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Japan

特集「クラウド時代のストレージ投資」
~Japan Storage Vision 2011 (2/9開催) から

リーマンショックの影響により2009年以降落ち込んでいたICT投資が回復の兆しを見せ始めている。とはいえ、限られた予算と反比例するようにシステムの管理コストが増大していく状況で、ICTインフラの再構築に乗り出す企業が増えている。その中心となるのがクラウドだ。クラウドとは何か、そしてクラウド時代のストレージ投資のあり方を考察する。

クラウド形態の多様化

クラウドコンピューティングとは、ネットワークを介してICTリソースをサービスとして提供することを指す。アプリケーションの機能を提供するSaaS (Software as a Service) 、ハードウェアやOSなどのアプリケーションの実行環境を提供するPaaS (Platform as a Service) 、ネットワークやサーバなどのインフラを提供するIaaS (Infrastructure as a Service) などのサービスがある。
クラウドの形態は、パブリッククラウドとプライベートクラウドに大別できる。パブリッククラウドは、プロバイダーがインターネットを介して提供する形態で、共通サービスという位置付けだ。一方、プライベートクラウドは、企業内にクラウドコンピューティング環境を構築し、イントラネットを介して自社内や協力会社などに提供する専用サービスになる。
最近ではハイブリッドクラウドや仮想プライベートクラウドなども増えてきている。ハイブリッドクラウドは、オンプレミス (社内構築システム) 、パブリッククラウド、プライベートクラウドを混在させて利用する形態のこと。仮想プライベートクラウドは、プロバイダー内のクラウドコンピューティング環境を企業別に区分けし、インターネットVPN (Virtual Private Network) を介してサービスを提供する。クラウドの普及が進めば、利用者のニーズに合わせてその形態もさらに多様化していくだろう。

プライベートクラウドを構築するメリット

では、なぜクラウドコンピューティングが注目を集めているのだろうか。
企業で業務を効率化するにはICTシステムの活用が必須である。しかし、オンプレミスでシステムを導入するには、多額のコストをかけてハードウェアやソフトウェア、人的資源を確保し、構築・運用しなければならない。一方、パブリッククラウドであれば、ICTリソースを自社で所有する必要はなく、必要な機能のみを必要な期間だけサービスとして利用できる。導入期間も短く、管理者への負荷も最低限で済む。
利用の手軽さに加え、AmazonやGoogleなどがいち早く一般向けにパブリッククラウドサービスを提供し始めたことから、「クラウド=パブリッククラウド」と思われがちだが、市場規模はプライベートクラウドのほうが大きい。また、どちらの市場もともに大幅な拡大が見込まれており、IDCは、国内のパブリッククラウドサービス市場が2009年度の312億円から2014年には1,534億円に、プライベートクラウド市場が2009年度の984億円から3,760億円に拡大すると予測している。
プライベートクラウドは、パブリッククラウドに比べると導入に期間やコストがかかる。それでも、プライベートクラウドを選択する理由として、企業内、つまりファイアウォールの内側にクラウド基盤を持つことで強固なセキュリティを確保できることが挙げられる。企業が扱うデータは増大化かつ多様化の一途をたどる。中には顧客や新製品の情報など、漏洩が企業の命取りになるデータも多い。プロバイダー側で万全なセキュリティ対策をとっていても、インターネットという無法地帯上でのデータのやりとりやデータセンターでのデータ管理に対して不安を抱く企業が少なくない。
もう1つの理由がコスト削減だ。部署ごとにサーバやシステムを持つサイロ型の企業システムでは運用やメンテナンスにかかるコストが年々増加している。また、ストレージなどのリソースの利用率が低く、投資に対して十分な効果が得られていない場合も多い。クラウド基盤を導入してICTリソースを集約して管理し、必要な部署に必要な分だけICTリソースをサービスとして提供すれば、最小限のリソースを効率的に活用することが可能だ。導入時の初期コストが大きくても運用コストが抑えられる分、長い目で見ると全体的にコストを大きく削減できる。提供するサービスの追加や拡張にも柔軟に対応できるため、業務の効率化や生産性の向上が実現するというメリットもある。

クラウド時代のストレージ投資

プライベートクラウドの構築は、オンプレミスのシステムを置き換えるか共存させるかに関わらず、企業のICTインフラを再構築することを意味する。当然ながら、インフラの一部として重要な役割を担うストレージシステムにも変革が必要だ。IDCの調査では、ストレージインフラの見直し策として「バックアップ手法の見直し」「ディスクストレージ容量の利用率向上」「交渉による製品/サービスコスト削減」「バックアップ統合」「スモールスタートな投資へ切り替え」「ストレージ統合の実施」などに取り組む企業が増えている。
ストレージ投資のパターンにも新しい動きが見られる。iSCSIやNASなど、サーバ仮想化環境でのネットワークストレージの導入が拡大しているほか、重複排除機能やスケールアウト型など新しい技術への投資が増えているのだ。
プライベートクラウドはいちどきにすべてを構築するのではない。統合化、仮想化、標準化、自動化、サービス化と段階的に進めていき、インフラの利用率を向上して運用管理の効率性と柔軟性を確保し、TCO (Total Cost of Ownership) を削減することが目標となる。その過程では、サーバやストレージの仮想化が必須である。
IDCによる「国内外付型ディスクストレージシステム投資の推移と予測」では、ICTバブル崩壊を転機にDASからSANやNASのネットワークストレージへと投資のシフトが進んだように、2009年の世界経済後退以降は仮想化に投資がシフトし始めると予測されている。

また、「国内ブロックレベル仮想化の新規仮想化容量の実績と予測」を見ると、ブロックストレージの仮想化が2009年以降大きく拡大していくと予測されている。2011年の実績で見ると前年比2.2倍であり、2013年までの平均成長率は98%である。
これらの予測を見ると、現時点ではストレージ仮想化が広く普及しているとは言えない。しかし、コスト削減を掲げて、クラウド環境への対応などの新技術によりICTインフラの再構築を進めるためには、ストレージシステムもまた大きく見直さなければならない。クラウド時代のストレージ投資のカギは、サーバやストレージの仮想化にあることは間違いないだろう。

掲載日:2011年4月22日


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