人々をもっと健康に。AI採点技術がフィットネスを一歩先へ

富士通が国際体操連盟と共同で開発したAI体操採点システム。今回、そこで培った骨格の動きをデジタル化しAIによって採点する技術を一般の人々の健康増進に役立て、ウェルビーイングを実現するために「体幹評価アプリ」を開発しました。そして、先日行われた「世界体操・新体操選手権北九州大会」の会場で一般来場者に体験していただきましたので、その様子をレポートします。

目次
  1. 体操採点の技術を健康増進に役立てたい
  2. 個人の体にあったフィードバックのため「体幹評価アプリ」を開発。体操界の協力で実証スタート
  3. 「楽しい」を健康につなげるために。体の動きデジタル化のプラットフォームによるウェルビーイングな暮らしへの貢献

体操採点の技術を健康増進に役立てたい

富士通は国際体操連盟と共同で、AIによる体操採点システムを作りあげ、2019年より実用化しました。(詳細記事はこちら)このシステムは、もともと採点の客観性・公平性を高めるために作ったものでしたが、連盟を始めとした体操関係者と議論を重ねるうち、このシステムを体に無理のない技への見直しや動きの指導に使うことで、体操界で問題視されている、技の高度化に伴う怪我の増加と選手生命の短縮の改善に役立てたいという声もいただくようになりました。
また国際体操連盟の渡辺守成会長は、「体操を通じて健康寿命を延ばすことで人々に幸せをもたらす」という理念をお持ちです。我々はその理念に共感し、体操採点で培った人の動きをデジタル化し測定する技術を、「ケガの防止」「カラダの回復」「運動不足の解消」といった、アスリートだけでなく全ての人々のウェルビーイングな暮らしの実現に向けて役立てたいと考えるようになりました。

着目したのは、コロナ禍における健康二次被害の改善です。外出自粛が続く中、在宅ワークからくる肩こり・腰痛問題や加齢がもたらす活動量不足の課題が顕在化しました。これらを解消するために、オンラインフィットネスが流行していますが、多くがインストラクターによるお手本を一方的に流すことしかできません。 そこで、体の動きをデジタル化する技術を使うことで、個人ごとに姿勢や動きのギャップを測り、カスタマイズされた改善アドバイスをフィードバックできるのではと考えました。

個人の体にあったフィードバックのため「体幹評価アプリ」を開発。体操界の協力で実証スタート

第一弾として、早稲田大学スポーツ科学学術院 金岡恒治教授によるスポーツ科学の研究成果に基づき、Webカメラの前で取った5つのポーズから腰回りを中心とした体幹の柔軟性や可動域をAIが評価し、個人毎に改善エクササイズを提案する「体幹評価アプリ」を開発しました。

測定画面:(左)ポーズのガイダンス、(右)ユーザのポーズ別撮影および測定結果
評価および改善エクササイズ再生画面:(左)全ポーズ撮影後の総合評価、(右)総合評価に基づいた改善アドバイスとエクササイズ動画

そして、2021年10月に開催された「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」で同時開催された「Sante Gym」(※)で来場者に体験していただきました。

※Sante Gym(高齢者向け健康増進イベント)での実証の様子

Sante Gymは、福岡県内の大型ショッピングモールでも開催され、競技会場とあわせて約700人の方に体験いただきました。一般来場者を始め、大会関係の医療チームのドクターや国際体操連盟のアンバサダーなど、多様な方々が本アプリの前で同じポーズを取り、個々に提案されるアドバイスと改善エクササイズをお持ち帰りいただきました。
参加者からは、「自分の悪いところがわかり、ためになった」「できていると思っていたことが実はできていないことがわかった」などよい評価をいただきましたが、最も多かったのは、「楽しかった」という感想でした。5つの簡単なポーズ、100点満点での点数付け、提案されるエクササイズは一つだけというシンプルさがこの体験を遊び感覚でできる敷居の低いものにし、「楽しい」「面白い」という感想につながっていることがわかりました。運動は本来楽しむものであり、楽しいからこそ継続し、それが健康につながるはずです。実証によって、このアプリが本当に目指すべき姿は「楽しく運動する」ことに役立てることなのだと、あらためて気づかされました。

「楽しい」を健康につなげるために。体の動きデジタル化のプラットフォームによるウェルビーイングな暮らしへの貢献

今回体験いただいた皆様の「楽しかった」「ためになった」を健康につなげるために、ご自宅や最寄りの施設でもいつでも簡単に、そして継続できるようなサービスを提供していきたいと考えています。そのために、我々はこの技術を体幹だけでなく、あらゆる体の動きに適用できるよう汎用化し、「体の動きのプラットフォーム」としてサービス化することを目指しています。例えばSante Gymに体験に来られた整形外科の先生からは、「膝のメソッドを開発する際は是非一緒にやりたい」との声をいただき、また別の医療事業者からは「医療、リハビリ分野への導入が期待できる」として、経営する病院およびメディカルフィットネス施設への導入相談をいただきました。さらにこの技術にダンスや筋力トレーニングなどの運動メソッドを組み合わせ、新しいフィットネスサービスを生み出すことも可能です。そのために独自の運動メソッドをお持ちの個人・企業、およびアプリ開発企業と積極的にパートナリングをしていきたいと考えています。

富士通は7つのキーフォーカスエリアをさだめ、それを支えるためにAIをはじめとする5つの技術領域に研究開発リソースを集中することを宣言しました。富士通が強みを持っており、デジタルイノベーションによってビジネスの変革と持続可能な社会の実現を行うために必要な技術です。
AI体操採点システムで培った人の動きをデジタル化する技術を様々な分野に展開し、広く社会に役立てることで、あらゆる人々のウェルビーイングな暮らしをサポートしたいと考えています。

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