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コンサルティング事例「イオンフィナンシャルグループと富士通による情報銀行の実践」

イオンフィナンシャルグループと富士通による情報銀行の実践

データは社会で活用されてこそ新しい価値を生み、経済の発展につながる。生活者がパーソナルデータのコントロール権を保有しつつ企業をつなぐ「情報銀行」には、その可能性がある。イオンフィナンシャルグループ様と富士通の実証実験についてご紹介する。
掲載日:2019年1月11日

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1.背景

昨今、IoT・AIの普及によってデータ収集・活用が活発化し、データの蓄積・管理・流通を支えるプラットフォームの必要性が話題に上っている。また、データの爆発的な増加に伴い、パーソナルデータの活用が注目されるようになった。

政府は2017年6月に閣議決定した「未来投資戦略2017」の中で「情報銀行」をデータ利活用基盤の1つとして位置づけ、データ流通環境整備検討会をはじめ、内閣官房・経済産業省・総務省で推進している。

ここで言う情報銀行とは、IT総合戦略本部(注1)に示されているもので、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS(Personal Data Store)等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示または予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断のうえ、データを第三者(他の事業者)に提供する事業のことを指す。なお、PDSとは他社保有データの集約を含め、個人が自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するものとする。

2.富士通の狙い

世界経済フォーラムで、「パーソナルデータは、インターネットにおける新しい石油であり、デジタル世界における新たな通貨である」と言われるように(注2)、データが石油であれば、世界石油メジャーに当たるのはデータメジャーとも言われるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)だろう。生活者のデータはGAFAに収集され、主に広告ビジネスに活用されている。

筆者は、個人のデータのコントロール権は個人が持つべきであると考えている。生活者のデータがGAFAに収集されることは、生活者個人としては一見便利だが、長期的に見れば歓迎される話ではない。社会全体にとってはどうだろうか? データを囲い込んだ企業だけがデータ活用により新しい価値を得られるのだ。生活者個人の立場から捉えると、自らの意思が反映されるのであれば、自らのデータをさらに適切に流通させ、もっと便利な世界を求めたくなる。

競争政策の観点においても、日本のパーソナルデータが米国をはじめ海外の企業に囲い込まれることによって、日本企業の発展が制限されてしまうのではないか? その点に対して筆者は課題認識を持っている。データは社会の中で活用されてこそ、新しい価値を生み出し、経済の発展につながっていくのであり、個人の権利としてのパーソナルデータのコントロール権を生活者が保有しつつ、GAFAも含め、あらゆる企業をつなぐ「情報銀行」には、その可能性がある。

そのような危機感と期待感を持ちつつ、その趣旨に賛同いただいたイオンフィナンシャルグループ様と富士通は「情報銀行」の実証実験に踏み切った。「情報銀行」の概念・機能・名称の整理について順次検討が進められていくと想定されるが、その動きを見極める重要性を理解しつつも、富士通は待つのではなく、いち早く「情報銀行」を実践し、そこから教訓を得て、いち早く「人を幸せにする」世界を実現していきたいと思った。本稿で紹介する事例は、イオンフィナンシャルグループ様との実践ではあるが、そこで得たノウハウ・教訓等を幅広く世の中に展開していく所存である。

3.実証実験の目的

本実証実験は、個人の権利としてパーソナルデータのコントロール権を生活者が保有しつつ、あらゆる企業をデータでつなぐ情報銀行(情報信託)という社会システムに着目し、先行研究という位置づけで実証実験を行った。本稿では、情報銀行が個人に向けて行うサービスを「一次サービス」と言い、一次サービスで収集したデータを活用しビッグデータ活用、データ販売を行うことを「二次サービス」と言う。本実証実験において、一次サービスについては「預託」の観点でパーソナルデータを預けることに対する抵抗感・課題について把握し、二次サービスについては「開示」の観点で生活者の開示先としての関心事項の抽出を目指した。いずれも実際に情報銀行を使ってもらうことでしか分からない利用者の意向を把握することを主目的とした。

