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  4. 官民データ利活用の視点での職場情報のあり方―厚生労働省「職場情報総合サイト」の事例から―

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官民データ利活用の視点での職場情報のあり方

―厚生労働省「職場情報総合サイト」の事例から―

新規ビジネスとイノベーションの創出による経済の活性化、データに基づく行政経営の効率化、地域課題の解決に向けて、官民データ活用の機運が高まっています。働き方改革の実現に向けた職場情報の活用のあり方として、企業が公開する「職場情報」をワンストップで提供する厚生労働省「職場情報総合サイト」の事例をご紹介します。

掲載日:2019年1月30日

casestudies96

新規ビジネスとイノベーションの創出による経済の活性化、データに基づく行政経営の効率化、地域課題の解決に向けて、官民データ活用の機運が高まっています。国では、「デジタル・ガバメント推進方針」に基づき、行政のあり方そのものをデジタル前提で見直そうとしています。また、「官民データ活用推進法」により、「一億総活躍」、「働き方改革」、「地方創生」、「女性の活躍促進」、「国土強靭化」などの諸課題の解決に官民データの利活用を強化するとしています。

このような背景の下、本稿では、企業が公開する「職場情報」をワンストップで提供する厚生労働省「職場情報総合サイト」の事例をもとに、富士通総研の視点から、働き方改革の実現に向けた職場情報の活用のあり方を示します。

1.「職場情報総合サイト」の背景となる取り組み

「デジタル・ガバメント推進方針」・「官民データ活用推進法」、に加えて、過酷な職場環境が一因と推察される過労死や自殺等、社会的な背景を受けて、厚生労働省では、働き方改革を職場環境から促す政策に取り組んでいます。その一歩として、省庁や制度で縦割り、個別認定・公開されている情報を集約し、企業の職場環境を可視化する「職場情報総合サイト」の取り組みを進めています。

その背景として、以下2点が挙げられます。



(1)国の官民データ活用の推進

2016年「官民データ活用推進基本法」(以下、基本法という。)が成立し、官民データの活用に関する施策が推進されました。官民データとは、電子データであって、国、地方公共団体、独立行政法人、民間事業者が保有し、事務や事業の遂行にあたり管理・提供・利用されるすべてのデータを指します。「一億総活躍」、「働き方改革」、「地方創生」、「女性の活躍促進」、「国土強靭化」などの諸課題の解決に官民データの利活用を強化するとし、その中の「働き方改革」の取り組みとして、厚生労働省では、特に国民・事業者への影響が大きい職場情報に関するデータの集約化・活用を推進しています。



(2)働き方改革を受けた社会的動向

政府が長時間労働の是正などを提唱したことや、過酷な職場環境が一因と推察される過労死や自殺等を契機に、働き方改革は社会的な関心事になっています。2017年「働き方改革実行計画」では、女性活躍推進法に基づく情報公表制度の見直し(復職制度の有無、男性の育休取得状況の追加)等、法令による情報公開の義務化や、認定・表彰制度を活用した働き方改革の好事例の横展開が盛り込まれ、職場情報の可視化が進められてきました。今後は、単なる情報公開でなく、従来、省庁や制度ごとに縦割りで個別に公開されてきた情報を集約し、保有主体の壁を超えて円滑に流通させることが求められています。

2.労働市場における課題

前項で述べたように国によるデータ活用が推進される一方で、労働市場におけるデータを起因とした課題として、求職者と企業とのミスマッチ解消が挙げられます。

求職者が、中立で精度の高い職場情報を得ることは、民間の就職情報サイト等では難しく、事前に企業の就業実態を把握できないことがミスマッチ発生の要因の1つと考えます。リクルートキャリアの調査によると、転職活動中に実際に知ることができた情報として、離職率が9.4%、有給等の取得率が13.0%となっており、就業実態が十分に取得できていない現状があります。(【図1】参照)

