国立大学法人 信州大学 様

実証実験レポート

エリアワンセグ放送を活用し安心・安全なキャンパスづくりを支援

緊急情報通報システム

国立大学法人信州大学(以下、信州大学)様では「安心・安全なキャンパスの実現」に向け、株式会社テレビ松本ケーブルビジョン(以下、テレビ松本)様とFNETSの支援のもと、「ホワイトスペース特区(注1)」の指定を受け、国内の大学では初となるエリアワンセグ(注2)を利用した「緊急情報通報システム」の実証実験を開始しました。

注1 ホワイトスペース特区とは、テレビ放送や無線通信などに割り当てられた電波の中で、地理的条件や技術的条件によって他の目的にも利用可能な周波数(=ホワイトスペース)を活用して、新たなサービスやシステムを実現させることを目的に2010年に総務省によって創設された。

注2 エリアワンセグとは、サービス区域を狭いエリア(受信可能な電波の到達範囲は半径約500m)に限定し、携帯端末(電話)向けの地上デジタル放送の「ワンセグ」技術を使って独自の映像やデータを配信するサービスのこと。観光地や地域コミュニティ、商店街などで独自情報を流し、災害対策や地域復興に役立てることが期待される。

背景

信州大学様では、安心・安全なキャンパスづくりのために、緊急時に学生に災害情報を伝える情報発信手段を模索されていました。きっかけとなったのは、2006年の新潟県中越地震です。このとき、ネットワークの脆弱性を痛感したと笹本副学長は振り返ります。電話やインターネット、携帯電話などあらゆる通信手段が途絶え、これまでのネットワークでは学生に情報を伝えることができなかったためです。しかし、キャンパス内の避難所の場所や危険建物の情報等を学生に正確に伝え,学生の皆さんの安全を確保することは大学の責務だと笹本副学長ら大学側は考えておられました。

時を同じくして,FNETSは実験フィールドを探されていたテレビ松本様と共同で、信州大学様にホワイトスペース特区を利用したエリアワンセグ放送の実証実験をご提案しました。笹本副学長はこの提案を見て,エリアワンセグ放送であれば災害発生時に学生に情報を確実に伝えることができるのではないかと感じたとおっしゃいます。「非常時に放送が可能であり、システム次第では誰でも簡単に情報を発信できます。提案を受けたときに、これは災害発生時の情報手段として活用可能だと感じました」。

その後、不破教授を中心に「学生・教職員に向けた緊急情報通信システム」として具体的な運用を想定したシステムの検討を重ねました。①日頃からシステム利用が定着すること、②緊急時には即時に割込み放送が流れること、③操作が容易なこと等、これらの検討を元に2011年1月に特区申請し、同年4月に選定。2012年4月より実証実験としてエリアワンセグ放送の運用を開始しました。

国立大学法人 信州大学
副学長(広報・情報担当)
附属図書館長 笹本 正治 様(右)
国立大学法人 信州大学
総合情報センター長(教授)
博士(工学) 不破 泰 様(左)

概要

システムの提供にあたり、大学側から求められたのは、大学職員により運用できるほど操作が簡単なパソコンベースのシステムでした。緊急時に確実に情報を伝達するには、普段から大学側がその運用に慣れておく必要があったためです。そこで、FNETSはベンダーと協力し、コンテンツ作成から番組編成、放送管理まで一貫して対応できる放送システムを提供。本システムはPCベースで操作ができ、使いやすさにも配慮したシステムです。また、運用面では、構内イントラ回線、インターネット回線、衛星回線など複数の伝送路に対応しており、災害時にはセンター外部からもリモートで操作できます。操作面でも、PCだけでなく、スマートフォンやタブレット端末による操作が可能です。さらに、FNETSはシステムだけでなく、アンテナ設置ポイントも提案しました。大学構内は建物が密集していたため、どこがどの程度放送を受信できるかを測るべく、3Dシミュレータを使用し電波伝搬状況を解析。受信可能エリア、受信端末の性能、キャンパス内の受信電界強度を測定した上で、アンテナを設置しました。

