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Fujitsu

Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS (エターナス) 」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や 販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

さらなる進化を遂げたETERNUS DX ~ 開発経緯や強化点、開発秘話について

2011年5月、ETERNUS DXのエントリーおよびミッドレンジディスクアレイがS2として大幅に機能強化されました。今回は、ETERNUS DXのS2が開発された経緯や強化点、開発秘話について、富士通の山田、室、石井、仲村に話を聞きました。


  • 富士通株式会社
    • ストレージシステム事業本部 ストレージシステム事業部
      • システム実装開発部 マネージャー
        山田 悟
      • システムハード開発部
        室 知治
        石井 孝典
      • システムファーム開発部
        仲村 大也

――エントリーディスクアレイ ETERNUS DX80/DX90とミッドレンジディスクアレイ ETERNUS DX400 seriesが、それぞれETERNUS DX80 S2/DX90 S2とETERNUS DX400 S2 seriesとして進化を遂げた。開発の背景にはどのような経緯があったのか?

後継機開発のきっかけは?

山田悟

(山田) 昨今はストレージに対するニーズが変化してきています。ひとつには、クラウドコンピューティングの普及により、膨大な数のストレージを収められるよう、小型化が求められるようになっています。また、ストレージ容量の効率的な利用への要求から、小規模構成でスモールスタートしておいて、その後のビジネスの変化に応じて構成を変更できるような柔軟性も必要とされています。

このため、ETERNUSらしさである「高信頼性」へのこだわりはそのままに、ひとクラス上の機能・拡張性を従来の価格帯で実現し、また導入・運用のしやすさ、省電力、省スペース設計による環境対応などを行い、こうしたニーズに応えられる製品を目指しました。

これらのニーズは、近年弊社が積極的に展開を目指しているグローバル市場でも同様でしたので、こうした対応を行うことで、グローバル市場でも戦える製品になると考えました。

――開発にはさまざまな困難が伴う。ETERNUS DXのS2の開発ではどのような工夫がなされたのか?

高機能を維持しながらプライスパフォーマンスを図る、ミッドレンジクラスの開発で苦労した点は?

室知治

(室) ミッドレンジディスクアレイ ETERNUS DX 400 S2 seriesでは、小型化の実現を目指しました。それには搭載部品数の削減、特に大きなバッテリーをどこまで削減できるかを考える必要がありました。従来機では、停電時などに内蔵バッテリーを用いてディスクドライブへ退避させることでキャッシュデータの保護を行っているのですが、昨今はキャッシュの容量が増えていて、たとえばETERNUS DX 440では従来機比の3倍となっています。今回はバッテリー削減によって電源供給時間が短くなるため、3倍にも増えたキャッシュデータの退避をどう実現しようかと悩みました。試行錯誤の結果、今回はキャッシュデータの退避先をコントローラー内蔵のSSD (不揮発性メモリ) に変更することで高速化し、データ退避時間を短縮することができました。バッテリーを削減できたことが小型化達成のポイントでもありますが、同時にバッテリーの使用量が減り、環境負荷低減も実現できました。

一方、低コストを維持しながら高機能化を図る、エントリークラスの開発では?

(石井) エントリークラスのETERNUS DX80 S2/DX90 S2では、高機能化を果たすため、ミッドレンジクラスで利用する高性能なCPUを搭載しました。また、ETERNUS DX90 S2では従来機と比較してキャッシュ容量を最大2倍に向上。このキャッシュ容量の増加に伴い、従来からエントリー機のキャッシュデータ退避用の電源として使用していた電気二重層コンデンサー (注1) の供給能力も増やす必要がありました。それにもかかわらず、筐体そのものは同サイズを目指したので、当初はどう設計しても収めることができず、レイアウトを何度もやり直すなど苦しみました。夢にまで出てきたほどです。

(注1)劣化がしにくく、充電が早い蓄電器 (コンデンサー)。バッテリーの代替としても用いられる。

ハードウェアの基本的な制御を行うファームウェアの苦労は?

仲村大也(仲村) これまでは、エントリークラスとミッドレンジクラスでは、異なるファームウェアを利用していました。今回は両者のコアとなる部分を共通化し、これまでミッドレンジクラスだけに搭載されていた機能をエントリークラスでも搭載できるようにするなど、エントリークラスでも一定以上の品質を保つよう設計しました。
しかし、突然に仕様が変更になったり、高性能化を優先したハードウェア設計に戸惑ったりしたこともありました。そこは、同じフロアで作業をしているので、その都度、何度も話し合いをしながら収拾を図り、ファームウェア開発を軌道にのせていきました。
また、ミッドレンジクラスとエントリークラスが並行開発でしたので、限られたメンバーでどのようにスケジュール調整するかでも苦労しました。

企画段階の検証風景写真

――システムの最適化、運用の簡素化など、ストレージを取り巻く環境は変化を続けている。こうした状況にも応えていくストレージ機能はどんなものか?

今回どのような機能が追加された?

