「川崎市を先進モデルに」ー生活者視点×テクノロジーで挑む、トラステッドな未来社会

2021年4月、富士通は未来社会&テクノロジー本部を発足しました。この本部のビジョンは、あらゆる人々・組織と共に、トラステッドな未来社会を実現すべく、世界トップのテクノロジー開発に挑戦し、デジタルによる新たな「まち・暮らし」をデザインすることです。その取り組みの一つとして、川崎市とともに「持続可能な未来都市」を目指すプロジェクトも発足しました。川崎市と富士通が描く未来都市とは?市民目線でのウェルビーイングな未来都市づくりに、テクノロジーはどう貢献するのか?今回は、未来社会&テクノロジー本部の池田圭佑さんに、川崎市との取り組みや社会課題の解決に懸ける想いを聞きました。

目次
  1. 「Trusted Society」を実現するため、400人の仲間たちと知恵を出し合う
  2. 「最幸なまち」を市民と一緒につくりたい。川崎市×富士通の街づくり
  3. “自分”で勝負したい。価値観を変えた地域活性化プロジェクト
  4. 仲間とのチームプレーが好き。フィールドは野球からビジネスへ

「Trusted Society」を実現するため、400人の仲間たちと知恵を出し合う

――まず、池田さんが所属している未来社会&テクノロジー本部について教えてください。

池田さん: 私が所属する未来社会&テクノロジー本部では、未来社会をデザインするメンバーとプロセッサや次世代ネットワーク等の先端テクノロジー開発を担うメンバーが有機的に連携し、自分らしく豊かな暮らしが送れる、レジリエントで持続可能な社会『Trusted Society』の実現をミッションとしています。

いま世界は急速に変化し、不確実な時代を迎えています。地球規模で環境や社会の持続を脅かす事象が顕在化する中、テクノロジーの活用はこうした困難を乗り越えるための一助になるはずです。イノベーションによって社会課題の解決や社会の変革に主体的に貢献していく――そんな想いをもったエンジニアやビジネスプロデューサー、デザイナー、アーキテクトといった総勢410名の様々なバックグラウンドをもつプロフェッショナルなメンバーとともに、私たちは社会課題の解決に取り組んでいます。

「最幸なまち」を市民と一緒につくりたい。川崎市×富士通の街づくり

――2021年6月に、川崎市と持続可能な未来都市の実現に向け連携を強化すると発表されましたが、具体的にどのようなプロジェクトでしょうか?

池田さん: 川崎市様と共に『健康』『安全・安心』『環境』『仕事・暮らし』の4つのテーマを中心に社会課題に取り組み、『持続可能な未来都市』の実現を目指すものです。私は川崎市様とのフロントであるビジネスプロデューサーとして、川崎市様と社内外の関係者を繋げプロジェクトを推進していく役割を担っています。

川崎市は、富士通の創業の地ということもあり、川崎市様とはこれまでも一緒に成長し、強固な関係性を築いてまいりました。2014年には、ICT環境の充実や次世代育成などの分野における連携・協力を通じた持続可能な街づくりを目指すため、包括協定を締結。2017年には、富士通のスーパーコンピュータ技術で川崎市臨海部における津波被害を軽減する共同研究を実施するなど、地域課題の解決に取り組んできています。

そして2021年6月、連携をさらに強化。『健康』『安全・安心』『環境』『仕事・暮らし』の4つの重点テーマを選定し、富士通のAIや5G、スーパーコンピュータ技術、次世代ネットワークなどの最先端テクノロジーの活用で、街の価値を向上させ、先進モデルの構築を目指す取り組みをスタートしました。
現在、この重点テーマに関して、バックキャスティングで取り組み内容の検討を進めています。たとえば『環境』であれば、脱炭素社会でもたらされるありたい世界の姿を描き、その社会の実現に向けた課題は何か、その課題解決に対してどのようなテクノロジーが寄与できるか、川崎市様と検討を進めています。

――川崎市と街づくりを進めていく上で、池田さんが特に心掛けていることはありますか?

池田さん: 街を取り巻く課題は複雑に絡み合うもので、これまでの業種軸の発想ではなく、クロスインダストリーで取り組む必要があります。同時に、このようなイシューカットの視点に加え、実際課題が起きている現場、市民の視点も同じように重要であると考えています。

そのため、日頃対峙する行政の皆さんだけではなく、その先にいる何万人といった市民、川崎市中原区であれば26万人の方々を意識することを心掛けています。

本部としても生活者の視点から川崎市を理解しようと、川崎市にある本店(以下、川崎工場)周辺に居住する富士通社員2,000人にアンケートを実施し、どのような街にしたいか、街の課題や目指す姿など、市民のリアルな声を広く集める活動を進めています。また、「こうあってほしい!」という街への想いを語り合うオンラインワークショップも実施しており、富士通社員と川崎市様が語り合うことで、地域に密着したご意見や斬新なアイデアをいただいています。

――具体的に市民の方からはどんな声がありましたか?

池田さん: 交通や病院などの混雑解消や、憩いの場やエンターテインメントの場に対する要望など、まさに生活に密着した声が多かったです。また、住民同士の横の繋がりの希薄化など、川崎市様が課題として認識されている声もありました。
このような市民のリアルな『声』を今後も聞き、分析して、街づくりの活動に反映していく取り組みをアジャイルに実施していきたいと思っています。

――川崎市にとって、街づくりのパートナーとしての富士通の魅力はどんなところにあると思いますか?

