【変革のキーテクノロジー】世界を形作るコンピューティング技術で未来を変える

この不確実な時代、持続可能な社会に向けて、企業はどのように変革を起こすべきでしょうか。ビジネス変革を成功に導く5つのテクノロジーについてご紹介する連載企画。前回の全体像の紹介に続き、2回目の今回は、コンピューティングに焦点をあてご紹介します。

テクノロジーの進化は目覚ましく、シンギュラリティ(技術的特異点)が起こる日も遠い未来のことではなくなりました。最近ではAI活用に注目が集まっていますが、社会課題やビジネスにおける高度な意思決定を伴う取り組みにおいては、コンピューティング・インフラストラクチャーの進歩も同じくらいに重要となっています。富士通は、量子理論で新しいコンピュータを開発しHPCとハイブリッドに組み合わせて、複雑な問題を誰でも簡単に解決できる世界を目指しています。将来の商業利用に向けたチャレンジについて、AI、機械学習、量子インスパイア―ド技術をリードするMike Starkeyに話を聞きました。

目次
  1. 驚異的な進化で変化するスーパーコンピュータ
  2. 量子理論で新しいコンピュータの世界を拓く
  3. 量子インスパイアード技術の活用が広がる
  4. 富士通は、コンピューティング技術でビジネス課題を解決します

驚異的な進化で変化するスーパーコンピュータ

テクノロジーが進化し、シンギュラリティ(技術的特異点)の到来について科学者や未来学者が口にする機会が増えています。現在はまだシンギュラリティが起こる技術レベルに達してはいませんが、ここ数年で、着実にその方向へと加速しています。

例えば、「ビッグデータ」による大量のデータが生成・収集・蓄積されてきました。その中で、先が見通せない複雑な処理を伴う、創薬の迅速化や自然災害による洪水予測など社会的に大きな影響を与える分野で「データドリブン」による活用へと世界は変化しています。

このような進化ではAI活用に注目が集まりがちですが、社会課題やビジネスにおける高度な意思決定をサポートするうえで、コンピューティング・インフラストラクチャーの進歩はAI活用と同じくらいに重要です。例えば、理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」で、予め学習させたAIモデルを使い津波による浸水予測を3平方メートルの精度まで実証しました。

CPUの設計が向上しかつGPUの活用、内部回路の高速化などにより、古典的コンピューティングの性能は年々高くなっています。富士通が開発したハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)やスーパーコンピュータは、世界をリードする(※)テクノロジーです。

  • 日本の研究機関である理化学研究所と富士通が共同で開発したスーパーコンピュータ「富岳」は、2020年6月から2023年5月までのTop500ランキングで世界1位、HPCGとGraph500のランキングで1位を維持しています。

量子理論で新しいコンピュータの世界を拓く

スーパーコンピュータの発展に重要な半導体技術は進化を続け、帯域を広げる方法と小型化が進み限界が近づきつつあります。近年では、開発の難易度も高まりムーアの法則の終焉も語られるようになりました。
そこで注目され始めたのが量子コンピュータです。従来とは異なる原理で動作する量子コンピュータは、量子力学現象を利用することで高速に並列計算が可能となり、天文学的な組み合わせ計算でも短時間で処理でき、最適化問題など複雑な課題を超高速で解決へと導きます。

富士通は、HPCインフラ上で動作する世界最速の量子シミュレータを開発しました。そして、量子コンピューティングの応用先として有用な分野に対して、将来の商業利用に向けた取り組みをパートナーと共同開発を進めています。

量子インスパイアード技術の活用が広がる

富士通は、汎用性が高いゲート型方式の量子コンピュータ開発を続ける一方で、量子コンピュータのアルゴリズムを搭載したデジタルプロセッサ「デジタルアニーラ」の開発を続け、世界でもトップクラスで評価されています。

富士通のデジタルアニーラを使った最近の研究では、社会の緊急課題を解決するため、また高度かつ複雑なシステムを最適化することで人の能力を変革する課題に用いられています。例えば、PPEキット(個人防護用具)割り当て効率を90%向上することで倉庫でのピッキング時間を60%に短縮、自動車製造の改善検討に要した計算を40時間から5分間に短縮しました。また、生命を脅かす病気を治すため、優れた薬の開発サイクルに20億ドルもの費用がかかる創薬があります。富士通の新しい量子インスパイア―ド技術を活用したプラットフォームでは、経口投与が可能となる低分子リード探索のスピードと質を大幅に向上させました。新規分子を7週間で提供可能となり、現在では創薬までかかる時間が約8カ月に短縮しました。

富士通は、コンピューティング技術でビジネス課題を解決します

これまで、最先端のコンピューティングは、公的機関、大学、商業的な研究で利用されてきました。しかし、大きな発見と変革に必要とされる古典理論と量子理論の活用について、今後は最先端のIT部門に限定されるものではなくなります。

富士通は、HPCと量子理論をハイブリッドに組み合わせて、それらのリソースをAIが自動で選択でき、かつ容易にアクセスし利用できるクラウド環境を目指しています。このことにより、コンピューティングアーキテクチャを気にすることなく、複雑な問題を誰でも簡単に解決することができるようになります。どのような組織においても、HPCや量子コンピューティングを利用することができるようになったら、何が起こるでしょうか。もしかしたら、すでに答えをお持ちかもしれません。コンピューティングリソースの制約がなくなることで解決できる社会や事業における最適化の課題を、お気軽にお聞かせください。

Fujitsu
Vice President, AI and Optimization Technology
Mike Starkey(マイク・スターキー)

先進技術によるデジタルトランスフォーメーションに情熱を注ぎ、カナダのバンクーバーに拠点を置くFujitsu Intelligence TechnologyでCEOやステークホルダーと協働しています。富士通の技術的なビジョンとロードマップを推進するうえで必要な一貫性のある包括的な戦略を構築しています。富士通のAI、機械学習、量子インスパイア―ド技術ソリューションをリードし、会社の目標達成に向けた技術およびソリューション開発計画においてリーダーシップを発揮しています。

  • この記事はFujitsu Blogに掲載された「Harvesting the future: the innovation linking a global agricultural supply chain」の抄訳です。
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