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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

スポーツICT


雑誌FUJITSU 2018-3

2018-3月号 (Vol.69, No.2)

富士通は,国内で大規模な国際スポーツイベントが連続して開催されることを契機に,スポーツビジネス市場に対して,スポーツを「する」「みる」「支える」ことを支援するテクノロジー&ソリューションを提供します。
本特集号では,スポーツデジタルプラットフォームを支えるテクノロジー,スポーツファン拡大に向けたスポーツデジタルマーケティング,大規模イベントを支えるソリューション,およびスポーツICTの活用事例をご紹介します。

論文

巻頭言

ご挨拶 (511 KB)
執行役員専務 髙綱 直良, p.1

特別寄稿

東京2020大会を史上最もイノベーティブな大会にするために (700 KB)
(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 イノベーション推進室長 平田 英世, p.2-5

総括

スポーツの発展に貢献する富士通のテクノロジー&ソリューション (725 KB)
田中 義孝, p.6-12
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に,富士通はスポーツビジネス市場に対してスポーツデジタルサービスを提供していく考えである。スポーツデジタルサービスとは,スポーツを「する」「みる」「支える」ことを支援するテクノロジー&ソリューションと,スポーツビジネス市場を活性化するためのスポーツデジタルマーケティングのプラットフォームを提供するものである。
本稿では,富士通が体系化したスポーツデジタルサービスの概要について述べるとともに,2020年以降のデジタルビジネスの広がりについても述べる。

スポーツデジタルプラットフォームを支えるテクノロジー

アスリートの動きをリアルタイムに数値化する3Dセンシング技術 (1.21 MB )
佐々木 和雄, 桝井 昇一, 手塚 耕一, p.13-20
スポーツ分野では近年,科学的な知見を取り入れてアスリートの技能を向上させる取り組みが盛んに行われている。一方,体操などの採点競技では,年々高度化する技の判定・採点が困難になりつつあり,判定・採点の正確さや公平性の向上に対して科学的な技術を取り入れる必要性が高まっている。このため富士通研究所では,複雑な人の動きを3次元で正確に数値化し,機械学習などを利用して解析する3Dセンシング技術の確立に向けた研究開発に取り組んでいる。3Dセンシングの主要技術は,人の動きを体表面の凹凸を示す深度画像として取得する3Dレーザーセンサー技術と,深度画像から3次元関節座標を高速に抽出する骨格認識技術の二つに大別できる。3Dレーザーセンサーについては,従来のLIDAR(Light Detection and Ranging)と比較して10倍以上の走査点数を実現するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー投受光分離方式を紹介し,スポーツにおける画角制御技術の有効性を示す。骨格認識については,機械学習による骨格認識とフィッティングを組み合わせた,高速・高精度の3次元関節位置抽出手法について紹介する。
本稿では,富士通研究所が開発した3Dセンシング技術を紹介するとともに,実際のアスリートの動きにおける骨格認識の実験結果を示す。
「夢のアリーナ」を実現する映像解析技術 (1.32 MB )
石井 大祐, 秋山 深一, 都市 雅彦, 山本 琢麿, p.21-28
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え,日本ではスポーツの活性化に向けた取り組みが活発化している。富士通では,公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)および公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)をICTで支援すべく,スマートアリーナソリューションの実用化に向けた開発を進めている。本ソリューションの目的は,選手とチームを強化する,視聴者を楽しませるという二つである。前者に対しては,プレー中の選手の時々刻々と変化する位置情報を漏れなく捉えるために,特に選手が重なる密集時の対応を強化した高精度なモーショントラッキング技術を開発した。また後者に対しては,プレー中のフィールド内から見た映像や360度あらゆる角度からのリプレイ映像など,物理的な制約を受けることなく自由な視点からの映像を視聴者に届ける自由視点映像生成技術を開発した。
本稿では,これら二つの映像解析技術の特長について述べる。
次世代のスタジアム・アリーナを支えるデジタルテクノロジー (1.47 MB )
渡邊 優 , 小山 英樹, 照井 雄一, 永瀬 一博, 川野 清志, p.29-35
政府は,2019年から相次いで日本で開催される国際的なスポーツイベントを契機に,スポーツ市場の規模を2025年までに15兆円に拡大するとの目標を掲げている。更に,国際的なスポーツイベントが開催されるスタジアム・アリーナは,スポーツ産業の持つ成長性を取り込みつつ,地域経済の持続的成長を実現していく施設として最大限活用されることが期待されている。こうした背景から,富士通はスポーツデジタルプラットフォームを整備し,国際大会の要件をクリアしつつ管理コストを低減するStadium/Arena Solutionと,観客の体験価値向上を担うSpectator Experience Service Platformをスタジアム・アリーナに提供することにより,スポーツ産業の振興と地域活性化に貢献していく。
本稿では,今後転換期を迎える次世代のスタジアム・アリーナの実現に向けた富士通のデジタルテクノロジーを述べるとともに,その実現を先取りする試みとして,公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)と共同で実施した次世代型ライブビューイングの実証実験を紹介する。

