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Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

2018年11月

株式会社セガ・インタラクティブ 様


VPSの活用で【生産準備~物流まで】を貫くコミュニケーションの深化を実現。
-組立指導期間20%圧縮、組立に起因する不良率半減、物流コスト30%カットを達成-

株式会社セガ・インタラクティブ(以下:セガ・インタラクティブ)は、セガサミーグループの一翼を担い、クレーンゲーム、アーケードゲームやメダルゲームなど、アミューズメント機器の開発・製造・販売を行う企業だ。エンターテインメントの先駆者として、世界初の体感ゲーム「ハングオン」や、「UFOキャッチャー」、「バーチャファイター」、「甲虫王者ムシキング」など、常に時代を牽引するイノベーションを巻き起こしてきた。同社は3Dデータを活用しコミュニケーションの活性化を追求。それを駆使するツールとしてVPSの活用を進め、確かな成果を上げている。

導入事例キーワード
設計品:
アミューズメントゲーム機器
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS(DMU,MFG,GP4)

ゲーム機が相互にオンラインでつながる時代の渦中で


松永 智裕 様
企画設計生産本部
生産部 副部長


神田 賢治 様
企画設計生産本部
生産部 第1生産技術課 副主査

セガ・インタラクティブは、効率的な投資戦略推進や市場変化に対応した生産を目指して、自社工場を保有するのではなく、全国6社の協力工場を活用したファブレス生産を進めてきた。

現在、店舗間相互をネットワークでつなぐ「ALL.Net(AmusementLinkageLiveNetwork)」を基盤として、かつて1台ずつスタンドアロンで動いていたアーケードゲーム同士がネットワークでつながり、全国規模での通信対戦や得点ランキング、さらにプレイデータの保存などができる時代になっている。

「ネットワーク化が進む中で、各地の工場で製造されるゲーム機も全国同時期に市場導入を図り、一斉稼働させる必要性が出てきたのです」

企画設計生産本部生産部副部長松永智裕氏は、そう語る。しかし、業務用のアーケードゲームマシンは、新作リリース時期に出荷ピークを迎えるので、通年で定量的な生産体制が敷かれているわけではない。したがって、各工場とも人員の固定化が難しく、作業者への指導負荷が大きくならざるを得ないという問題を抱えていた。松永氏はこう続ける。

「従来各組立現場では、紙ベースの組立手順書を利用してきました。しかし、その量が膨らみ管理負荷の拡大とともに、資料の取違えなどのミスも生じがちでした。そこで、デジタルで分かり易い資料を作成したいと考えました」

また、セガグループでは、「目」にフォーカスしたCI(CorporateIdentity)を2017年5月に発表。このCIはブランドイメージを視覚的・聴覚的に表現することを目的とし、人が心を動かされる時、最初に反応する目に着目している。このCIと現場作業者の目に訴えるVPSとのコンセプトの一致が、活用推進に一層拍車をかけることとなった。


組立手順書の動画化とコミュニケーションツールにVPSを選定

従来の手順では、生産現場は量産試作段階になるまでマシンの筐体を目にすることができないので、事前に組立方法をイメージすることができなかった。紙ベースの手順書はさらにその後から発行されるので、それだけ作業者の習熟が遅れ、ライン立ち上げまでのリードタイムも余計にかかってしまう、という悩みがあり「書く人によって表現やわかりやすさにバラツキがでる」という属人化の問題もあった。

そこで、紙の手順書に代わって、誰が見ても「何をどうするべきか」が、一目瞭然となる動画による手順書によって、協力工場の生産プロセス改革と同時に、各プロセス間を貫く高密度の相互コミュニケーション構築が目指され、2015年から模索が開始されたのである。

「もちろん動画といっても、実写では『現物ができるまで手順書が出せない』という点で、現状と何ら変わりません。当社では、当時既に設計の3D-CAD化が図られていました。その設計3Dデータを活用して、量産試作前に動画アニメーションによる手順書を提示し、現場で作業手順を事前確認することで、組立のポイントを把握してもらう。それによって工程全体の期間圧縮を進め、スピーディーな量産立ち上げの実現を図りました」(松永氏)

早速、組立現場が理解しやすい動画手順書を作るためのプラットフォームの選定がスタート。3Dモデルを活用するツールを比較検討した。そこで注目されたのがすでに導入していたVPSの存在だった。生産に関わるシステムの社内外への展開や教育研修、フォローアップなどを担う企画設計生産本部 生産部 第1生産技術課 副主査 神田賢治氏はこう語る。

「当社は、2007年の設計の3D-CAD化と同時にVPSを導入していましたが、実はこれまで、DRの事前検証や紙ベースの手順書作成などで活用していただけでした。しかし、今回のツール選定過程でVPSを改めて見直してみると、担当者も操作に習熟しており、使い勝手の良さも魅力でした。さらに弊社の3Dモデルの構成から動画編集がし易い事などを総合的に評価して、手順書作成のツールとしてもVPSを活用することを決定しました」