【図1】転職活動中に「知りたいと思っていた情報」と「知ることができた情報」
【図1】転職活動中に「知りたいと思っていた情報」と「知ることができた情報」
出所:株式会社リクルートキャリア「転職決定者アンケート集計結果」(2018年5月24日)

また、企業の職場情報について先輩や友人たちと話す機会がない場合や、地方在住により企業の職場情報の入手が困難な場合、職場情報を得る機会は十分ではありません。転職を検討する場合においても、転職経験がない場合など、今いる職場に問題があるかの客観的な判断が難しい場合があります。

こうした課題に対して、中立で精度の高い企業の職場情報を効果的に求職者に提供できる手段を整備するとともに、働き手と雇い手のより良いマッチングを実現し、労働市場の活性化や生産性の向上につなげることが必要だと考えます。

3.「職場情報総合サイト」による職場環境の見える化

職場情報活用による労働市場の活性化や生産性の向上に向けて、厚生労働省は、2018年9月28日に「職場情報総合サイト」を開設しました。職場情報総合サイトは、「若者雇用促進総合サイト」、「女性の活躍推進企業データベース」、「両立支援のひろば」の3サイトに分かれて掲載されている職場情報を収集・転載するとともに、国の23の各種認定・表彰制度の取得情報を掲載するものです。企業ごとの時間外労働時間や年次有給休暇取得率、新卒者等の採用・定着状況、平均継続勤務年数、育児・仕事の両立支援、能力開発などの職場情報をワンストップで提供することで、職場情報を横断的に比較・検索できます。各種認定・表彰制度等のデータの集約に際しては、用語の定義や算出方法、対象者の条件などを明確に整備し、データ活用を進める上での前提となる信頼性の確保に努めました。(【図2】参照)

【図2】「職場情報総合サイト」の全体イメージ
【図2】「職場情報総合サイト」の全体イメージ

また、職場情報を検索する際には、1つの企業の職場情報を検索するだけでなく、複数の企業間の情報を比較して検討することが必要不可欠です。職場情報総合サイトでは、比較したい職場情報(項目)を設定することで、単なる集約検索でなく、複数の企業間の情報を横断的に比較・検討できます。また、今後の活用を推進していくには、オープンデータやAPIを公開していくことが重要になります。(【図3】参照)

【図3】企業間比較ページの画面イメージ(抜粋)
【図3】企業間比較ページの画面イメージ(抜粋)

富士通総研では、提供者視点での単なるデータ提供サイトでなく、利用者視点でデータ活用が促進されるサイトの実現に向けて、求職者・ハローワークへのインタビュー調査や、プロトタイプを用いた利用者テスト等を通じて、求職者のニーズを把握し、サービス設計への反映を支援しました。

4.期待される効果

「デジタル・ガバメント推進方針」、「官民データ活用推進法」、社会要求に対する政策の一環として職場情報総合サイトを開設することにより、「求職者や学生等が企業について調べる→職場改善に積極的な企業ほど選ばれる→企業が自主的な職場改善に取り組むようになる/職場情報を掲載するようになる」という職場情報の活用による好循環が生まれます(【図4】参照)。その結果として、企業が雇用管理の改善に取り組むインセンティブが強化され、労働市場の活性化や生産性の向上が期待されます。

【図4】職場改善の好循環のイメージ
【図4】職場改善の好循環のイメージ
(資料:厚生労働省の資料をもとに富士通総研作成)

求職者とデータ登録企業には、以下の効果が期待されます。



■求職者
  • 職場情報を横断的に比較・検索できるようになり、ライフスタイルや希望条件に合った企業が選択できます。
  • 事前に中立で精度の高い企業の就業実態を把握することで、入社後のミスマッチの防止・解消等が期待されます。


■データ登録企業
  • 企業情報を開示することで企業のPRにつながります。
  • 雇用管理が良く、働き方改革に積極的に取り組んでいる企業が、国の各種認定・表彰制度等からの客観的なデータで評価され、より求職者から選ばれるようになることで優秀な人材獲得が期待されます。