池田さん: 単にありたい未来の姿を考えて終わるのではなく、テクノロジーカンパニーとして他社にない最先端のテクノロジーを用いて、課題の解決までやりぬくこと。さらに様々な業種や業界のお客さまとの取り組みにより培ってきた実践知を元に、クロスインダストリーの視点と現場・生活者視点をかけあわせてプロジェクトをリードしていけることが、富士通の強みであり、魅力であると考えています。

川崎工場周辺に居住する富士通社員、川崎市様と意見交換を実施しているオンラインワークショップの様子

しかし、持続可能な未来都市の実現は、富士通1社だけでは達成することができません。市民・行政・企業が一体となってプロジェクトに取り組む必要があると実感しています。日頃、我々が対峙している川崎市職員の皆さんは、行政の視点だけでなく、市民の視点も持ち合わせながら地域の課題を多角的に捉えてられています。その姿は、未来社会をつくっていくパートナーとして、とても頼もしく感じています。

――池田さんが考える理想の未来社会について教えてください。

池田さん: 富士通のテクノロジーが市民に常に寄り添う形で生活の中に自然と溶け込み、市民の健康や安全を裏で支えていく、それによって、市民一人ひとりがウェルビーイングを追及できる社会が、私の理想です。川崎市が抱える社会・地域課題への解決を通して、持続可能な未来都市を共につくり上げていきたいと考えています。

“自分”で勝負したい。価値観を変えた地域活性化プロジェクト

――池田さんが街づくりに取り組むことになったきっかけを教えてください。

池田さん: 私は、幅広い業種のお客さまと関わりながら影響力の大きい仕事をしたいと考えて富士通に入社しました。それから10年ほど営業として物流企業のお客さまに対して、ビジネスにイノベーションを起こすために富士通のテクノロジーやシステムをどう使えばいいのかという提案をしてきました。
その中で、高齢化をはじめとする多くの課題を抱える北海道夕張市(以下、夕張市)の集落に「助け合い配送の仕組み」を提案するプロジェクトへ参加したことがきっかけで、街づくりに興味をもつようになりました。

夕張市に何度も足を運ぶ中で、『集落を何とか良くしたい』という熱い想いをもち、集落を守り維持することに生きがいを感じている自治体やNPOの方との会話に心を揺さぶられました。
『大きな組織でなくても、個人の力で変えられることがある』――富士通社員としてというより、一人の人間として社会に貢献できることはないだろうか。そんな想いが芽生え、夕張市との地域活性化プロジェクトに3年ほど携わりました。そしてちょうど同じ頃、未来社会&テクノロジー本部が発足すると聞き、迷わず手を挙げて立ち上げメンバーとしての参画を決めました。

仲間とのチームプレーが好き。フィールドは野球からビジネスへ

――池田さんが仕事を進めていく上で、大切にしている価値観はありますか?

池田さん: 私は、お客さまの要望や課題にチームとしてどう取り組むか、チームをどうマネジメントするかを考えることに、仕事のやりがいを感じます。

もともと子どもの頃から、仲間と一緒に何かをするのが好きで、物心ついたときから野球漬けの日々でした。小中高大はずっと野球部。中学以外は、ずっとキャプテンを務めていました。

大学時代は120人近い部員をまとめていたのですが、一軍から三軍までそれぞれ野球に対するモチベーションが全然違います。キャプテンとして、いいチームにしていくために、メンバーたちの想いを理解したいと、チームメンバー一人ひとりと積極的に会話することを常に心掛けていました。そうすることで、立場は違ったとしても心理的な距離はぐっと縮まるんですよね。

いまの仕事も同じ。何より大事にしているのは『言葉で想いを伝えること』です。
『このプロジェクトにはあなたのスキルと力が必要です』と直球で伝えることで、メンバー自身が動きたい、役に立ちたいと思って貰えるようなチームづくりを目指しています。

とてもシンプルですが、私は皆で楽しく仕事がしたい。だから私自身、楽しい雰囲気づくりを大事にしています。そうした雰囲気の中で、個人が知恵を出し合い、協力し合うことが、ゼロからイチを創り出すイノベーションに繋がると信じています。

――最後に、川崎市とのプロジェクト、そして池田さんの今後の展望をお聞かせください。

池田さん: 様々な想いやバックグラウンドをもつ社内のメンバーたちはもちろん、川崎市や市民の方々と、『川崎市をより良い街にしていきたい』という同じ目標に向けて取り組むことで、“最幸なまち”を実現していきたいです。

また、今後は川崎市で出来上がったモデルケースを、全国の自治体や海外にも横展開し社会課題の解決に繋げていきたいと思っています。私生活では子どもが2人いるので、子育てしながら仕事をしやすい環境をつくっていきたいですね。すべての人が尊重され、暮らしやすい未来社会の実現に向けて、多様な人の繋がりから、新たな価値を生み出していきたいと思っています。

池田圭佑(いけだ・けいすけ)

1988年神奈川県生まれ。富士通入社後、物流業界の営業を担当。社内ポスティング制度にて新規事業部門へ異動。
物流業界担当時代は、ECの台頭により激しく変化する宅配市場において、ドライバー端末を活用した宅配事業のDX化及び新たな配送モデルの構築に従事。業務理解を深めることで、お客さまの事業拡大に貢献する「仮説」を基にした新規事業創出に取り組む。2021年4月からは未来社会の実現に向けて、街づくり事業に携わる。

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