実証実験システム構成図

これらのインフラを基に、緊急時には上図のように放送が流れる仕組みになっています。現在、コンテンツの作成や番組編成、配信管理は、信州大学様の広報室と総合情報センターのスタッフの方々が行っています。当初は、テレビ松本様が放送している「信州大学チャンネル」を、現在では信州大学様がYouTubeなどで放映している「信大動画チャンネル」をベースとしながら、オリジナルコンテンツを放送。緊急時の放送が主な目的ですが、日ごろから情報発信を行うことで、学生と職員の方々にこのエリアワンセグ放送の認知度を高め、緊急時に活用してもらうことが重要だからです。FNETSでは、放送不感エリアの特定とアンテナ増設計画の提案、新放送法に対応した設備への改修提案などを通じて、運用をサポートしています。

災害時の情報発信に特化したエリアワンセグは過去に例が無く、国内の大学では初となる試みです。周囲からの関心も高く、3月29日に行われた電波発射式はTVや新聞でも報道されました。実験から開始まだ数か月ほどということもあり、現在は信州大学様の広報室が中心となって学生や教職員の方々に放送の存在自体の認知を図っている状況です。

今後の展開

現在は日本語コンテンツをワンセグで配信していますが、今後は留学生向けの外国語対応を視野に入れた「マルチセグメント放送」の実用化を検証していきます。また、FNETSには国内初となるこの緊急情報システムの実証実験をモデルケースとし、ここで得たノウハウを水平展開することも期待されています。白鳥様は「この実験を通じ、より広域における災害時の情報発信手段を生み出し、松本市全体にも貢献していきたい」とおっしゃいます。昨年発生した東日本大震災の影響で、安全・安心に対する意識が高まる今、こうした人々の命を守る仕組みが必要だからです。

「今こそ、日本人の安心・安全を確保するモデルケースを生み出し、国全体で共有していくべきです。今回の実験は、言わば私たちの安心・安全を実現する夢の一環です。学生のため、ひいては日本のために、テレビ松本とFNETSの皆さんと共に、多くの方にとって役立てる実験にしていきたいと思います。」と笹本副学長と不破教授も語っておられます。

FNETSでは「大学」に限らず、「被災地」や「都市部」、また、「エリアワンセグ」だけでなく、「フルセグ」での実験を実施するなど、さまざまなシーンでエリア放送を実現してきたノウハウを活かし、エリア放送におけるトータルソリューションを提供することで今後もこの本実験をサポートしていきます。

株式会社テレビ松本
ケーブルビジョン
取締役
白鳥 忠夫 様

国立大学法人 信州大学 様

設立1949年5月31日
所在地長野県松本市旭3-1-1(松本キャンパス)
職員数2,381人(2011年5月現在)
学生数学部学生 9,406人 大学院 2,023人
外国人留学生331人
ホームページhttps://www.shinshu-u.ac.jp/

信州大学様は2009年に創立60周年を迎えた国立大学です。信州の豊富な自然に恵まれた環境下では、1万人を越える学生の方々に向けて独自性のある教育を行っています。キャンパスは松本市のほか、長野市、上田市、南箕輪村などにもあるため、インターネット普及以前からネットワーク講義を行うなど、キャンパスを越えた学生への情報発信に力を入れてこられました。現在も、笹本副学長と不破教授を中心として、情報通信技術の活用に関する研究に力を入れ、ネットワークを活用した先進的な取り組みを行っています。

株式会社テレビ松本ケーブルビジョン 様

設立1974年3月2日
所在地長野県松本市里山辺3044-1
資本金2億500万円
社員数57名(2012年4月)
事業内容
  • 有線テレビジョン放送業務
  • 有線ラジオ放送業務
  • 有線放送施設の構築、保守、運用
  • 通信事業業務/IP電話サービス
  • 放送番組の制作、販売
  • チャンネルのリース
  • 広告取扱い業
ホームページhttp://www.tvm.co.jp/

テレビ松本様は、松本市・塩尻市・山形村・朝日村を、ケーブルで結んだネットワークを駆使し、地域に密着したサービスをご提供しているケーブルテレビ局です。常に新しい情報の提供で地域のテレコミュニケーションの構築を目指し、2006年10月に日本初となる大学専門チャンネル『信州大学テレビ』が放送を開始するなど、数々の先進的な取り組みを行ってこられました。現在は、ケーブルテレビ網を利用した「緊急地震速報サービス」を2008年9月から開始し、地域の暮らしを守るサービスも提供されています。

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

[2012年10月9日掲載]

お電話でのお問い合わせ

Webでのお問い合わせ

ページの先頭へ