サービスの位置づけ サービス内容 検証の観点
一次サービス ■実証参加者に対してアンケートを実施し、その回答者に対して「FUJITSUコイン」を発行
※アンケートで回答してもらったパーソナルデータを二次サービスで活用(一部匿名化)
預託
二次サービス ■One to Oneマーケティング…①
■ライフコンサルティング…②
開示

実証実験は2017年8月から10月の約2か月間、富士通社員約500名を対象として実施された。富士通社員は自分のパーソナルデータ(趣味/嗜好/行動パターン等)を富士通「情報銀行」に任意に預託した。本実証実験では、趣味、思考、行動パターン等の情報を、富士通社員自ら毎営業日、アンケート形式に回答するという形で入力した(任意に預託するという位置づけ)。入力した情報量や内容に連動して本実証実験だけで活用できる「FUJITSUコイン」(注3)をブロックチェーンの仕組みで発行した。情報銀行の利用を活性化することが狙いだ。

アンケートという形式で入力されたパーソナルデータは、富士通クラウド(FUJITSU Cloud Service K5 Personium Service)で管理され、富士通社員自ら開示コントロールを行える仕組みとした。開示先のユースケースは2点を設定した。1つ目は、イオンフィナンシャルサービス様のOne to Oneマーケティング①への活用である。2つ目は、希望者の取得済みパーソナルデータをもとに富士通トータル保険サービス様でライフコンサルティングを実施し、そこで得たデータを加えて情報銀行に預託した後に、イオン銀行でのライフコンサルティング②に活用するものである。

図1
【図1】富士通情報銀行の仕組み

4.実証実験の検証結果

実証実験の結果を概観すると、筆者が認識する限り日本で初の実証実験を行ったところ、本運用を見据えた場合の、情報銀行に対するニーズや、実現するための課題が整理された。

それらのニーズや課題について、「預託」「開示」2つの観点で以降に整理する。

(1)「預託」について
 情報銀行アカウント発行者数500名、そのうち、情報銀行実験参加者数は401名だった。自身のパーソナルデータを入力する位置づけのアンケートの回答率を情報銀行への預託率と定義したところ、本実証実験では401人の参加者に対して240人が毎営業日に出題されるアンケート(全500問)の80%に回答、データを預託した。今回は、「FUJITSUコイン」というインセンティブを設定したことにより、比較的多くの参加者を集めることができ、ある一定程度の信頼できる結果を得ることができた。

具体的には、パーソナルデータを用いるサービス自体に魅力がなければ、生活者はサービスを利用しない。つまりは、データが情報銀行に集約されない。今回は、アンケートという一次サービスであったため実験参加者にとっては魅力あるサービスとは言い難い。その中で「FUJITSUコイン」というインセンティブを設定した。情報銀行が収集したデータを分析して第三者に提供するサービス(二次サービス)に注力する前に、いかにして魅力ある個人向けサービス(一次サービス)を提供できるかがポイントであり、今後各社が魅力的なサービスを提供してくるだろう。前述しているとおり、生活者が安心して預ける前提として、個人のデータのコントロール権は個人が持つ必要があることもアンケート結果から再確認できた。また、データを預ける先としては、すでに社会的に信頼を得られているところが望ましいこともアンケート結果から再確認できた。今回は、「富士通」というブランド力であったのかもしれない。参加者自らが所属している会社だったからかもしれない。いずれにせよ、預ける先には社会的な信頼が必要である。

(2)「開示」について
 実証実験参加者に対して開示に関するアンケート調査を、パーソナルデータの入力に位置づけたものとは異なる形で行った。預託するデータについて17カテゴリ(政治、経済、金融、スポーツ、ファッション、恋愛等)に分類し、それぞれのデータの開示先企業を5社 (銀行、小売り、飲食店、医療機関、外資ネット通販)設定してマトリックス形式で開示意向を尋ねた。生活者(アンケート回答者)は、「金融」情報を、「小売り」「飲食店」に開示することに対して高い意向があることが分かった。一方で、「恋愛」情報の開示意向は比較的低かった。つまりは、生活者が日々の生活を送ることで目まぐるしく発生する「金融」情報について、自らの衣食住に直結する場面において、実感を得やすいユースケースを設定していかなければならないことが確認された。今後、本格運用を見据えた場合、前述の①②のように自社、もしくは企業体のサービス拡張・強化という視点のほか、サービスを利用する生活者がそれぞれの「情報銀行」に何を期待しているのかを見極めていく必要もある。その両者のバランスが取れてこそ“人が幸せに感じる”のではないか。それは非常に複雑で高度で他のサービスと差別化されたものである必要はないかもしれない。シンプルでもよいから生活者が“便利”だと実感できることが重要である。

