DX(デジタルトランスフォーメーション)を支える共通プラットフォームに求められる要件とは

政府は、国内企業の競争力を強化するために、DXの推進を政策として掲げ、企業の経営改革を側面から支援している。本稿では、DXを支える基盤となる共通プラットフォームに求められる要件について考察する。

はじめに

経済産業省は、2018年9月に「DXレポート~ ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」を公表し、DXの推進に関する課題と対応策を提言した(※1)。また、2020年12月に「DXレポート2(中間取りまとめ)」を公表し、DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質、企業の経営・戦略の変革の方向性、政府の政策の方向性及び今後の検討の方向性を示している(※2)。

これらのレポートによれば、DXの課題はビジネス、制度、人材、テクノロジーなど多岐にわたる(図1)。本稿では、DXを支える基盤となる「共通プラットフォームの推進」に焦点をあて、共通プラットフォームの課題と求められる要件について考察する。

図1:DXの課題(対応策と今後の検討の進め方)
出典:DXレポート2(中間取りまとめ)

共通プラットフォームの課題

DXを支える基盤となる共通プラットフォームには、社会システムとしての高い信頼性とセキュリティの確保が求められる。

商流や物流、金流等の様々な情報をリアルタイムで流通させる共通プラットフォームは、産業界及び社会全体にとって重要なインフラとなるため、システム停止やデータ消失等を防ぐ高い可用性と冗長性が強く求められる。そのためには、機能やデータを分散させ、システム全体が停止しないことが重要になると考えられる。また、産業界や企業等が保有している既設のプラットフォームとの接続性や相互運用性の確保及び企業間でデータを連携するためのデータ項目やコードの標準化等が求められる。

一方、サイバーセキュリティの観点からは、扱われるデータが暗号技術等により適切に保護され、データの信頼性が確保されることが重要となってくる。データ保護のみならずデータ流通促進の観点からも、データ管理者(データ提供者)の意向に則したデータへのアクセス制御を適切かつきめ細やかに実施できることが重要となってくる。

共通プラットフォームに求められる要件

これらの課題を踏まえ、共通プラットフォームに求められる要件について安全性と利便性の観点から以下に例示する。

(安全性)産業界や企業が共通プラットフォームを信頼し、安心してデータを提供し合える環境を創出するために必要な要件

  • データ提供者が、登録データの公開/非公開などのアクセス権限を設定できること
  • データ提供者が、登録データの公開範囲をコントロールできること
  • データ提供者が、利用者毎のアクセス権限をきめ細かく設定できること
  • ブロックチェーン技術等を用いて、共通プラットフォーム上のデータの改ざんを検知できること
  • 操作ログ等の証跡を追跡して不正操作からの確実なデータの復元ができること等

(利便性)産業界や企業が蓄積してきたデータを標準形式に変換する作業を簡易化し、利便性の高いデータ利活用を実現するために必要な要件

  • データ提供時のフォーマット変換や文字コード変換等をGUI(※3)等により簡易に実施できること
  • 先行企業のデータ変換ルールを再利用できること
  • 個社が有するコードと標準コードの対応関係をその属性情報等から簡易に判断できること
  • 連携先プラットフォームの仕様に依存しないデータ照会API(※4)を提供できること等

共通プラットフォームにより、企業が安全かつ高可用なデータ連携でつながり、産業界全体でのデータ利活用が促進されることで、業務の全体最適化や新たな価値創出に貢献することを期待する。

注釈

中川 弘文(なかがわ ひろふみ)

Nakagawa, Hirofumi

行政情報化グループ プリンシパルコンサルタント

専門分野

  • 公共情報戦略(国、自治体、大学等)

公共分野(国、自治体、大学等)における情報戦略コンサルティング担当。情報化計画、BPM(見える化+変革)、データマネジメント(官民データ活用)、地方創生(計画+事業化)、PMO支援等のコンサルティングに従事。

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