(室) エントリーディスクアレイ ETERNUS DX80 S2/DX90 S2に、「シン・プロビジョニング」を搭載しました。シン・プロビジョニングはストレージ容量を仮想化する技術で、これまでミッドレンジクラス以上だけに搭載されていた機能です。この機能を利用することにより、サーバに大容量の仮想ディスクを割り当て、必要なときに必要な分だけ増設することができるため、お客様は事前の容量見積もりが不要となり、スモールスタートを行うことができるようになります。

ETERNUS DX80 S2/DX90 S2 ETERNUS DX400 S2 series

(室) さらに、今回搭載される大きな機能として、「ストレージ自動階層制御 (Automated Tiering) ( 注2)」があります。これはストレージ階層化の機能で、ETERNUS DX80 S2/DX90 S2、ETERNUS DX400 S2 seriesの両クラスのディスクアレイと、ソフトウェアETERNUS SF Storage Cruiserとの連携により、データのアクセス頻度を検出し、ストレージ内のデータを最適なドライブに自動的に再配置するものです。たとえば、頻繁にアクセスされるデータは高速なSSD (Solid State Drive) に配置してレスポンス時間を短縮し、アクセスされなくなったデータは比較的安価で、大容量のディスクへ移動することで、ストレージのトータルコストとデータの使用効率の最適化を実現します。もちろん、データの配置場所が変わっても、お客様は意識することなく利用することができます。この機能は、高速ですが高価なSSDをうまく活用したいというニーズにも応えられるものだと思います。

(注2)ETERNUS SF Storage Cruiser 15にてサポート

――今後、さらなる変化が予想されるストレージ市場。今後のストレージ市場に対する展望とストレージにかける想いについて聞いた。

今後のストレージ市場はどうなっていく?

(山田) 冒頭で述べたスモールスタートがさらに進み、複数のストレージを連携させて1つのシステムとして動かす、スケールアウトがキーワードとなっていくと思います。エントリークラスでスモールスタートして、ストレージ仮想化の技術を利用しながら、少しずつ規模を大きくしていくというのが一般的になるのではないかと。また、クラウドコンピューティングの本格的な普及に伴い、データセンターでの利用がさらに進んでいくと思いますので、より小型のものが求められると思います。同時に、消費電力についてもシビアな問題となりつつあるので、それらについても低減していく必要があります。

(室) これまではデータベースでの利用が一般的でしたが、ファイルサーバ的な利用へと変わってきています。今後はマルチメディアやウェブ上にあるようなデータが主流のオブジェクトベースと呼ばれる形態になっていくのではないかと思っています。

ETERNUSにかける想いは?

(室) 今回、開発にあたり、開発者全員が納得できる製品を開発するため、関係者をたくさん集めて検討会を重ねました。これまでは、人数を絞ってトップダウンで方針を決めていましたが、今回は、幹部社員はあえて意見を出さないようにしました。人数が多くなって意見もたくさん出たのでなかなかまとまらなくなってしまったという別の意味での苦労もありましたが、今回のこの試みは普段聞けないような意見を反映させられたので、ETERNUS DXのS2は、開発者全員の想いが詰まった製品となりました。

石井孝典

(石井) エントリーディスクアレイ ETERNUS DX80 S2/DX90 S2は、性能をミドルレンジレベルまで高められました。また、ミッドレンジディスクアレイ ETERNUS DX 410 S2、DX440 S2は、小型化、省電力化を図りながら処理能力も高めましたので、お客様への貢献度も高いと信じています。その実績を自信に変えて、次の製品の開発に打ち込んでいければと思っています。とにかくコストパフォーマンスには自信があります。
最近はデータセンターを利用するお客様も増えてきたこともあり、求められることも変わってきています。そうした声に応えていくのは面白いです。開発していたときは苦しんでいた設計レイアウトの苦労も、だんだん楽しいとすら思えるようになってきました。

(仲村) 操作性は機能や性能とは違ってカタログからは伝わりづらいところですが、使い勝手でお客様に良い印象を持ってもらえるようにさらに強化していきたいと思っています。

(室) 数値には表れないところですが、ストレージの一番大切な部分、お客様のデータを安全に守るというところは今後も貫いていきたいです。ストレージには、ベンダーが工夫する余地がまだ残されています。いい意味で規格化されすぎていない。ストレージは、データの品質保証や壊れたときにどう動くかといったところで工夫するところがたくさんあり、やりがいを感じます。

(山田) 作ったものをできるだけ多くの方に評価してもらいたいですね。国内でエントリークラス、ミッドレンジクラスの両方で国内シェアNo.1を目指すのはもちろん、グローバル市場でもETERNUSという名前がもっと有名になり、いろいろな地域で活躍させられるようにしていきたいと思います。

(注) 取材日:2011年4月19日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日、または公開日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

次回 『ETERNUSディスクアレイ「SPC Benchmark」
SPC BenchmarkでETERNUSの性能を見える化

掲載日:2011年6月24日


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