社会課題を共創で解決する知財開放の取り組み(後編)~持続可能な社会の実現へ~

富士通では“FUJITSU Technology Licensing Program for SDGs”のブランドを掲げ、グループ全体で保有する知的財産(知財)の一部を開放。第三者にライセンスする新しい共創のカタチである「開放特許」活動を推進することで、社会課題の解決に繋がる新しい製品や価値が生み出されています。後編では、災害復興支援に繋がるロボット・ベンチャーとの協業や大学と連携した知財活用プロジェクト、そして、富士通が知財開放活動通して実現したい未来について紹介します。

目次
  1. 富士通のまいた種を製品化して災害復興に繋げる
  2. 企業・大学・ベンチャーが開放特許を通じて共創
  3. 知財開放活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献

富士通のまいた種を製品化して災害復興に繋げる

新型コロナウイルス対策支援だけでなく災害復興支援や地方創生を目指し、富士通の知財開放を活用した事例もあります。そのひとつが、福島県で創業したロボット・ベンチャーHaloworld株式会社が開発した3Dスキャナ「BeTHERE」です。

左:Haloworld株式会社 代表取締役 司馬天風さん 右:同 エンジニア 星野鉄士さん

――創業されたのは、東日本大震災がきっかけだったと聞きました。

司馬さん: もともと東日本大震災の災害復旧に資材商社として関わっていて、現場で最もニーズが高かったのは自律走行ロボットでしたが、日本のメーカーでは対応できていませんでした。そこで「自分たちがもっと役に立つことができるのではないか」という想いでHaloworldを創業し、自律走行ロボットの開発・製造・販売を行っています。

――そこからなぜ富士通の開放特許を活用しようと思ったのでしょうか?

司馬さん: たまたまセンサーメーカーさんの紹介で富士通さんの知的財産戦略室の方と会い、紹介されたのが特許の3Dデジタイジング技術です。プロトタイプのデモ機も見せていただきましたが、製品化をする見込みがないと聞き、私たちが連携することで、富士通さんの世に出ないながらも素晴らしい技術を使って社会の役に立てると思い、製品化したのが「BeTHERE」です。

3Dスキャナー「BeTHERE」

――「BeTHERE」の特長とその特許技術について教えてください。

星野さん: 2Dのライダー(LiDAR: Llight Detection And Ranging)というセンサーから光を照射し、二次元の距離を計測することができます。それを360度回転させることで3Dの点群データを取り、上に付いているカメラが全方位の画像を撮ることでビジュアライズ3Dモデル化できます。その際、離れた場所で複数撮影した点群データを短時間で簡単に位置を合わせて統合する技術が富士通さんの3Dデジタイジング技術です。

――短時間でリアルな3Dモデルが作成されますね。

星野さん: 既存の3Dスキャナでは時間がかかりますが、BeTHEREは、約10分以内にすべての距離が計測できる3Dモデルを作成します。これは、例えばリフォーム建築の内装や外装の3Dモデル化や土木建築現場で土砂掘削量の計測、VR空間での作業員のトレーニングや自律走行ロボットの走行シミュレーションなど、計測や教育といった領域で幅広く活用いただくことができます。

――災害復興にも貢献するものでしょうか?

司馬さん: はい。私たちは東日本大震災の被害を目の当たりにしていたので、例えば近年頻発している豪雨による土砂災害で被害状況を正確に把握する時など、災害時にも活用できるものを作りたいという考えもありました。

――素晴らしいですね。このような知財開放活動についてどう思われますか?

司馬さん: 今回は、富士通さんが種をまいて創っていただいた特許技術というバトンを我々が引き継ぎ、開発した製品を世に出しました。それがしっかりビジネスとして成立し、社会課題の解決にも繋がっていることが重要だと思います。開発後も富士通さんには多くのユーザーさんを紹介していただき、ユーザーさんとのオンラインミーティングにも毎回参加していただいているので、非常にありがたいです。まだ埋もれている知財は沢山あると思うので、今後も注目していきたいですね。

企業・大学・ベンチャーが開放特許を通じて共創

未来に向けて大学と連携した知財活用プロジェクトも産声を上げました。企業の開放特許を活用したビジネスアイデアを競う「知財活用スチューデントアワード」(主催:西武信用金庫)で優勝し、次世代の赤ちゃん見守りシステム「Tapirus」(タピルス)の実現に向けてベンチャーを立ち上げた昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科・前田ゼミの皆さんに話を聞きました。

左から、昭和女子大学 杉田夏葵さん(株式会社Tapirus代表取締役、同大卒)、前田純弘非常勤講師、菅安佳里さん(株式会社Tapirus 代表取締役、同大4年)

――「知財活用スチューデントアワード」に参加された経緯について教えてください。

前田さん: 学生たちにとって、企業の開放特許をもとに製品アイデアを考えるというのは非常に良い経験になると思い、ゼミの課題として参加を提案しました。

――実際に参加されていかがでしたか?

