Human Centric Innovation: Driving a Trusted Future
新型コロナウイルスのパンデミックは、未来にどのような影響を与えるのか

このレポートでは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックがもたらす影響について、信頼ある社会の構築に向けた富士通の未来ビジョンとの関係を含めて考察します。今後、いくつかの分野について、より詳細なレポートを発信する予定です。

富士通株式会社
グローバルマーケティング本部
チーフストラテジスト
高重吉邦

同 未来洞察担当ディレクター
デビッド・ジェントル

新型コロナウイルスのパンデミックは、ほんの2~3ヶ月の間にあらゆる地域を覆いつくし、真にグローバルなインパクトをもたらしました。この予期しなかった危機に対して、ビジネスと社会は重大な脆弱性を露呈し、人々の健康や、日々の生活、企業活動、経済は深刻なダメージを受けました。

現時点で危機はまだ継続していて、完全な終息への道のりは依然として不透明です。しかし、正常な状態に復帰する動きは始まっており、人々の意識も、今後の世界がどう変化するのか、それに対してビジネスはどう対処すればよいのかという点に焦点が移ってきています。何よりも今、信頼(トラスト)の再構築が必要とされています。人々が求めているものは、安心・安全な世界です。医療、教育、流通、運輸などの社会のライフラインを支える企業や組織は、そういった人々の期待に応えなければなりません。信頼の回復と持続可能な未来は、表裏一体の関係にあるのです。

これからの世界において、企業にはどのような課題と新たな機会が待っているのでしょうか。危機が終われば人々の生活は元通りになるのでしょうか。それとも長期的な影響があるのでしょうか。これに関し、危機後も大きな変化が継続すると考えられるいくつかの兆候があります。

  • 今回の危機は、デジタル化を加速させました。リアル世界でのリスクを避けるために、人々はデジタル世界でつながることを選びました。
  • 同時に、企業はビジネスの脆弱性に気づき、従来の効率性の重視から、変化への柔軟な対応力・強靭性の重視へと、転換を始めています。
  • そして何よりも、今回の危機を通じて、わたしたちはヒューマンセントリックであることの重要性を再認識しました。人々が健康で充実した生活が送れることが最も重要なのです。

これらの点が相互に関係し合い、今後のビジネスや社会を織りなす基盤となっていきます。

デジタル化の加速

強制的なロックダウンや、自宅待機、ソーシャルディスタンス維持の規則のもとで、オンラインでの在宅勤務やショッピングが急激に増加し、同様にオンラインでの教育や医療も拡大しました。物理的な接触なしに生活し、働くという社会実験がグローバル規模で行われたと言っても過言ではないと思います。

対面での顧客とのやりとりや現場での作業を必要とする業種は非常に大きなインパクトを受けました。一方で、多くの企業は在宅勤務に切り替えることで事業を継続しました。また、教育や医療の分野では、デジタル技術を使って生徒や患者と遠隔でコミュニケーションする新しい方法にチャレンジしました。こういった変化は危機後も継続すると考えられます。実際に、オフィススペースの縮小や廃止について検討する企業も多数存在します。

これが意味するのは、デジタルが今後の生活や仕事のあたりまえの型、つまりデフォルトになるということです。デジタル化とは、顧客にサービスを提供するチャネルやサービスの提供方法にオンラインのデジタル技術を適用するということだけを意味するものではありません。200年以上前に始まった産業革命の時代からずっと、企業は従業員が同じ場所に集まって働くという基本的な型にもとづいてビジネスを運営してきました。この制約条件が消失し、新しいマネジメント方法やビジネスプロセスへとビジネスを再創造する機会がめぐってきています。この新たな世界では、人々の創造性や、データに基づく知見、アジャイルで実験的なプロジェクトの進め方が重要となります。制約から解き放たれた企業は、想像力を働かせ、新しいビジネスの姿をリイマジン (Reimagine)~再構想~することが可能になったのです。

デジタルな経験がデフォルトになっていく反面、リアルな経験は本質的な所からその意義を再定義することが求められます。何よりも、「場所」が持つ意義について問い直さなければなりません。これまで、人々の行動は、それぞれの場所ごとにあらかじめ定められていました。オフィスや店舗、学校といった場所が、働き方、ショッピング、学習の基本的な型を決めていたわけです。これらがデジタルで置き換えうるとなった時、わたしたちは「なぜ人がその場所に行くのか」について、もう一度問い直さなければなりません。

デジタルチャネルでは提供できない、リアルな場所が果たすユニークな役割やジョブ(Job to be done)は何なのかを考える必要があります。デジタルでは不可能な、人と人の触れ合いを提供するために、リアルな場所がどのような役割を持つべきなのでしょうか。安心してリアルなやりとりを行えるようにするために、非接触のインターフェースをどう活用すればいいでしょうか。人が安心安全に働けるように工場や研究所をどのようにリデザイン(Redesign)~再設計~すればよいでしょうか。遠隔操作も、その手段のひとつかもしれません。そして、同様な危機がふたたび襲ってきたとしても、安心安全な医療、食料、交通を提供できるように、新しい都市をどうリデザインすればよいでしょうか。