VPSを用いて作成された動画手順書によって、部内コミュニケーションが大幅に活性化。
新製品投入時の組立指導時間の短縮や、組立不良率の削減につながっている。


現場コミュニケーション向上で指導負荷軽減や不良率半減が実現

2016年、VPSを活用した手順書の動画化によって「誰が見ても誤解を招きにくい」仕組みが完成。表現に属人的バラツキが生じないように、手順書の文言や用語の統一も進め、VPSのマクロ設定で注記作成の効率化も図った。さらに、手順書のチェックを行う専任担当者を置いて窓口の一本化を推進。常に同一規準でチェックを行うことで、手順書の品質を担保したのである。

さらに、現場に「VPS AP Viewer」を載せたタブレットを配置し、ペーパレス化を促進。タブレットは一部貸し出しなどに対応しながら、基本的には各工場で調達・導入することを依頼。導入に先立って、各工場のライン長を一堂に会した説明・指導を行い、同時立ち上げの下地形成に努めた。

とはいえ、ファブレス生産を進める同社にとって、各協力工場はそれぞれ独立した別企業であり、紙の手順書に馴れた人たちの中には、新しい方式への切り替えに抵抗を感じるケースもあった。さらに、タブレットなどへの新規投資を納得してもらうには、相応の苦労があったことも否めない。

「タブレットを現場におくことで、『指導負荷が圧倒的に軽減されます』と工場サイドのメリットを訴えることで、上層部に理解を促しました。また、事前に作業者に動画を見せることで、『導入して欲しい』という現場の声が草の根的に広がっていったことも、普及促進の追い風になりました」(松永氏)

さらに、手狭になりがちな現場にタブレットを置くための治具や、終業時の収納や充電のためのステーションも内製して配布した。「世の中にないものは自分たちで作ってしまおう、というのが私たちのモットーなんです」と松永氏は笑顔で語る。

従来、各工場ではライン長がユニット単位で巡回指導を行ってきたが、動画手順書のおかげで、全ユニットへの同時並行的な指導ができるようになった。さらに組立前に動画で予習しておくことで、従来10台ほど組立てて体得できた『勘所』が、2台組み立てた段階で身に着くといった、作業者の育成促進効果も生まれた。

また3Dデータをベースに、量産試作に先行して動画の手順書を発行することができるようになった。その結果、各工場では事前に重要ポイントをイメージし、万全の体制で量産試作に臨む体制が整った。

「現在も各工場に、『毎朝作業前に動画手順書を見て、作業イメージを確認すること』を励行しています」(松永氏)

以上の努力が実を結び、組立指導期間の20%圧縮が実現。現場からは「新人作業者に代わっても、習得が早まり即戦力化できるので助かる」という声が上がっている。組立に起因する不良率もわずか1年で半減し、ブランドイメージの向上にも寄与している。

物流の効率化にもVPSを活用し輸送コストを30%削減

ネット通販の浸透などで物流需要が高まる中で、トラックドライバー不足が深刻化している。同社にとっても、物流の効率化は焦眉の課題だった。同社は以前から積載シミュレーションシステムを活用していたが、それは製品を箱形状の直方体として解析するものだった。しかし、実際の荷姿はゲーム機に即した複雑な形状となっており、製品の性質上天地逆積や上積みができない。解析結果と実際の齟齬が大きく、積載時の対応も悩みの種だった。

こうした課題に対しても、VPSの活用によってリアルな3D形状による積載シミュレーションが可能となり、立体的干渉や複数パターンの積載方法、荷下ろし順に至るまで積載プランの最適化が実現した。

従来、積載時に都度確認していた項目を事前に検証・確認することができるので、トラックドライバーへの的確な指示の下に積載時間の圧縮が実現。さらに、台数予測の精度も向上し、従来1台1店舗対応だった配送体制が、同じトラックで2店舗に配送できるケースも生まれ、年間の輸送費を30%削減することができている。

セガ・インタラクティブでは現在、生産ラインをシミュレーションできる「GP4」を導入し、目下ラインや作業動線の最適化提案を推進中だ。VPSを核に、部門や企業の枠を越えたバリューチェーン全体で、3Dデータの共有・活用を進める同社のコミュニケーション文化は、いま益々大きな成果を上げようとしてる。


以前は積載シミュレーションソフトを用いて直方体で積載検証を行っていた(左)。
VPSで立体的な干渉が想定できるようになり、トラック1台あたりの積載数増加や、積込・荷下ろしの効率化が実現(右)。

全国で稼働中のアミューズメント機器
セガ・インタラクティブの代表的な製品であるクレーンゲーム機。なお、「UFOキャッチャー」は同社の登録商標である。

【会社概要】

社名:株式会社セガ・インタラクティブ

  • 本社:東京都大田区羽田1-2-12
  • 横浜事業所:神奈川県横浜市神奈川区守屋町3-9
    安田倉庫株式会社守屋町営業所A号、C号ビル
  • 会社設立:2015年4月1日
  • 事業内容:アミューズメントゲーム機器の開発・製造・販売等
  • https://sega-interactive.co.jp/Open a new window