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Fujitsu

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

デジタルイノベーションを支えるソフトウェア技術


年頭ご挨拶 (482 KB)

雑誌FUJITSU 2018-1

2018-1月号 (Vol.69, No.1)

富士通は,2015年に新しいインテグレーションコンセプト「FUJITSU Knowledge Integration」を提唱し,翌年には共創のサービス体系を発表しました。2017年には,デジタルビジネスの変革に向け,お客様とともに歩んでいく専門組織としてデジタルフロントビジネスグループを設立しました。この新たな専門組織ではデジタルテクノロジーの専門知識を持つ人材(デジタルイノベーター)の育成と,お客様との共創で培ったノウハウをベースに,デジタルテクノロジーのインテグレーションを実践してまいります。
本特集号では,デジタルイノベーションの四つの潮流を中心に,デジタルテクノロジーと人との協調を実現する実践事例やソリューション,およびデジタルイノベーションを支えるソフトウェア技術をご紹介します。


巻頭言

デジタルイノベーションを支えるソフトウェア技術特集に寄せて (503 KB)
執行役員 今田 和雄, p.1

総括

デジタルイノベーションを支える最新技術動向と富士通の取り組み (781 KB)
倉知 陽一, p.2-9
クラウド,モバイル,ビッグデータ,ソーシャルに加えて,AI(人工知能),IoTといったデジタルテクノロジーは,かつてないほどビジネスに影響を及ぼしている。今や,あらゆる産業でデジタル化による破壊のリスクにさらされていると言っても過言ではない。富士通は,デジタル時代の新たな事業やサービスの創出に向け,「FUJITSU Knowledge Integration」を提唱し,お客様との共創による新たなビジネス創出を進めている。「産業・事業のデジタル化」「顧客関係のデジタル化」「組織・働き方のデジタル化」「社会・経済のデジタル化」といったデジタルイノベーションの潮流の中で,お客様との共創を通じて新たなデジタルソリューションの創出を加速する。デジタルソリューションの創出に当たっては,先進的なデジタルテクノロジーを活用することはもちろん,最適なデジタルテクノロジーを選択するための目利きとその活用方法が重要となる。
本稿では,新たなデジタルイノベーションを実現したソリューション創出の取り組み,デジタル時代のサービス実装,デジタルイノベーション支えるソフトウェア技術,およびソリューション創出の加速に向けた今後の取り組みを述べる。

