自動車用レーダーのために77GHz付近のミリ波のみ透過する周波数選択性表面(FSS)を解析した事例です。電界分布を可視化し、透過係数スペクトルを算出します。パラメータスイープ機能を用いて金属ストリップ幅に対する透過係数の依存性を評価しています。
FSSでは、波長以下の微細形状を周期的に形成することにより、特定の周波数の電磁波のみを選択的に透過させることができます。
下図に77GHz付近のミリ波のみを透過するFSS構造(*1)を示します。FSSは十字の金属ストリップとスロットから構成されており、薄い誘電体基板(緑色)上に置かれています。
(*1)参考文献:”Compact Multibeam Dual-Frequency (24 and 77GHz) Imaging Antenna for Automotive Radars”,B. Schoenlinner et.al., 2003 33rd European Microwave Conference
解析領域 | 1.39mm x 1.39mm x 10mm |
---|---|
格子数 | 12.2万格子
|
励振波 | 差分ガウシアン波(~100GHz,平面波) |
境界条件 | 吸収境界条件(図中灰色部)
周期境界条件(図中赤色部) |
Poyntingにより解析したFSSモデルの透過係数スペクトルを以下に示します。透過係数のピークは77GHz付近で見られます。このFSS構造は特定の周波数(77GHz)のミリ波を選択的に透過していることを表しています。
解析した40GHzと77GHzの電界分布を以下に示します。40GHzではFSSの後方ですぐに減衰しますが、77GHzでは正弦波の振幅がほぼ一定で伝搬している様子が確認できます。
Poyntingのパラメータスイープ機能を用いて、金属ストリップ幅wに対する透過係数の依存性を評価した結果を以下に示します。wを大きくすると、透過係数のピークが低周波側にシフトしています。構造パラメータを変化させることにより、ミリ波の透過特性が制御できることを表しています。