2023年8月更新

CO2排出量削減の背景と日本のCO2排出量、そして企業が行うべき排出量計算方法とは

CO2の排出は抑制しなければならないという意識はすでに共通認識として成立しています。
しかし実際のところその背景や実情、そして企業がどのようにして実際のデータを取得しているのかについては正しく把握できていない人も多いのが現実です。

今回はこうした実態について解説を行い、企業としてどのように管理していくべきかをお伝えします。

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1. CO2排出量を削減しなければならない背景

この数十年、地球温暖化に関する問題が常に挙げられていたものの傾向としては依然平均気温は上昇傾向にあります。

出典:「日本の年平均気温」(気象庁)新しいウィンドウで表示

よく知られているように、CO2(二酸化炭素)は「温室効果ガス」の一種です。

温室効果ガスは二酸化炭素以外にメタン、一酸化二窒素、代替フロンなどがありますが、二酸化炭素はその中でも大きなシェアを占めており、環境省の2020年のデータでは90.8%となっています。
そのためCO2の削減を行うことが温室効果抑制へのインパクトが最も大きく、様々な場面でCO2削減が叫ばれています。

また、2020年に当時総理大臣だった菅首相が所信表明演説において2050年をターゲットとしたカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)の実現を宣言しており、取り組みの柱としてCO2排出量削減が企業にも求められてもいます。

2. 日本のCO2排出量推移の現状

環境省の発表によると日本のCO2排出量は2020年の値で10億4,400万トン。
1990年以降最高値だった2013年比で20.8%の削減に成功しています。

出典:「2020 年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(環境省)新しいウィンドウで表示

2020年時点での部門別データで見るとエネルギー転換部門(発電所・製油所等)が最も多く、次点で産業部門(工場等)、運輸部門(自動車等)が続いています。
グラフで見ると各部門減少傾向にはあるものの、依然として他部門と比較し大きな割合を占めていることがわかります。

出典:「2020 年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(環境省)新しいウィンドウで表示

運輸部門の中をさらに調べていくと国土交通省のデータでは運輸部門における貨物自動車は部門内で39.2%を占めており、企業のロジスティクスに係る部分でのCO2排出量の多さがわかります。

出典:「運輸部門における二酸化炭素排出量」(国土交通省)新しいウィンドウで表示

つまり現在各企業においては削減努力を続けているものの、今後より一層の削減努力が求められる流れが見えている形となります。

3. 企業が行うCO2排出量の測定対象範囲

カーボンニュートラルでの温室効果ガス(GHG)排出量測定対象はサプライチェーン全体で測定しなければなりません。
大きくは以下3つのスコープに分解されています。

Scope1は工場などで燃料を使用し直接的に排出する二酸化炭素、Scope2は事務所等で電気などの使用により間接的に排出する二酸化炭素、Scope3はサプライチェーンでのCO2排出量となり、上流(原材料の精製、輸送や配送、通勤など)下流(製品の使用/廃棄、卸業者やエンドユーザーへの輸送や配送など)両方でのCO2排出量を測定する必要があります。

Scope1と2は社内での排出量測定、Scope3は社外での排出量測定と考えればわかりやすくなります。

4. CO2排出量削減のための計算方法と課題

CO2排出量削減のために大事なのはまず現状を正しく把握することです。
原則としては「温室効果ガス排出量=活動量×排出係数(活動量当たりの排出量)」が計算式となります。

中でも比較的難しいのがScope3です。
基本的に社外のデータになるため自社のデータで完結させることができません。
そのためScope3には2つの算出方法が示されています。

  1. 排出量をサプライヤーごとに確認して積算し算定する方法
  2. 自社で購入した製品やサービスの物量や金額データに対してデータベースに登録されている排出原単位をかけて算出する方法

前者は手間がかかりますが正確な数値を算出でき、サプライヤーが排出量削減できた場合にはその分をScope3の排出量削減として計上できます。
一方で後者は逆に手間があまりかからないもののサプライヤーの削減努力が反映できず自社の努力のみで削減する必要が出てきます。

つまり企業としては全社+上流工程+下流工程全体のデータをすべて収集し管理する体制を構築する必要があることが見てとれます。
この体制構築は大きな工数がかかるため、実施の際は必要に応じて管理ソリューションの導入も検討するのが最善と考えられます。

5. まとめ:CO2排出量の削減にはソリューションを活用し正しい手順で効果的な管理を

CO2は温室効果ガスの中でも90%以上の割合を占めており、削減効果が高い物質です。

一方でカーボンニュートラルに向けて行うべき取り組みはサプライチェーン全体での数値管理と排出量削減に対する改善努力であり、中でもScope3は算出方法の違いやカテゴリごとの算出方法に指定があることでデータの収集・管理が煩雑になりがちな点が課題になります。

今後企業として取り組みを進める中で初期設計が非常に重要な部分となるため、管理の手間を考慮して管理ソリューション導入も検討に入れておくのが中長期的な観点で見た時の効率化につながる可能性があるかもしれません。

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著者プロフィール

富士通Japan株式会社

【事業内容】
富士通グループの社会における存在意義であるパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」を国内サービス市場において具現化し、One Fujitsuとして取り組み、富士通Japanは、日本のために何ができるかを考え「日本を強くする会社」として、お客様や社会の課題を解決することで、日本の持続的な成長を支援します。

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