業種・業務のノウハウ・技術を型化した「デジタルソリューション」

顧客を創造するデジタルマーケティング (688 KB)
今村 健, p.10-15
デジタル化された世の中においても,依然としてメール広告が読まれることなく捨てられたり,買ったばかりの商品の広告が表示されたりしている。本来,広告は顧客に気づきを提供し振り向かせることが目的である。テレビや雑誌,新聞といったマス媒体では細分化された現代の人々の嗜好性に細かく対応できないが,広告がデジタル化されてもマス媒体と同様の訴求が続いている。その根本的な原因は,訴求の原点に顧客理解がないためと考えられる。一方で,マーケティング施策を立案する際,自社の持つ顧客情報だけでは顧客を理解するための情報が不足し有効な施策を打てない場合が多い。そこで富士通では,様々なWebサイトのアクセス履歴などを持つ3rdPartyと連携することにより,マーケッターが大量のデータを活用して顧客理解を深め,それに基づいたマーケティング施策が実践可能なソリューションとしてFUJITSU Business Application Operational Data Management & Analytics information Xross(ODMA iX)を開発した。
本稿では,ODMA iXの基本コンセプトに基づき,顧客を理解し,既存顧客の理解を深耕するのみならず,効果的に新規顧客を取り込むマーケティング戦略の実践について述べる。
顧客接点の高度化を実現するAIチャットボット (865 KB)
倉知 陽一, 生川 慎二, 原 英樹, p.16-22
デジタル化の進展はあらゆる業界に拡大している。デジタルテクノロジーの活用により,企業はこれまで以上にマーケティングの効率化と,顧客とのエンゲージメントの強化を求められている。そこで重要となるのが,顧客のサービス利用体験による感情的価値の訴求であり,その体験に重要な役割を果たすのが企業の顧客接点であるコンタクトセンターである。しかしコンタクトセンターは,人材不足,多様化するチャネルへの対応,AI(人工知能)活用による効率化などの課題が山積しているのが現状である。これらの課題解決に向けて,富士通は顧客接点高度化ソリューションCustomer Engagement Solution CHORDSHIPの提供を開始した。CHORDSHIPの中核であるCHORDSHIP Digital Agentは,コンタクトセンターに最適なAI技術「対話・機械学習ハイブリッド型AI」を搭載する。多様化するチャネルへの対応,24時間365日対応の実現に加え,既存のFAQデータを活用するだけで,精度の高い自動回答を実現できることが最大の特徴である。
本稿では,富士通が提供する顧客接点高度化ソリューションの概要と,それを支えるAIチャットボットの技術について述べる。
成長し続ける製造・保守現場におけるデジタル技術活用のポイント (844 KB)
高津 陽一, 齋籐 陽子, 塩入 裕太, 西村 威彦, 松下 洋之, p.23-29
多くの企業が,製造現場や保守現場における作業品質の向上や状況の正確な把握などを狙いとして,デジタル技術の活用を検討している。しかし,デジタル技術の現場への導入・定着は容易ではなく,業務にフィットせずトライアル・実証止まりで頓挫することも多い。現場では日々改善活動が実施されており,優れた企業であるほど業務内容が頻繁に変更されるほか,作業環境・作業条件も現場ごとに異なる変更や相違点を短期間でカバーして,現場の日々改善される業務に常にフィットさせ続けることができるソリューションが求められる。そこで富士通は,業務やデジタル技術をデザインパターン化(業務共通部品化)してその組み合わせで現場業務に適用し,使い続けられるアプリケーションを実現するアプローチを採用した。これにより,最初のトライアル・実証を短期間でスモールスタートできるだけでなく,本運用後も現場に合わせた変更を現場主導で容易に行えるようになる。また,新たなデジタル技術を組み込むことで,運用の高度化と更なる成長が可能となる。
本稿では,実際の事例を交えながら,成長し続ける製造・保守現場におけるデジタル技術活用のポイントについて述べる。
AIを活用した光ファイバー温度測定による予兆監視ソリューション (1.14 MB )
齋藤 賢二, 宇野 和史, 笠嶋 丈夫, 有岡 孝祐, p.30-37
発電所やプラント,製造業の工場などでは安心・安全が重視され,安定して稼働することが求められる。特に,機械や設備のトラブルは,故障すると発電能力や製造能力に影響を及ぼすだけでなく,不良品の生産によって大きな損失を生じさせることもある。富士通ではこうした問題を解決するため,人工知能(AI)による予兆監視機能も備えた「FUJITSU Business Application Operational Data Management & Analytics 予兆監視モデル for 光ファイバー温度測定」を開発した。本製品では,機械や設備などの温度検知を光ファイバーを用いて常時行うことによって,これらの発熱状況を監視し,異常や故障につながる予兆を検知できる。また,従来の測定器では困難であった狭い場所などでも温度測定が可能になった。
本稿では,開発した光ファイバー温度測定技術とその特徴,および適用事例について述べる。
ワークスタイル変革を支えるFUJITSU Cloud Service Print Anywhereの技術 (881 KB)
栢本 和夫, 寺岸 秀和, p.38-45
近年,ICTを活用したワークスタイルの変革に注目が集まっている。このワークスタイル変革を実現するための仮想デスクトップの印刷環境では,場所やプリンター・複合機の機種を選ばずに印刷できるようにする仕組みが必要となる。そのためには,「複合機の仮想化」「印刷配信」「複合機アプリケーションの統合」の技術が必要となる。富士通はこのニーズに応えるために,新たに仮想デスクトップの印刷環境として利便性とセキュリティを実現するクラウドサービスである,FUJITSU Cloud Service Print Anywhereを開発した。本サービスは,これまで帳票ミドルウェアの開発で培った技術に加え,複合機メーカーとの共創による技術を融合し,ワークスタイル変革のニーズに応えるものである。
本稿では,富士通のワークスタイル変革の実践を通じて,働く場所を選ばずどこにいても普段と同様な印刷を実現するための取り組みを紹介する。
シーン視聴のUXを高めるグローバル配信アーキテクチャー (757 KB)
鎌田 英朗, 小口 淳, p.46-52
VOD(Video On Demand)サービスのコンテンツが膨大な数になってきたことにより,今後は利用者が限られた時間で見たいシーンだけを選んで視聴する「シーン視聴」が主流になると予想される。従来,VODのグローバル配信ではCDN(Content Delivery Network)を利用することで視聴時のレイテンシー(データ転送時に生じる通信の遅延時間)を削減してきた一方,シーン視聴では検索パターンが膨大になりCDNのキャッシュヒット率が低くなるため,その削減効果を得られなかった。富士通では,プロ野球映像のシーン視聴サービスであるFUJITSU Business Application Operational Data Management & Analytics PITCHBASEの海外利用者への配信に当たり,CDNに依存しない映像配信アーキテクチャーを考案し,その実現を進めている。このアーキテクチャーは,日々増加する野球映像を海外にも配置してレイテンシーを削減しつつ,視聴可能なシーンを順次公開していくことで,海外利用者にもいち早くシーン視聴を提供することができる。
本稿では,グローバルにシーン視聴のUX(ユーザーエクスペリエンス)を高める配信アーキテクチャーについて述べる。

