コロナ禍で打撃の飲食店を救え!「データドリブン」で社会課題の解決に挑む

目次
  1. 脱!「勘」「経験」「度胸」。データに基づいた意思決定へ
  2. 「データ」が変えた!スーパーマーケットと選挙報道
  3. 飲食店出店希望者を徹底サポートする支援サービスとは?

2022年1月、富士通のデータサイエンスチームがプロトタイプ開発した「地域密着型出店支援サービスkokodo(ココドゥ)(仮称)」が、『都知事杯オープンデータ・ハッカソン』でFinal Stageに進出しました。新型コロナウイルス感染拡大で苦しむ飲食店に、データを活用して出店を後押しするという企画を形にしたものです。世界をより持続可能にしていくために、データに意味を与えてスムーズな意思決定を実現させること。そして社会課題の解決に役立てること。富士通の考える「データドリブン」について、具体的な取り組みを例に紹介します。

脱!「勘」「経験」「度胸」。データに基づいた意思決定へ

全世界で発生するデータの量は、2025年には2016年に比べて約10倍の163ZB(ゼタバイト)になると予測されています。取り扱えるデータは年々増え、複雑化し膨大な量となっています。世界が持続可能な成長を続けるためには、データとテクノロジーを駆使した変革が不可欠です。そのために、民間・公共サービスにかかわらず、生活者を中心としたあらゆるデータを統合したサービスの提供が必要だと考えています。
また、環境問題や新型コロナウイルス感染症の蔓延など、私たちを取り巻く環境は激変しています。収集したデータに背景と意味を付加し、社会にとって価値のある情報に変えることで、経験や勘ではない、データに基づいた経営判断やスピーディーな意思決定を実現させること。これが富士通の考える「データドリブン」です。
データに基づく迅速な意思決定は、新しいビジネスの創出を促します。また、業務プロセスの効率化や商品価値の向上、顧客体験の変革ももたらすでしょう。さらに、企業を超えたデータの活用が進めば、業界に変革が起きたり、持続可能な開発目標を実現したりということも。データドリブンは、社会全体にイノベーションを巻き起こすきっかけとなるのです。

「データ」が変えた!スーパーマーケットと選挙報道

データに基づいた分析の有利性を裏付ける事例を、ここで2つご紹介します。

1つめは、オークワ様です。オークワ様は、近畿・東海を中心に地域・顧客特性に合わせて、スーパーマーケット、ショッピングセンター、ディスカウントストアなどを展開されています。同社は廃棄ロスや機会ロスの削減を目指し、発注のベースとなる客数予測値の改善に着手しました。従来、店長の勘と経験に頼っていた客数予測にAI(人工知能)を導入し、気象情報、イベント・販促情報や、お客様の業務知見などを弊社の需要予測コンサルタントのノウハウによって数値化し、客数の影響となる外部要因を組み込んだ来店客数を高精度に予測しました。その結果、店長による人的予測と比較して約2倍の精度向上ができました。これにより、発注量を最適化することに成功し、商品の廃棄や値引きなどのロス削減に貢献できました。

2つめは、選挙報道の改革に向けた取り組みです。富士通は、日本経済新聞社様と、選挙に関する報道にデータ分析の視点を取り入れるべく、共同でデータ分析を行うプロジェクトを実施しました。
このプロジェクトでは、日本経済新聞社様の知見に基づき、過去の選挙結果に関するデータと、選挙区固有の地域特性や議員属性などのデータを掛け合わせるなど、これまでにない切り口での分析を行いました。具体的な分析例を以下にご紹介します。

1996年に小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、2017年までに8回の衆議院選挙がありましたが、当選した候補者の勝因は何だったのかにまず着眼しました。選挙の強さを左右する条件は「ジバン(地盤の強さ)」「カンバン(知名度)」「カバン(資金力)」だと言われていますが、それが事実かどうかをデータから探ったのです。
世襲候補は、先代から地盤や知名度を引き継ぐために有利と言われています。地盤の強さと当落の関係を調べるため、全候補者を世襲候補か否かに分別。すると、候補者全体のうち13%が世襲で、その勝率は80%に達しました。一方で非世襲候補は30%にとどまり、やはり非世襲候補は不利なことが分かりました。
次に探ったのは資金力です。総務省の公表をもとに候補者ごとに選挙区の有権者1人あたりの支出額を算出し、10円刻みで6つに分類したところ、0〜10円の候補者の勝率はわずか4%にとどまりました。10〜20円が35%、20〜30円が57%、30〜40円が62%と徐々に高まり、資金力がある候補が有利ということが裏付けされました。
他にも、振り子のように勝利政党が変わりやすい「スイングステート」を変動係数を用いて分析、選挙の情勢を映し出す地域として結果の予測に役立てたり、選挙費用をいくら投じれば当選しやすくなるのか、「当落分岐点」も算出しました。

これらは、日本経済新聞のチャートは語るという連載などで記事化されています。日本における選挙報道においては結果の報道に重点が置かれ、投票行動を分析する報道は一部に留まっていましたが、今回のプロジェクトにより、これまで記者が肌感覚で理解していたことをデータで実証することができました。今後は、分析の結果として得られた発見を取材で深堀りしたりすることで、事象の報道にとどまらず、選挙報道に深い洞察などを加えた新たな価値を付加し、購読者や有権者の政治への関心、参加意欲などの向上に寄与することを目指します。

飲食店出店希望者を徹底サポートする支援サービスとは?

今回富士通は、東京都のオープンデータを活用し、行政課題の解決に向けたデジタルサービスの提案と開発を行う『都知事杯オープンデータ・ハッカソン』にエントリーしました。エンジニアやプランナーがそれぞれ技術やアイデアを持ち寄り、短期間でアプリケーションなどを開発、成果を競う開発イベントです。

『都知事杯オープンデータ・ハッカソン』 Final Stage
(写真右下が、今回のデータサイエンスチームリーダー 寺島眞生)

今回富士通がプロトタイプを開発したのは、「地域密着型出店支援サービスkokodo(ココドゥ)」。飲食店の出店希望者の意思決定を促し、自治体が飲食店に対して迅速な支援を実現するというもの。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全国では4万5,000軒以上の飲食店が閉店を余儀なくされました。飲食店の出店は経営者にとって非常にハードルが高くなっています。
その課題を解決するため、オープンデータを活用し、都内のどこに、どんな味のラーメン店を出店するとビジネスが成功するか、経営者が判断しやすいダッシュボードを作りました。例えばラーメンの味や営業時間、出店のタイミングなどをはじめ、予算から出店エリアやメニューの価格、収支モデルなどを提案します。これまで「勘」や「経験」で意思決定をしていたのを、データに基づく合理的な意思決定に変えていくことができるのです。そして、出店に必要な申請手続きをワークフロー化してタスクを管理することで、店主の事務手続きにかかる工数を削減します。
また、自治体側でも、データを共有することで支援を依頼したラーメン店に対して、迅速に支援対応をすることができます。

出店希望者向けダッシュボード(例) : その地域の特性データに基づいた出店戦略をコーディネート可能
自治体向けダッシュボード(例):支援が必要な店舗をデータから割り出すことが可能

社会を取り巻く状況は常に変化し、新しい課題が次々と生まれています。
富士通は、データやテクノロジーを活用した生活者や社会の課題の解決に向けて、今後も様々な取組みを進めてまいります。

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