生成AIの導入や活用で成功させるために必要なもの

近年、生成AIほど人々の想像力をかき立て、業界の注目を集めた技術はあったでしょうか。生成AIは、2022年にコンピューティング能力の大幅な向上と大規模言語モデル(LLM)の開発によって、リアルな会話と多様なテキストベースのコンテンツ生成が可能なチャットボット「ChatGPT」が実現されたことから始まりました。生成AIが持ちうる広範な魅力と可能性は、生産性向上とビジネス変革の加速に大きな機会をもたらしています。

今回のフジトラニュースは、「生成AIの導入や活用を成功させるために必要な戦略的手順を説明したインサイトペーパー」から重要なポイントを抜粋した記事としてお届けします。

目次
  1. ビジネス変革のための生成AI
  2. リスクへの対応、収益の最大化
  3. 生成AI導入の3段階
  4. 成功のための提言

ビジネス変革のための生成AI

生成AIは、ビジネスのコミュニケーションを変革し、生産性の向上とイノベーションの加速に大きな機会をもたらします。スタートアップや大規模なプラットフォーム企業は、生成AIサービスを自社のアプリケーションに統合しプログラミングはもとよりマーケティングやビジネスモデルの発見などビジネス機能全体にわたる新しい機能を顧客に提供しています。PCやスマートフォンに常駐する仮想パーソナルアシスタントや、MicrosoftがOfficeに統合した“Copilots(副操縦士)”のようなAIサービスは、スケジュールの管理、電子メールの要約と作成など、ビジネスや顧客の様々なタスクを支援することができます。この結果、生成AI市場は5年以内(2023~2028年)に37億ドルから360億ドルに成長すると予測されています。

しかし、いざ企業が生成AIを導入するとなると、ビジネスリーダーは、担当部門やChatGPTなどを迅速に採用する準備をしなければなりません。また、生成AIを使いこなすために「プロンプトエンジニアリング」などの新しいスキルのサポート、安全なAIガバナンスの基盤の構築といった、実装段階で様々な課題に直面します。

リスクへの対応、収益の最大化

生成AIを実装するうえでのセキュリティ上の懸念は、機密情報の漏洩の可能性です。生成AI導入のすべての段階において、ガバナンスとAIリスク管理は、効果的な生成AI戦略を策定するために不可欠です。機密データへの不正アクセスを防止するために、AIのモデルへの従業員のアクセスは組織内の役割と機能に従って慎重に管理する必要があります。また、最初から生成AIを効果的に活用するためには、従業員のトレーニングが不可欠です。ターゲットを絞った要求を行い、最適な応答のための関連データを提供する方法をユーザーに教える「プロンプトエンジニアリング」は、生成AIの可能性を最大化します。組織はまた、効果的なモデル監視のために、ポリシーとコンプライアンスリスクに関する適切なトレーニングが提供されていることを確認する必要があります。

生成AI導入の3段階

生成AIの導入は、実装のレベルによって3段階に分けられます。各段階で、「データセキュリティ」「クラウド」「通信の統合」「ユーザートレーニング」のレベルが異なります。次の図は、各段階で生成AI導入をどのように実現するかを示しています。

生成AI実装の3段階

第1段階は、プログラミングの知識がなくても「すぐに使える(Out-of-the-Box)」のスキルを活用して、企業が業務やワークフローに生成AI機能を組み込むレベルです。ビジネスコンテンツの作成、編集が容易になり、マーケティングやセールスのチームの生産性が向上します。また、仮想アシスタントによる情報検索やデータ分析、文書化の支援は、研究開発チームにとっても有益であることが証明されています。しかし、今のところ、生産性の高いAIアプリケーションは、いくつかのビジネス機能に限られています。生成AIをより広範なビジネス機能に適用するには、次の段階へ進む必要があります。

第2段階は、AIのモデルを企業固有のデータセットやオペレーションと統合して既存のビジネス機能を自動化、拡張するレベルです。複数のビジネス機能を自動化するためには、内部データとアプリケーションへのシームレスなアクセスが不可欠で、多くのケースで内部データのクラウドへの移行が必要になります。また、ビジネスコミュニケーションツールを、電子メールからSlackのようなインタラクティブなチャットコミュニケーションプラットフォームへ移行も重要なポイントです。この実装段階では、生成AIが機密性の高い内部情報を扱うため、全社的なセキュリティ管理をより強化することが求められます。

最後の第3段階では、自動化だけでなく、AIによって新しい知見を発見し、事業戦略やビジネスモデルの進化を直接支援するレベルに到達します。製造、金融、医療など専門的な業界固有アプリケーションとも深く統合できるようになります。自社のビジネスのための新しい知見を発見するには、一般的なLLM(大規模言語モデル)を企業固有のタスクに適するように再学習(ファインチューニング)するか、業界固有のAIモデルを追加開発してトレーニングする必要があります。幸いなことに、業界固有のAIモデルは各業界のサービスプロバイダーによってすでに開発されているので、企業は必ずしも自社で開発する必要はありません。重要なのは、生成AIを用いたナレッジプロセスの変革を計画することです。

富士通グループは、企業データを活用して生成AIを試したい、あるいは基本的な機能を超えてAIの新しい機会を発見するための準備をしたいパートナー向けに、高度なAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform」を開発しました。生成AIを製造から小売まで幅広いユースケースと統合し、新たな機会を発見するための「AIイノベーションコンポーネント」を提供します。さらに、初期の実験段階を超えたいお客様は、コンサルティングサポートとして実装サービスが利用可能です。

また、富士通とコンサルティング子会社のRidgelinezは、個人の生産性向上、職場生産性向上、特定業務省力化、プロセス省略・業務簡素化から機能削減・組織再編成に至るまでの生成AIの利用に必要なステップを明確に示す実装戦略を策定しました。どの段階での生成AI導入を目指すのかに応じて、全体最適なアーキテクチャデザインを策定し、アジャイルに実現方式を見極めて試行します。

Fujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platform

成功のための提言

生成AI導入にはセキュリティリスクや活用のための課題があるものの、多くの企業にとって、生産性向上や新たなビジネスモデルの発見をもたらす生成AIの可能性には、リスクと課題に見合う価値があります。これらの機会を活用できなかった組織は、ますます競争上不利になる可能性が高くなります。利益を最大化し、投資収益率を高め、潜在的な問題を回避しなければなりません。そのために、企業は、組織を3つの段階と照らし合わせることで、どこに向けて準備するかを決定し、必要なポリシーやセーフガードを設定、そしてトレーニングを実施する必要があります。

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