業種・業務の共通機能をPaaS上に実現する「デジタルサービス基盤」

デジタル革新の加速に向けたお客様との共創実践によるデジタル技術活用 (882 KB)
原 英樹, 小松 竜太, 塩田 展行, p.53-59
昨今,Uberによるライドシェアリングサービスや,Airbnbによる民泊サービスなど,既存のビジネスモデルを破壊するデジタル革新が加速しつつある。このような状況の中,富士通はお客様の業務ノウハウと富士通のデジタル技術を組み合わせて,新たなビジネスを共創する取り組みを開始した。例えば,巴コーポレーション様との共創実践事例では,製造現場の組み立てノウハウとAR(Augmented Reality:拡張現実)などのデジタル技術を組み合わせ,現場で組み立てた鉄骨部品に設計図面(3次元CADデータ)を重ね合わせて表示することで不具合を検出し,歩留まり向上につなげた。このように,IoT,AI(人工知能),ロボティクスといった最先端技術と,ブロックチェーンの実装の一つであるHyperledger Fabricなどの最新OSS(Open Source Software)をインテグレーションした上に,お客様との共創実践を通じて得た業務ノウハウを実装したデザインパターン(業務共通部品)を展開し,それをクラウドサービスとして提供することに取り組んでいる。これにより,デジタルソリューションの創出を加速し,既存の業種SI(System Integration)ビジネスにおいてデジタル領域を拡大していく。
本稿では,お客様のデジタル革新の加速に向けた富士通のデジタル技術活用の取り組みについて述べる。
デジタル革新の加速に向けたお客様との共創実践 (1.28 MB )
原 英樹, 越後 慎也, 大田 智範, 小松 竜太, 松本 聡, p.60-67
お客様のデジタル革新を加速するため,富士通は3年間で1,000件を超える共創実践に取り組んできた。このお客様との共創実践を通じて,デジタル革新に共通の課題が存在することを見出した。この課題の解決に向けて,富士通はIoT・AI(人工知能)といった最先端技術,およびブロックチェーンの実装の一つであるHyperledger Fabricなどの最新OSS(Open Source Software)をインテグレーションした。また,投資対効果を検証した業務ノウハウをデザインパターン(業務共通部品)として,クラウドサービスで提供する取り組みに着手した。デザインパターンを使用することで,お客様のデジタル革新を加速するソリューションの創出を短期間・低コストで実現できる。
本稿では,独立行政法人水資源機構様,株式会社巴コーポレーション様などのお客様との共創実践事例を紹介するとともに,富士通が提供するデジタル技術とその効果を紹介する。
デジタルビジネスを支えるWeb API化を加速するAPIマネジメント (799 KB)
小山 拓郎, 鈴木 弘樹, p.68-75
デジタルビジネスにおけるアプリケーションやサービスをつなぐ手段として,Web API(Application Programming Interface)は重要な役割を果たしている。システムやサービスの機能・データをWeb APIとして提供する際には,セキュリティやトラフィック制御などの機能を考慮する必要がある。これらの機能を含めてWeb APIの提供から分析,収益化までをカバーし,Web APIのライフサイクルを通じて企業を支援するのがAPIマネジメントである。富士通は,APIマネジメントの分野で高い実績を持つGoogle(Apigee)と提携することで,APIマネジメント製品を提供している。これを導入することで,Web APIの提供時に必要となる共通的な機能については自前で開発することなく実装できるため,API提供者はコアサービスや機能の開発に注力でき,短期間で効率的にサービスを提供できる。
本稿では,デジタルビジネスにおけるアプリケーション開発やSoE(Systems of Engagement)とSoR(Systems of Record)の連携に欠かせないWeb APIについて述べる。また,富士通で実践している社内システムのWeb API化に向けた取り組みと,お客様へ提供しているAPIマネジメントについて紹介する。

