進化を続ける3Dプリンター 最先端の世界

2018.8.1 ライター:池田 利夫

2012年~2013年頃、国内でも「3Dプリンター」が注目され、少々過熱気味にメディアでも取り上げられるようになりました。ちょうど、書籍『MAKERS』(クリス・アンダーソン)が日本語訳され、誰もがメーカーになれると話題になり、モノづくりの革命のひとつとして認識された時期です。

3Dプリンターの特徴は、CADソフトなどを使ってデジタルの世界で設計した作品をそのまま現実世界に出力できることです。従来は、製品を設計しても試作段階から金型を作る必要があり、コストも期間もかかっていましたが、3Dプリンターの登場により、設計した作品を数時間から数十時間のうちに手に触れられる作品として出力できるようになったのです。

モノづくり革命のひとつとして注目された時期を経て、最近では3Dプリンターは一過性のブームであったかのように言われることもあります。しかしその後も個人向けに様々な製品が登場しているほか、製造・医療の分野ではより高度なモノづくりに活かされる技術が開発されているのです。3Dプリンターの最新動向について、見てみましょう。

より身近になった3Dプリンター。その特徴と仕組みとは

3Dプリンターにはいくつかの種類があり、それぞれ素材や造形方法に違いがあります。個人向けに販売される3Dプリンターが採用しているのは、FDM方式(熱溶解積層法)です。熱で溶かしたフィラメント(糸状にした樹脂)を立体的に動くノズルから押し出し、層状に積み重ねながら造形する方式です。押し出されたフィラメントはすぐに冷えて固まります。

このFDM方式は、2009年に特許期限が切れたことから、技術や部品が公開(オープンソース化)されました。それにより、多くのベンチャー企業が開発に参入し、個人向けに10万円を切るような、安価な製品が作られるようになりました。

その後、個人向け3Dプリンターのブームは落ち着きますが、さらに価格が下がり2~5万円台の製品が登場するほか、複数色のフィラメントを扱えるモデルが登場するなど、現在ではより安価に多様な造形ができるようになっています。

ただし、FDM方式で製作できる作品は、フィラメントで造形する際の積層痕が目立つなど、製品レベルの精度が出せるわけではありません。

より精度の高い造形を行うには、紫外線を当てて樹脂を硬化させる光造形や、石膏粉末を樹脂で固める方式などを用います。いずれも3Dプリンターの価格は数百万から数千万円となるため、プロや業務向けの用途です。産業分野では、「ラピッドプロトタイピング」とも言われ、精度の高い工業製品の試作品を短期間で作る目的などで用いられました。現在では、こうした高精度な3Dプリンターを扱い、個人が作ったフィギュアなどの3D作品を出力するサービス業者も登場しています。

3Dプリンターの最先端

産業や医療などの専門分野でも、それぞれ産業の分野や出力する内容に対応する3Dプリンターが開発されています。
産業の分野では、試作品ではなく最終製品のダイレクト生産の出力を目指し、海外では自動車や住宅を3Dプリントする企業も登場しています。

例えば、Local Motors社(米国)は、大型の3Dプリンターを用いて、走行可能な自動車を製作しています。タイヤやエンジンを除く車体を中心に、構成部品の75%を3Dプリンター製にし、その比率をさらに上げようとしています。フランスのナントでは、建設現場で活躍するロボットアーム型の3Dプリンター「BatiPrint3D」が、絶縁性の高い特殊なコンクリート混合素材を用いて3Dプリントした公営住宅が公開されています。アメリカ、ロシア、アラブ首長国連邦のドバイなどでも3Dプリントで作られた住宅が発表されています。

車や家などの製造過程において3Dプリンターの活用が進む理由に、大幅なコストカットが可能になる点があります。製品を構成するパーツの数を削減することが可能となり、組み立て工程の削減や在庫管理の削減につながるためです。また、パーツが減ることで廃材の量を削減でき、製造がもたらす環境への負荷低減も期待できます。

さらに、金属など多様な素材が使えて、高度な造形が可能なハイエンド技術の特許(SLS法)が2014年に切れたことがきっかけで、さまざまな分野で3Dプリンターを活用するための研究が進んでいます。
富士通フロンテックでは、精度の問題から難しいとされていた、3Dプリンターでの金型製作を行い、ATMなど精密機器向け部品を生産する技術開発を進めています。

医療の分野でも、多様な素材を扱えるようになったことで、さまざまな研究が進んでいます。例えば、理研とリコーは共同開発で人工骨を3Dプリントにより製作する研究を進めています。リン酸カルシウムの一種を素材とし、人工骨は骨の内部の構造を再現します。生体へ移植すると、本来の骨組織と入れ替わります。そのほかにも、やわらかいゲル素材を3Dプリントして、内臓モデルを作成したり、血管を作ったりする研究なども進んでいます。

もともと3Dプリンターには、量産よりもオーダーメイドが得意という特徴がありました。医療の分野では、体のサイズや形状は一人一人違うため、この特徴がマッチしています。今後は、臓器の造形などにも用いられるなど、再生医療での活用も進んでいくことになります。

さらに進化を続ける3Dプリンター

3Dプリンターの活用の幅を広めるには、導入のコストや、使用できる素材の限定性、最大限に生かすための設計知識、造形にかかる時間、品質や強度など、まだ様々な課題があります。しかし、マサチューセッツ工科大学の研究チームが、従来に比べて10倍のスピードで出力できる3Dプリンターの開発を進めるなど、今後も活用の場は広まりつつあります。
課題をクリアにし、幅広い産業に対応することができれば、あらゆるモノやモノの代替パーツを、3Dプリンターを使って、その場で必要な数だけ必要なときに得ることできます。距離や輸送や在庫にとらわれないモノづくりとして、3Dプリンターの進化は新たなビジネスの形を実現できる可能性を秘めているのです。

本記事のライター
池田 利夫(いけだ としお)
IT系、教育系書籍を扱う出版社の代表。

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