デジタルが今後のデフォルトになっていくと共に、データの信頼性とプライバシー保護が重要な優先課題となります。新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むために、社会の共通利益と個人のプライバシーのどちらを重視するかについて議論が交わされました。実際に、政府が、個人データを集中的に管理する手法を採用したケースと、よりプライバシーに配慮した分散型の手法を採用したケースがあります。プライバシーを適切に守りつつ、デジタルの力を最大限に発揮させるにはどうすればよいのでしょうか。さらには、潜在的な脅威に対するデジタル空間の脆弱性が非常に大きな課題です。グローバル規模のデジタル・パンデミックに対してどのような対抗策を構築すべきか、検討が急務です。

効率性(エフィシェンシー)から変化対応力(レジリエンス)へ

これまで、企業は効率性を最大化するようにビジネスプロセスをデザインしてきました。しかし、今回の危機で明らかになったように、効率性は破壊的な脅威に対する守りにはなりません。このような不確実性にどう対処すればよいのでしょうか。変化対応力に富んだ、レジリエントなビジネスプロセス、ビジネスモデルの再構築が必要なのです。この過程において、企業は、効率性を確保しながら、変化対応力を抜本的に強化するという、困難な課題を克服しなければなりません。

今回の危機はグローバルサプライチェーンに大きなダメージを与え、いくつかの業種では供給が寸断されました。では、これに替わる他の選択肢は何でしょうか。最低コストの場所で製品や部品を製造する集中型のサプライチェーンではなく、需要中心の分散型のサプライチェーンを検討する必要があります。需要に近接した地域に工場を分散配置するにはどうすればよいでしょうか。これらの工場をつないでリアルタイムに生産を調整するにはどうすればよいでしょうか。さらに、デジタル技術を使ってこれらの工場とエンジニアリングセンターをつないで、一体化されたデジタル製造エコシステムをコントロールするにはどうすればよいでしょうか。

一方、リスクを軽減し、ビジネスが変化への対応力・強靭性(レジリエンス)を備えるように、AI技術がオンサイトで行っていたより多くの業務を自動化していくことが期待されます。自動化のメリットを最大限に引き出すためには、個々の業務だけでなく、ビジネスプロセス全体をリデザインすることが必要です。ここで鍵となるのは、人の役割です。人がデータにもとづく知見を活用しながら創造性を発揮し、人が重要な判断・意思決定に携わるという、ヒューマンセントリックなビジネスを構想することが重要です。

不確実な世界において、企業は新たなサプライチェーンやビジネスプロセスをリイマジン~再構想~することが必要なのです。

ヒューマンセントリックな、信頼ある社会

新型コロナウイルスがもたらした危機は、すべての企業にとって人々の健康や安心安全が何よりも大事であることを再認識させました。企業は、従業員、顧客、パートナー、コミュニティに十分な配慮をしてビジネスを行う必要があります。

では、プライベートの生活とのバランスを維持しながら、どのようにオンラインでの仕事のパフォーマンスを最大化できるでしょうか。オンラインの環境整備をするだけでは不十分です。人々がリモートで仕事をするようになると、従来のように人の集団としての組織をマネジメントすることが意味を失っていきます。そうではなく、スキルを持った自律的な個人が社内外のネットワークを使ってコラボレーションする働き方がより重要となります。これは、人と人との共感とエンパワーされた個人の自律性を重視した、ヒューマンセントリックなマネジメントです。人の働き方をリイマジン~再構想~する必要があるのです。

経済・社会は、回復の途上にあります。より良い未来に向け、信頼の再構築が必要とされています。この回復のプロセスは、業種や国によって異なりますが、何人かの専門家によれば長期にわたることも予想されています。

危機以前から、世界のビジネスリーダーはステークホルダー資本主義へのコミットメントを表明していました。この傾向は、富士通の最新の*グローバル調査からも明らかです。今回のパンデミックにおいて、多くの企業が人々の健康を守るために事業活動の中断を余儀なくされました。わたしたちは、従業員、顧客、パートナー、株主、コミュニティを含む多様なステークホルダーの利益のバランスを取ることの重要性を学んだのです。

多様なステークホルダーの力を一つにするために、社会における企業の存在意義であるパーパスを共有することが、これまで以上に重要性を増しています。企業活動をパーパスで駆動し、すべてのステークホルダーの間に強固な信頼関係を築くことが不可欠なのです。新型コロナウイルス後の新しい世界においては、より信頼されるビジネスのみが長期にわたる持続的な成長を実現できるのです。

富士通の提案: リイマジン(Reimagine)

今回の危機から回復する過程において、企業はこれまでのやり方に単純に戻ることはできません。一方で、在宅勤務やオンライン販売を実行するために必要な技術を導入することだけでは、変革は不十分です。想像力を駆使してビジネス全体をリイマジン~再構想~する必要があります。人の働き方やビジネスプロセス、ビジネスモデル、そして多様なステークホルダーにどのような共通価値を提供するかについて想像力を働かせることが重要です。

そのために、企業はビジネスをより変化対応力のあるレジリエントなものに変革すると共に、新たな世界がもたらす機会と脅威に対してビジネスをリデザインし、イノベーションによってビジネスの再創造に取り組む必要があります。

非常に大きな不確実性に直面する中で、長期にわたって未来を見通すことは不可能です。むしろ、パーパスにもとづいて未来のビジョンを創り出し、それを実現するための戦略を立てることが有効です。そして変化初期の小さな兆候を見逃さず、タイムリーにビジネスの舵を切っていくことが重要です。富士通のパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです。信頼できる未来の構築に向けて、みなさまと共創することができれば幸いです。

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