併せて、弁護士を交えて個人情報保有企業(提携企業)と、その情報を預かる情報銀行間の法務面の検討を行った。本実証においては、個人情報を提供し合う行為をパターン整理するにとどまったが、今後も、法制度の整備の検討に資する事例を積み重ねていくことが重要であることを改めて認識した。

5.今後に向けて

日本国内でいち早く情報銀行の実証実験を行った成果は大きい。個人の権利としてのパーソナルデータのコントロール権を生活者が保有しつつ、あらゆる企業をデータでつなぎ「人を幸せにする」ことが期待される情報銀行(情報信託)という社会システムが求められることが分かった。また、そこでの一次サービスの重要性も再確認され、実験を実施しなければ分からない貴重な結果を得られた。ニュースバリューが大きかったことからも分かるとおり、情報銀行になりたい企業、情報銀行とつながりたい企業も少なくないことも確認された。(実証実験終了直後の2018年2月時点で、新聞5件、雑誌3件、テレビ1件、Web約10件のメディア掲載。金融機関、キャリア・運輸、電力等からのお問い合わせ50件程度。)

本実証実験では職員自らが所属している会社に対してパーソナルデータを預ける形になったため、そこへの抵抗感は少なかった。今後、富士通職員以外の利用者にも使ってもらうためには、いかにして利用者に対して安心感を提供するかが課題になるだろう。

また、二次サービスの情報開示については、「金融」情報を「小売り」「飲食店」に開示するという本実証では取り扱わなかった内容に対して高い意向があることが分かり、いかにして生活者のニーズを捉えたサービスを準備していくかが課題である。

さらなるポイントは、第三者に提供するサービス以上に、個人向けサービス(一次サービス)のコンテンツが重要であるということである。多様化した生活者のニーズを捉えるためには、複数企業のデータの組み合わせが必要である。そのために、コンソーシアム型情報銀行の運営も見据える必要がある。富士通の生活者中心の情報銀行の考え方に賛同いただけるお客様にお声がけしながら、実際にお客様に対してサービス提供し、その利便性・価値を実感いただき事業化を目指していく。そのためにも、富士通が考える情報銀行・データ管理・流通の考え方を積極的に世の中に示していく必要がある。

情報銀行はデータ管理・流通の1つの形態である。データをより適切に・有効に活用するための土壌を整備することは非常に重要であり、それがうまくいった時に、IoT・AI等のデジタル化がさらに進み、経済発展を促進するだろう。富士通がその一翼を担うことは社会的責任であると考えている。

注釈

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  • 本事例中に記載の数値、社名・固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページ の閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
築山 万里沙

本記事の執筆者

富士通株式会社 金融・社会基盤営業グループ
第一金融ビジネス本部 ビジネス企画部

築山 万里沙(つきやま まりさ)

 

金融機関向けのシステム・ソリューションの提案活動を経て、現在は金融イノベーションビジネス統括部ビジネス企画部門において、ブロックチェーンやAI、データ活用など新しい技術を使ったサービス創成や先行研究に取り組む。

湯川喬介

本記事の執筆者

株式会社富士通総研 コンサルティング本部 クロスインダストリーグループ プリンシパルコンサルタント

湯川 喬介(ゆかわ きょうすけ)

 

2003年某コンサルティング会社入社。2006年7月 株式会社富士通総研入社。 これまで防災、ヘルスケアといった安全・安心分野をテーマに国内外における調査・コンサルティング業務に従事。近年は、主に医療・介護連携や地域包括ケアシステムに関わるコンサルティング業務に従事

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