スポーツファン拡大に向けたスポーツデジタルマーケティング

スポーツイベントにおけるチケットデータを活用したデジタルマーケティング (733 KB)
佐藤 忠彦, 福元 聡, 石井 雅登, 平石 格, 松本 泰明, p.36-41
日本では,国際的で大規模なものから地方の自治体や民間団体などが主催する小規模なものに至るまで,様々なスポーツイベントが開催されている。しかし,現地で観戦したことがある人は24.7%に過ぎず,集客面では課題を抱えているケースが多い。ファン層を拡大するためには,チケットデータや会員データ,ソーシャルメディアなどを組み合わせたデジタルマーケティングが必要不可欠である。富士通では,集客に向けてデジタルマーケティングを活用し,来場したファンを把握する仕組みを複数のスポーツリーグに対して提供している。
本稿では,富士通が取り組んできたデジタルマーケティングの紹介に加え,今後の提言について述べる。
スポーツツーリズムから日常生活まで満足度を高めるプレイスサービス基盤 (1,023 KB)
三宅 正史, 藤井 彰, 大野 敬史, 吉川 正晃, p.42-47
近年,スポーツ競技の観戦者に対して,競技日程の案内,施設予約,チケット販売,選手やチームの成績情報などを,スマートフォンを通じて提供することが多くなっている。これらの情報やサービスは,スマートフォンにインストールされたアプリで提供されることが一般的であるが,事前のインストールなどの一定の操作が必要となるため,サービス提供者が期待していたほど利用者数が伸びていない。富士通では,こうした利便性の改善を一つの目的として,利用者のTPOに合わせた情報やアプリを,スマートフォンで自動的に利用できるようにするプレイスサービス基盤を開発した。この技術をスポーツ観戦に適用することで,利用者の観戦体験の向上が期待される。また,観戦を起点としてスポーツと観光を融合するスポーツツーリズムなどのほかに,多くの企業が参加する新たな領域への展開も期待されている。
本稿では,プレイスサービス基盤を活用したスポーツ観戦時の利便性向上について述べる。
スポーツの魅力を最大限に引き出すUXデザイン (1,022 KB)
城 愛美, 滝澤 友洋, 本山 拓人, 浅川 玄, p.48-53
近年,日本国内では東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会などを見据え,スポーツビジネス市場において様々な取り組みが活発になっている。この市場においても,自社の製品やサービスを他社と差異化を図るためには,常にユーザー視点に立ち,新しいサービス体験と価値を創出するユーザーエクスペリエンス(UX)デザインアプローチが有効である。スポーツにおけるユーザーとは,主に「競技者」「審判員」「観戦者」の3者を指す。イノベーションにつながる提案や新規事業の推進を支援する際には,デザイナーはそれぞれの視点を重視する必要がある。これらの実現には,事業者の課題やビジョンを可視化し,それに基づいてプロトタイプを制作し,実際に体験してもらうことによって共感を得ながら迅速に事業化を推進することが重要と考える。
本稿では,2016年以降の実施事例を交えながら,スポーツの魅力を最大限に引き出すためのUXデザインアプローチの実践とポイントについて述べる。

大規模イベントを支えるソリューション

大規模スポーツイベントを支えるシステム基盤 (1,023 KB)
千原 健太郎, 髙橋 一聡, 金山 慎治, p.54-61
2020年夏季オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市に東京が選ばれ,本大会まで残り2年余りとなった。オリンピック・パラリンピックのような大規模スポーツイベントを滞りなく運営するためにはICTの利活用が不可欠であり,万全な準備と大会本番時の確実な運用が求められる。また,大規模スポーツイベントのシステム基盤整備においては,止められないシステム,一過性のイベント,短い準備期間といった,イベントの特性を考慮することも必要となる。しかし,これまでの情報システム整備で採用してきたオンプレミス形態ではこの特性に合わず,基盤の手配や構築に要する多くの時間,過剰なシステム構成,機能の重複といった問題に直面する。富士通はこの問題解決に向け,導入期間を短縮し,高可用性とフレキシブルな拡張性を実現するクラウドコンピューティング技術を活用したプライベートクラウド基盤構築と,共通アプリケーション機能の統合化によるオペレーション・運用の効率化を推進している。
本稿では,大規模スポーツイベントの大会運営に向けた,安定的かつ効率的なシステム基盤整備のあり方について述べる。
大規模国際イベントにおけるサイバーセキュリティ対策 (1.12 MB )
太田 大州, 武仲 正彦, 加藤 正顕, 益岡 竜介, 佳山 こうせつ, 福島 則哲, 今井 豊成, p.62-69
IoTの発展が急激に進みサイバー空間が広がる中で,サイバー攻撃はますます増加・高度化していく。加えて,国家の威信をかけた大規模国際イベントでは,世界中から大規模なサイバー攻撃にさらされることが想定される。これを見据え,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)に向けて,サイバーセキュリティ対応能力を向上させるためのエコシステム構築が日本の大きな課題となる。富士通はこのエコシステム構築のために,政府に対してセキュリティ技術の国産自給率の向上を提言している。そして自社でも,国産技術を開発するとともに,人材不足が論じられるセキュリティ技術者の育成に注力している。このような取り組みを通じて,レガシーとして2020年以降の社会を支えるべく,エコシステムの構築に貢献していく。
本稿では,東京2020大会およびその先を支えるセキュリティに必要な着眼点と,それを支える富士通の技術開発・人材育成について述べる。

スポーツICTの活用事例

ICTによる体操競技の採点支援と3Dセンシング技術の目指す世界 (881 KB)
藤原 英則, 伊藤 健一, p.70-76
2020年には国民の三人に一人が高齢者になると推計されている日本では,スポーツ庁が中心となって,ヘルスケア・健康増進などの分野からもスポーツを日本の主要産業の一つにしようとする動きが始まっている。海外ではスポーツビジネスが巨大な産業となっていることから,政府は日本のスポーツ市場規模を2025年までに15兆円に拡大することを目標に掲げた。この市場拡大に大きな期待が寄せられるスポーツIoTの領域で注目されているのが,3Dセンシングである。富士通は,国際体操連盟および日本体操協会との共創により,3Dセンシング技術を用いた体操競技の採点支援に取り組んでいる。
本稿では,3Dセンシング技術による価値創出と目指す世界,および同技術の国際標準化に向けた取り組みについて述べる。