SoEシステムを支える「プラットフォームソフトウェア」

組立型ビジネスでデジタル変革を推進するクラウドソフトウェア (976 KB)
Ian Thomas, 竹部 晶雄, Christian Menk, p.76-84
デジタル変革は今や全ての規模の組織において主要な重点戦略である。しかし「変革」は終わりがなく,変化の過程である。では,デジタル化によって組織は何に変化しようとしているのだろうか?答えは組立型ビジネスだと考えている。組立型ビジネスとは,数百万に及ぶヒト・モノ・システムのリアルタイムな接続の組み合わせの上に,柔軟で知的かつ高度に自動化されたビジネスモデルを創造し,収益化を図るものである。しかし,この非常に複雑な接続の管理は,今日のビジネス・ICTの能力では難しく,より強力なツールと高度な自動化,および人工知能の普及が必要である。その成功に向けては,次世代のつながるビジネスモデルを支える,非常に複雑な分散エコシステムの作成・可視化・制御を可能とする基盤の構築が必要である。
本稿では,デジタル変革によって得られるデジタルビジネスの四つの特徴を説明する。次に,これらの特徴を実現するためのクラウドソフトウェアを紹介し,最後にそれらソフトウェアのシナジーにより組立型ビジネスとしてデジタルビジネスを実現する方法を説明する。
ハイブリッド環境におけるアプリケーション配信の加速 (801 KB)
James Weir, Alban Richard, 植田 譲, p.85-92
今日のビジネスは,アジャイル方法論やDevOpsプロセスでICTの応答性を向上することに目を向けている。しかし,ガバナンスやコンプライアンスが損なわれないことも保証しなければならない。更に,ハイブリッドICTやマルチクラウド環境では,様々なインフラが開発や運用に影響を及ぼしており,これらの相反する要件を満たせなくなる可能性がある。DevOpsに共通の定義は存在しないが,DevOpsとはコミュニケーションと協力を促進する環境であり,アジャイルとはその環境内での働き方であると考えることができる。DevOpsでは,高品質で十分にテストされた製品のリリースサイクルを最適化しつつ,様々なチームや部門が効率的な協力やコミュニケーションを行うことを重視している。FUJITSU Software UForge AppCenterはDevOpsを念頭に置いた基盤であり,ソフトウェア配信を高速化するため,アプリケーション配信のライフサイクルの様々な段階における人手による調整作業を減らすことに注力している。
本稿では,アジャイル開発を説明するとともに,アジャイル開発がDevOpsにどのように関連するのか,コントロールや一貫性を犠牲にせずDevOpsから必要とするスピードと俊敏性を得るために,UForge AppCenterがどのような役割を果たせるのかについて述べる。

将来動向

デジタルイノベーションを支えるソフトウェア技術の将来動向 (834 KB)
河場 基行, 田中 竜太, 栗原 英俊, 阿比留 健一, p.93-99
お客様の新たなデジタルビジネスは,デジタル化したことで多数のサービス利用者と多数のサービス提供者がつながる,B2B(Business to Business)のDigital Co-creationに向かう。このDigital Co-creationの場は,業種・業界を越えたビジネスの目的ごとに必要な情報がやり取りされる「つながる世界」となり,更にエコシステムとして拡大していく。つながる世界では,サービスの提供者と利用者がともに安定してビジネスを行うために,それぞれが簡単に安心して参加できる仕組みを提供し,この両者とエンドユーザーが享受できる価値や利便性を最大化する様々な技術が必要になっていく。その際にキーファクターとなるのは,お客様のシステムによって扱いが異なる多種多様なデータである。ビジネスの目的や契約に基づいてこれらのデータを組み合わせ,分析し,利用する価値のある「つながる情報」に昇華させ,流通させることにより,新たな事業やサービス,すなわちデジタルイノベーションが創出され,経済的,産業的な成長につながっていく。
本稿では,これらの実現に関連するソフトウェア技術の動向と富士通研究所の取り組みを紹介する。