5.社会的動向に対応した職場情報活用の可能性

「職場情報総合サイト」は、前項の期待効果以外にも、今後の社会的動向に関連する以下のユースケースでの活用が期待されます。



(1)副業を希望する求職者の活用

厚生労働省では、2018年「副業・兼業に関するガイドライン」を作成し、企業の対応として、原則、副業・兼業を認める方向としています。働き方が多様化する中で、今後、副業の採用の可否を職場情報として開示することで、求職者の選択肢を増やすことができます。



(2)移住・定住施策を推進する地方自治体等での活用

「職場情報総合サイト」では、本社所在地をもとに全国の都道府県の企業の職場情報を検索できます。移住・定住施策により地方創生を推進する地方自治体等においては、各地域の魅了的な企業を検索し、移住・定住を希望する対象者へ説明・PRするための情報収集手段として活用できます。



(3)投資家向けのESG(注1)データとしての活用

 近年、SDGsの観点をESG投資の評価指標に取り入れる投資家の増加に伴い、企業の環境・社会・ガバナンス(企業統治)といった非財務情報の関心が高まっています。そこで、投資家に対してESGデータを提供する投資情報プロバイダーや投資アドバイザリーサービス提供者の情報収集手段として「職場情報総合サイト」の活用が期待されます。ESG投資における職場情報の活用により、職場環境の整備に積極的に取り組む企業が市場から評価を受けることで、職場情報の開示、さらには職場改善が加速することが期待されます。

 職場情報総合サイトの公開情報は、各企業が厚生労働省に提出したデータをそのまま掲載しているので企業が公式に発信した情報として活用可能です。また、ESG情報プロバイダー等が、労働環境や雇用に関する情報を入手する際に、職場情報総合サイトを活用することで、各企業のCSRレポート等の情報に加えて、正確な情報を一括で確認することが可能になります。(【図5】参照)

【図5】職場情報のESG投資での活用の流れ
【図5】職場情報のESG投資での活用の流れ

6.おわりに

国や地方自治体等が保有する公共データは、これまで国民・事業者の利便性向上に重点を置き、いかに分かりやすく、使いやすい形で公開するかが求められてきました。本稿で取り上げた職場情報は、求職者向けのデータとしての活用だけでなく、地方自治体の移住・定住促進やESG投資など様々なケースでの活用が期待されます。

今後、職場情報の利活用の促進には、情報掲載企業へのインセンティブの提供や、職場情報の掲載や更新の負荷軽減などの対応が必要です。そのうえで掲載企業が、人材確保等のメリットを実感できる事例(ユースケース)が広く周知されることで、情報掲載企業が増え、「職場情報総合サイト」の価値が高まり、真に利用され続けるインフラになると考えます。

将来的には、職場情報総合サイトを起点に、個人の働き方に関する就業情報(労働時間や賃金等)などのパーソナルデータと組み合わせることで、民間ベースで働き方に関するデータ活用がより進んでいくのではないかと考えます。

注釈

  • (注1):
    ESG:Environmental,Social,Governanceと呼ばれる取り組みのこと。ESGは、環境や社会に配慮した取り組み、および企業の社会的責任(CSR)を果たす取り組みのことで、これらの取り組みはそれが直接利益につながるわけではないが、優れた経営を推進している「よい会社」と見なす指標になり、持続的に成長できる企業を見分ける指標となり得る。

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  • 本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページ の閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
中村雄一

本記事の執筆者

コンサルティング本部 行政情報化グループ
コンサルタント

中村 雄一(なかむら ゆういち)

 

2015年10月 株式会社富士通総研入社。
これまで公共分野における情報化、業務改革等に関する調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主に官民連携によるデータ活用の推進・導入支援等に関わるコンサルティング業務に従事。

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