ETERNUS トピックス
2012年10月29日
企業活動を支えるICTシステムの中で最も重要なのが、ストレージに格納されたデータです。増え続けるデータを確実に保全し、効率よく管理できるストレージシステムの有無が、企業活動の成否を分けると言っても過言ではありません。そして、サーバとストレージをつなぐ環境は、事業規模や事業所の数、またビジネススタイルによって変化・発展を続けています。昨今、多様化するストレージネットワーク環境に柔軟に対応するために、スイッチと呼ばれる中継機器が必要不可欠であり、重要な役割を担っています。接続方式の変遷とともに、スイッチの必要性と役割を見ていきましょう。
1990年代までは、企業のストレージはサーバに直接接続するDAS(Direct Attached Storage)と呼ばれる接続方式が主に利用されてきました。DASはネットワークを介さず、サーバとストレージが直接接続するため、スキルや知識がなくても簡単に導入できるメリットを持ちます。その一方、データ共有ならびに増設や新旧入替などが難しいため、ストレージ利用効率が悪い、サーバ仮想化環境やストレージのライフサイクル管理には不向きです。また、接続距離が短く設置場所が制限されるため、離れたシステム間のデータ共有や集中バックアップが難しいといった課題もありました。そのため、昨今ではこうした課題を解消する方式として、ネットワーク経由でストレージにアクセスするSAN(Storage Area Network)という接続方式が主流となっています。データの共有、利用効率の向上、拡張性の向上、管理コストの削減、距離制約の解消といった、柔軟なストレージシステム運用ができるようになっています。
こうした市場背景により、重要になってきたのが、サーバとストレージを繋ぐスイッチです。複雑化するネットワーク環境において、確実かつ安全なデータ送信を実現するスイッチを導入することにより、拡張性や可用性を向上させるだけでなく、データのバックアップや災害対策に備えた運用効率性も提供します。
以下、スイッチの必要性をそのはたらきから見てみましょう。
高性能、高可用性、高い運用効率性を提供するSAN環境を構築するためには、サーバとストレージ群の最適な接続環境を実現することが重要です。サーバとストレージ群との親和性を保つスイッチング技術が必要不可欠なのです。
以下、代表的なスイッチについてそれぞれの役割と適用シーンをご紹介します。
SAN環境において、現時点でのストレージネットワーク上で最も信頼のおける通信方式が、ファイバチャネルスイッチ。
個々のサーバとストレージがダイレクトに繋がるDAS環境からSAN環境への移行に欠かせないスイッチです。これまで全世界で最も多く導入され続けており、エントリーシステムからデータセンター向けまで幅広く利用されています。例えば、PCサーバや高速ワークステーション、メインフレーム、スーパーコンピュータなどの複数のサーバと複数のストレージ間での高速データ転送を可能にしています。
ファイバチャネルスイッチ「Brocade 6505/6510」を導入することにより、最大16Gbpsの転送速度で複数サーバでのストレージ共用(ストレージ・コンソリデーション)、複数ストレージを同一サーバで使用(サーバ・コンソリデーション)、データの集中バックアップ、システムの集中管理を実現します。
また、富士通のファイバチャネルスイッチは初期のころから、難しい設定をせずにスイッチやケーブルを追加することで帯域を拡張できる「ファブリック技術」を持っているため、拡張性の点でも優れています。
SAN環境においてストレージ間における高速データ転送機能をさらに高めているのが、エクステンションスイッチ。
ファイバチャネルよりも転送可能距離が長く、万一の災害やさまざまなシステムトラブル時においても確実なデータ保全をめざす、複数の主要都市に事業所を置く企業やデータセンターなどに適しています。
こうした大規模なストレージネットワークを構築する上で注目されているのが、かつてない高速性と長距離接続により、遠隔地間でのデータバックアップ、データベースのミラーリングを実現したエクステンションスイッチ「Brocade 7800」です。
さらに、SANバックボーン「Brocade DCX 8510-4/DCX8510-8」とエクステンションブレード(FX8-24)の組み合わせでは、必要に応じて筐体にエクステンション(拡張)ブレードを追加することができるので、ディザスタリカバリーシステム構築のためのネットワーク環境を、迅速にしかも最小の工数で増強できる点でたいへん有利です。
(注)遠隔地へのデータ転送にはストレージが持つハードウェア/ソフトウェア機能が必要です。
既存のLAN環境とSAN環境の融合を実現したのが、コンバージドスイッチ。
FCoE(Fibre Channel over Ethernet)のプロトコルを使用することにより、これまで分離して構築する必要があったLAN とSANといった異なるトラフィックを単一ネットワーク上で転送することが可能となっています。運用性と柔軟な拡張性を両立させ、ハードウェア点数の削減や省スペース化、導入/運用コストの削減を実現します。
コンバージドスイッチ「Brocade VDX series」では、例えば、ストレージ統合環境において、優先的に処理を行いたい業務に対し、処理能力を確保するQoS(Quality of Service)機能をサポート。流動的なデータトラフィックに対し、指定した帯域保証値の容易な変更が可能なため、システムに影響を与えることなく柔軟な運用が可能となります。また、ファイバチャネル技術で培ったファブリック技術を「イーサネットファブリック技術」として実現した画期的な製品です。多種多様かつ膨大なデータ量に対し求められるストレージ要件、「業務を止めない」「投資の最適化」「簡単導入・運用」などに柔軟に応えるためのスイッチとして提供しています。
今後さらなる技術の進化とともに、普及が進んでいくと予想されるスイッチです。
このほか、富士通では高信頼性が求められるメインフレームとストレージの統合を実現する、「FCLINK Switch」を提供しています。