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Fujitsu

Japan

PLEMIA M3 ECODUCE 導入事例


YKK株式会社 様

製品に使用する化学物質情報をDB化
顧客と自社双方の環境経営を実現

ファスナーをはじめとしたファスニング事業で世界的なトップブランドを誇るYKK株式会社。同社の中心的な生産拠点である富山県黒部市の黒部事業所では、2006年10月にYFGP(YKKファスニンググリーン調達)システムを富士通とともに構築。製品に含まれる化学物質の情報を顧客に対して迅速に提供することで顧客の環境面でのコンプライアンス実現を支援するとともに、グリーン調達を中心とする自社の環境経営も達成した。

野坂 武志 様 野坂 武志 様
YKK株式会社
ファスニング事業本部
品質・環境センター
品質保証室長

田畠 実 様 田畠 実 様
YKK株式会社
ファスニング事業本部
品質・環境センター
品質保証室主幹

吉田 玲 様 吉田 玲 様
YKK株式会社
ファスニング事業本部
品質・環境センター
品質保証室

3つの工場で構成されるYKK黒部事業所は、原材料の調達から最終製品の製造まで、ファスナーの生産を一手に担う中核的な存在だ。国内だけでなく海外にもそのブランドが広く浸透している同社は、海外での現地生産も展開しており、黒部事業所はその海外生産拠点を支援するマザー工場としての役割も持っている。

生産部門のコントロールタワーとも言える黒部事業所に、同社製品の含有化学物質について問い合わせや検査依頼が入るようになったのは、2000年代初頭のことだ。地球環境への意識向上を背景に、あらゆる製品について使用する化学物質に対する国や消費者の目が厳しくなり、同社製品を利用する顧客も、製品に含まれる化学物質を具体的に把握する必要に迫られたのである。

同社は当初、顧客から調査依頼があるたびに個別に分析を行い、対応していた。しかし調査依頼の件数がさらに増えていくだけでなく、環境に関する法規制が刻々と変わるのにつれて、調査依頼の内容も変わり続けた。特に同社製ファスナーを利用する電機・自動車・衣料品メーカーのような顧客は、グローバルで事業を展開している企業も多く、同社も各国の法規制の動向にキャッチアップし続けなくてはならない。ファスナーはアイテムと色、長さの組み合わせによって品番が数億通りも存在するという事業の特殊性も、増える一途の調査依頼に一件ずつ対応していくことを困難にしていた。

「これではやがて顧客の調査依頼に対応できなくなる。そういう危機感からシステム化を検討することになったのです」と同社ファスニング事業本部品質・環境センター品質保証室長の野坂武志様は動機を振り返る。

担当者のチームワークと
ものづくりへの姿勢を評価

2005年、野坂様をはじめとした品質保証室のスタッフは、製品に使用する化学物質情報を一元的に管理するYFGP(YKKファスニンググリーン調達)の構築に乗り出した。各製品について材料や副資材と、それらに含まれる化学物質の情報をひも付けした環境部品表データベース(環境BOM)を作り、製品から遡れるようにするシステムだ。

同社は7社にシステム提案を依頼。各社の提案をもとに3社に絞り込んだあと、最終的にパートナーに選んだのは富士通だった。「3社にはシステムの要件定義からお願いしたのですが、技術担当者と営業担当者の連携が良く、チーム全体が一丸となって当社の業務を支援しようという富士通の姿勢に頼もしさを感じました」(野坂様)。

同社が富士通の提案を評価した理由はもう一つある。構築するシステムは「環境」を目標にしているものの、基本的な役目は製品の設計や部品の管理をはじめとした、PLM(製品ライフサイクル管理)による製造業の業務支援であることには変わりない。他社の提案がまず「環境」システムありきからの切り口に対して、富士通は「ものづくり」の基本的なスタンスを踏まえたうえで、同社の含有化学物質管理環境対応アプリケーション「ECODUCE」で、YKKが望む機能を実現するアプローチをとった。そのことも、ものづくりという事業の基本を大事にしたいYKKの共感を呼んだようだ。

YKKは環境BOMの構築で顧客に対し製品の安全性を保障する

回答納期がほぼ半減
自社のグリーン調達実現の契機にも

こうしてYKKと富士通が手を組んで構築したYFGPは、2006年10月に稼働を開始した。

YFGPの導入効果は、含有化学物質問い合わせへの回答に要する日数短縮に如実に現れた。平均7日かかっていた回答納期は、システム導入により現在は3.9日にまで短縮。「実際には問い合わせのほぼ半分が即日回答できています」と野坂様はその効果の大きさに胸を張る。問い合わせを受けてから分析という受け身の対応だった頃と違い、システムで過去の分析履歴などを管理し活用できるため、回答納期の大幅な短縮が実現したのである。

同社製品を利用する顧客から見れば、資材選択の面でスピーディーな意志決定が可能になったことは言うまでもない。

もう一つ見逃せない大きな効果が、YKKのグリーン調達実現だ。「もともとYFGP導入以前からグリーン調達を志向していましたが、YFGPを最大限に発揮するためには、当社がまず仕入れ段階で環境に優しくない物質を排除しなくてはなりません。そこでサプライヤー各社の協力をいただき、グリーン調達を実現したのです」と、同社ファスニング事業本部品質・環境センター品質保証室主幹の田畠実様は言う。YFGPの導入が、同社の顧客だけでなく、同社自身の環境経営推進にも貢献したというわけだ。

黒部事業所での導入効果を確認した同社は、海外拠点へのYFGP導入にも既に着手している。「現在各拠点の担当者を日本に呼んで研修中で、2010年までには展開が完了する予定です」(同社ファスニング事業本部品質・環境センター品質保証室の吉田玲様)。グローバル展開を進める顧客に向けて、調査依頼を現地でも対応可能にすることで、YFGPの効果がさらに高まることが期待される。

野坂様は「将来的には、含有化学物質だけでなく製造工程でのCO2排出量管理などにも、システムを発展させていきたいと考えています」と展望を語る。

【会社概要】

YKK株式会社

1934年創業。ファスナー製造販売のファスニング事業、住宅・ビル用の建材事業、ファスナー・建材用製造機械の工機事業の3つを柱に、世界約70カ国/地域に事業活動を展開する。2007年度の連結売上高は6726億円。従業員数は約4万人。