リモートワーク化プロジェクト促進のために施された工夫
COVID-19の蔓延は社会の変化を巻き起こし、人々の生活や価値観にも大きな変化が起こりました。ニューノーマルが当たり前になりつつある昨今、これまでの常識や慣例、働き方にも変化が求められています。そんな中、富士通グループは当社のパーパスとして掲げる「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」ことを目指し、社内における様々な業務のデジタル化を推進しています。そして、そのデジタル化の取り組みの一環として、2020年4月より全社一丸となって社内のリモートワーク化を加速させるプロジェクトを開始しています。今回は、このプロジェクトの一端を担う紙・ハンコの削減 をコンセプトとした、書類や押印の電子化に向けた活動を取り上げていきます。

日本のビジネスシーンで多く利用されてきた紙やハンコを社内でデジタル化すべく動き始めた私たちですが、早速、全社的な制度、各部署での独自ルール、法律等、様々な課題に直面しました。このようなハードルを私たちはどのように捉え、乗り越えているのでしょうか。

各部門を横断する組織体制
グローバルで13万人の従業員を抱える富士通において、プロジェクトの組織体制をどうするかは非常に重要です。リモートワーク化プロジェクトでは、情報システム部門を始めとする、法務、人事、総務、財務経理といった各種コーポ―レート部門だけでなく、営業やSEなどが所属するビジネス領域にも担当者を立て、部門を横断するプロジェクトを組織しました。こうした体制を組むことで、迅速なコミュニケーションを可能にしました。
あらゆる現場の声を収集
プロジェクト担当者だけで活動していても意味を成しません。現場の声を聴くことも重要なポイントとなります。そこで現場の声を収集する手段として「VOICE」の仕組みを活用し、紙の利用率やその種別について一斉調査を行うことで現状をデータ化しました。
社内イベントを活用
また、現場の声を収集する別の手段として、「紙・ハンコ断捨離フェス」という社内オンラインイベントも開催しています。イベント内では匿名でコメントを投稿できるツールを用いて、身近に残っている「紙・ハンコ」や「それらを減らすための方法」について、参加者に自由に楽しく発言してもらいます。これによって、運営側だけでは分からなかった新たな課題に気づきを得ることができています。
テクノロジーを活用した、紙・ハンコプロセスの見直し
次に、紙・ハンコを減らすために私たちが社内実践している具体的な方法についてご紹介します。
- 書類受け渡しのワークフロー化
従来、社内レポート等の主な受け渡しではExcelを印刷した書類が利用されていましたが、ノーコード/ローコードツールの(※1)導入により電子化されたワークフロー処理が可能に。紙の書類の受け渡しの場面は徐々に減少しています。 - 契約作業も電子化
社外のお客様との文書の押印や署名を扱うシーンでは電子契約ツールを導入しました。これによりオンラインでの署名・押印・承認が可能になり、また、より信頼性の高い契約書を保管することが可能になりました。この電子契約ツールの利用件数は、導入されてから2年間で約76,000件にも上っています。(2022年9月時点) - オンライン名刺の活用促進
富士通では電子名刺ツールの利用も進めています。自身の名刺をオンライン名刺として他社の方と交換したりできるようにすると同時に、過去に顧客から受領して保管していた名刺を電子化し、従来バラバラに管理・運用されていた顧客情報をデータ上で一元的に管理することを可能にしました。現在では190万枚以上の名刺データを保有しています。(2022年9月時点)
- ※1ノーコード/ローコード:ソースコードを全く用いない、もしくは最小限のソースコードでアプリケーションの開発やWebサイトの構築ができる手法。
データで見る、富士通のリモートワーク化推進状況
社内のリモートワーク化を推し進める施策の積み重ねにより、富士通のリモートワーク実施率は飛躍的に上昇しました。並行して、紙の印刷枚数も減少しており、2022年度には4年前の約半分となる1億枚を切る見込みです。社内イベントやツール導入を通じて、リモートワーク化プロジェクトの効果は着実に現れていると言えます。

交通費や印刷コストといった費用削減も大きな効果の1つですが、それと同時に、働き方の変化に伴う従業員のエンゲージメントや生産性の向上など、単純に切り分けて数値化できない効果も推察されています。
本プロジェクトを通して目指したい富士通の姿
グローバル企業として社会の変革に貢献するには、デジタル化への取り組みが必要不可欠だと考えています。富士通はその取り組みの一環として、テクノロジーを駆使し、固定的な場所や時間にとらわれない働き方の実現を目指しています。また、この取り組みそのものも私たちの働き方を変える一つの要素になると考えています。
今回はその一例として書類や押印作業の電子化を推進する活動をご紹介しました。大切なのは制度、組織、慣行、あるいはお客様事情が絡む難しい課題にも、粘り強く取り組み続けること。時代の変化に柔軟に対応し、スピード感のある挑戦を繰り返すことです。まずは、このような社内実践を通じて富士通自身が変わることで、お客様や社会の変革をリードできる企業を目指します。そして皆様と共に持続可能な世界の実現に取り組んでまいります。
- ※この活動は富士通が推進するWork Life Shiftに則って従業員がより生産性高く、かつ働きやすい環境を目指し、物理的な制限を取り払うことを目標としています。職場から紙やハンコの根絶を目指すための活動ではありません。