前田さん: ビジネスのアイデアというのは、ただ「楽しい」や「人気が出る」といった着眼点だけではなく「自分たちの身の周りにある社会課題を解決するためにどうするか」という視点から練ることも必要です。そこで学生たちは、自分たちが将来経験する可能性の高い子育ての課題を探し、ターゲット層へのフィールドワークやコストの計算など、実際にビジネスを創出する際の手順を踏んでアイデアを生み出したので、非常に勉強になったと思います。

――実践的な学びですね。では、Tapirusの特長について教えてください。

杉田さん: 赤ちゃんに異変があった時にスマートフォンのアプリを通じて警告するシステムです。人体に微弱なマイクロ波を照射し、その反射波の変化量から呼吸・心拍・体動を計測する富士通さんの特許技術、非接触バイタルセンサー技術を活用しました。接触型で赤ちゃんが嫌がったり、感知データが限定的だった既存のセンサーの課題を解決するものです。

――このアイデアはどういった着想で生まれたのですか?

杉田さん: 非接触バイタルセンサー技術で製品アイデアを練っている時、SIDS(乳幼児突然死症候群)の社会問題を知りました。実際に保育園で子育て中の両親にアンケートを取ると、不安を抱えている方が多く、その課題は未来の自分のことでもあったので、少しでも安心して子育てしていただけるようなものになったらと思い、立案しました。企画を立て、フィールドワークを通じてアイデアが固まり、第三者にプレゼンをする過程がすごく貴重な経験になりました。

――すべての子育て世代の悩みを緩和するアイデアですね。製品化の展望はいかがでしょうか?

杉田さん: 技術的なハードルが非常に高いのですが、昨年会社を設立し、製品化するために方法を模索中です。

菅さん: 私たちの会社の理念は「育児を頑張りすぎなくてもいい社会の構築を支援する」ことです。それは、この製品をカタチにすることで寄与できると考えています。

――ぜひ実現してください。最後に、こういった学生さんのビジネスコンテストについてどう思いますか?

前田さん: 企業の特許技術を学生が勉強し、それを実際にビジネスのカタチにするというのは、他にはないコンテスト。なおかつ、そこからベンチャーが立ち上がれば、金融機関や企業の協力を仰ぎながら商品として世の中に出すのも夢ではありません。社会課題の解決に向けて、皆様のお力をお借りしながら、未来を担う学生のアイデアがかたちになっていくのは理想的ではないでしょうか。企業と大学、ベンチャーなどが特許を通じて共創を目指すこのような取り組みは、もっと普及してほしいですね。

知財開放活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献

富士通の知財開放活動は、社会課題の解決を目指した新しい共創のカタチを生み出しています。その根幹にあるのは「私たちだけではできなかったことを共創パートナー様とともに実現したい」という想い。

田口さん: これからの世の中は、様々な社会問題や地域課題が出てくると思います。それらに対して、富士通単独では解決できないことが沢山あるので、知財開放の取り組みを通じて、さらに新たな共創パートナー様に出会いたい。そのために開放する知財を拡充して、より幅広い技術を皆様に紹介していきたいと考えています。富士通の生み出した知財を共創パートナー様を通じて広く社会に役立てていくことで、富士通のパーパスである“持続可能な社会の実現”また、新事業ブランド「Fujitsu Uvance」で掲げる“ビジネス変革と持続可能な社会の実現の両立”に貢献していけると信じています。

知的財産戦略室のメンバー 左から田口有悟さん、板東友理さん、原田敬志さん

編集部より

先日、富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」を策定し、今後、サステナブルな世界の実現に向け、社会課題の解決にフォーカスしたビジネスを強力に推進していくことを発表しました。「Fujitsu Uvance」は“あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させる”という2つの言葉を重ね合わせた名称で、「多様な価値を信頼でつなぎ、変化に適応するしなやかさをもたらすことで、誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくる」という当社の決意を込めています。名称決定にあたっては、グローバルで社員投票を実施しました。
当社は「Fujitsu Uvance」のもと、ビジネス変革と持続可能な社会の実現の両立を目指します。

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