアイテム情報をトレースすることができ、トラック搬送を欲する人と繋げることができれば、物流業界は一変します。こうした世界は、作ることができる。私たちは、テクノロジーを使って社会の信頼を変えたいんです。それを推し進めるためにも、若い方には自分たちの問題意識をもっと発信して欲しいですね。

石井さん: いまは、消費者側もいろいろ発信ができる世の中です。新しい関係作りとテクノロジーは親和性が高いですよね。これからの未来に期待しています。

有山さん: 企業にはテクノロジーがどのように使われるのかを、発信していく義務がありますね。富士通ではAIが学ぶデータについて“見える化”した「説明可能なAI技術」という技術体験や、AIの倫理についても発表しています。

ディスカッションを通じて気づいたこと

有山さん: 最後にこのディスカッションを通じて気づいたこと、感想などを教えてください。

渡辺さん: 自分が思っていることを周りに伝えるだけでも非常に意味があると感じました。また、その話を真面目に聞いてくれる大人がいることに感謝したいです。これから年齢に関係なく、失敗しても今できることを全部やろうと決意しました。

長門さん: いろんな人の考えを聞くことも大事ですね。それにより新たな自分の考えや意欲が湧いてきました。非常に楽しく有意義な時間でした。

田邉さん: 伝えるだけでなく、行動に起こすことができればと思います。小さなことでも今の自分にできることを少しずつ実行していきたいですね。

石井さん: 複雑化する世界のなかで「答え」を持っている大人はいません。若者も大人も同じ立場として学び続けることが大切です。お互い切磋琢磨し、意見を交わしながら、持続可能な世界の実現に向けて、ともに手を取り努力していくことが大事だと痛感しました。

有山さん: 今回の対話を通し、社会課題の解決をテーマに事業をするという発想は間違っていないと確信できました。また、テクノロジーが世の中においてどう使えるのか、どう役に立つのかをきちんと伝えていく使命があると感じています。個人、企業、公益的な組織……、社会における関係性はどんどん変化しています。これからの未来に向けて一人ひとりが「ありたい」と描く理想を、社会の「なりたい」にリデザインしていきたいと思います。今日はありがとうございました。みなさまの今後の発信と行動に期待をしています。

Movie

私たちのWell-beingを考える 未来の語り場 神田外語大学×富士通 フルバージョン(36:40)
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