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VPS 導入事例

セイコーエプソン株式会社 様


組み立て性評価と量産ライン仮想検証で量産垂直立ち上げを目指す

プリンターなどの開発・製造・販売・サービスに携わるセイコーエプソン(以下、エプソン)の情報画像事業は、開発コストのさらなる削減を目指してプロセスの見直しに着手。量産設計の品質向上のためには、詳細設計以前にも量産性を検討することが重要と考えた。そのために採られたのが、すでに導入されていた富士通の3次元仮想設計支援シミュレーター「VPS」で組み立て性を事前に評価して設計に反映させるという方策。さらに、量産ラインのレイアウト変更に起因する手戻りを減らすために、生産ラインシミュレーター「GP4」も新たに導入。その結果、量産の垂直立ち上げが見込めそうだ。情報画像事業では、今後、VPSをバーチャルなものづくりの"マスター"にしたいと考えている。

導入事例キーワード
設計品: プリンター
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS

山岡 計次 様 山岡 計次 様
セイコーエプソン株式会社
情報画像事業管理統括部
機器情報化推進部
課長

武井 昭文 様 武井 昭文 様
セイコーエプソン株式会社
情報画像事業本部
機器生産技術開発部
課長

楠 実 様 楠 実 様
セイコーエプソン株式会社
情報画像事業管理統括部
機器情報化推進部
主任

 長野県諏訪市に本社を置くエプソンは、情報関連機器、電子デバイス、精密機器の三つの事業分野で製品の開発・製造・販売・サービスを行っている。その中でも特に大きな部分を占めているのが、情報関連機器事業の中の情報画像事業本部。インクジェットプリンターやスキャナーなどを担当している事業本部だ。
 同事業本部が3次元ものづくりに着手したのは1993年。まず金型検討業務に3次元CADを部分適用した後、翌1994年には一部の製品で3次元CADによる設計を開始。1998年にはプリンターのヘッドや外装、2000年にはメカニズム部分が3次元で設計されるようになった。1999年には、3次元設計のデータを管理するための製品情報管理システムも導入されている。
 さらに、2004年には3次元設計で作成したデジタルモックアップ(DMU)を他工程・部署で活用するための仮想試作ツールとして富士通の「VPS」を導入。同年度は1機種、2005年度は9機種の設計・生産準備・製造工程に適用して、バーチャルデザインレビュー(VDR)の結果を設計にフィードバックできることを確かめた。3次元設計データからVPSデータを自動生成する内製のVPSデータ管理システム(VPS/DMS)が2006年度に完成したこともあって、DMUの利用度は年々上昇している。


開発コストをさらに削減するには量産を見越した設計が重要

カラリオ

使い方に合わせて選べるエプソンのカラリオ・プリンター。VPS で組み立て性を事前に評価して設計に反映させる

 そして、2009年度--。VPS推進の第2フェーズが情報画像事業本部で始まった。その背景にあったのは、開発する機種数を増やしながら、試作の回数と台数を減らすことだった。すべては、開発コストを削減するためである。
 こうしたねらいを実現するための方策として考え出されたのが、商品化プロセスの全体を見直すことによって量産設計に早期から取り組むことだった。エプソンにおける、ものづくりの流れは、「基礎開発(KS)→構想設計(TS)→詳細設計(WS)→(海外現地法人への技術移転)→量産設計(ES)→量産(MP)」である。プリンターの場合は、インドネシア・中国・フィリピンの3カ所にある海外現地法人が担当している量産設計以降の工程のうち、量産設計の一部を国内で済ませようとしたのである。
 「従来、新機種の量産を始めるたびに設計と生産技術の部署から何十人もの技術者を派遣するのが常でした。現地に数カ月滞在し、組み順を決めて組み立て指示書にまとめたり、ラインレイアウトの設計をしたりといったESを行うのです」と語るのは、自らも数年間の海外滞在経験を持つ情報画像事業本部 機器生産技術開発部 課長の武井昭文氏。また、情報画像事業管理統括部 機器情報化推進部 課長を務める山岡計次氏は、「こうした海外への大量の技術者派遣によって日本側の設計パワーが弱くなってしまうことが懸念されました」と振り返る。


"組み立てにくさ"を数値で評価量産ラインの仮想検証も始めた

プロセスフローと使用ツール エプソンのものづくりの流れ。量産設計以降の作業は海外の現地法人で行われている

 そこで、情報画像事業本部ではVPSを利用した「組み立て性評価」の仕組みを新たに取り入れ、詳細設計までの工程で実施して設計に反映することにした。
 「従来から行われてきた『組順・構成検討』では、組み立ての可否と手順だけが検討の対象となっていました。一方、『組み立て性評価』では『組み立てにくい』『手が痛くなる』といった作業者の感覚的評価も数値化できるようにしてあります」と説明するのは、情報画像事業管理統括部 機器情報化推進部 主任の楠実氏。具体的には、組み立てフローに沿って作業を記述し、寸法形状(とても大きい/とても小さいなど)・把持注意(柔軟部の有無など)・締付方向(上向きなど)の項目ごとに"組み立てにくさ"の評価点をインプットして集計する仕組みになっている。ユニットやアセンブリーの評価点を積み上げていけば、製品レベルでの組み立て性評価も可能だ。
 また、量産ラインのレイアウト変更による手戻りとコストを削減するためのツールとして、富士通九州システムズが扱う生産ラインシミュレーター「GP4」を新たに導入。複数のレイアウト案を3次元表示で比較検討したり、ラインバランスの改善状況を積み上げグラフで可視化したりといった仮想検証が行えるようにした。
 この二つのツールの使い分けは、製品としての検討・評価はVPS、製造工程としての検討・評価はGP4で行うというのが基本だ。VPSを使って日本側で実施されているのは、組み立て性評価のほか、組順・構成検討、治工具検討、干渉チェックなど。海外現地法人では組立指示書をVPSで作成しているほか、VPSのDMUを使ったVDRやVPS/DMSにネットワークを通じてアクセスしている。


量産開始までの期間を短縮 将来は3次元全体をVPSで管理へ

 VPS とGP4 を利用した商品化プロセス見直しの効果として第1に挙げられるのが、量産開始時からのフル生産の実現だ。「これまでは海外の現地でなければできなかったラインバランス検討を日本側で先行できるようになります。立ち上げに要する期間も3カ月くらいは短縮できそうです」と武井氏。駐在させる技術者の数も、それに応じて減らせると言う。
 また、量産ラインの効率についても、手作業で設計していた従来にくらべて10%から20%は改善できたというのが武井氏の感触。組み立て性の改善による組み立て時間の短縮効果(3分から5分程度)と併せて、生産能力を高めるプラスの要因となっている。
 「長期的には、VPSと製品データ管理の連携によって、VPSを3次元ものづくりの"マスター"にしたいのです」と山岡氏。組み立て性評価と量産ライン仮想検証の実現によって、目標の6割は達成できたのではないかと話す。
3次元ものづくりの基幹ツールとしてVPSを社内に広め、定着を目指す--。楠氏を始めとする情報画像事業管理統括部・機器情報化推進部のメンバーは、これからも積極的な推進活動を展開していこうと考えている。

【会社概要】

セイコーエプソン株式会社

  • 本社:長野県諏訪市大和三丁目3番5号
  • 設立:1942年5月18日
  • 取締役会長:花岡 清二
  • 代表取締役社長:碓井 稔
  • 資本金:532億400万円
  • 従業員数:13,502名(2010年3月31日現在)
  • 従業員数(連結):77,936名(2010年3月31日現在)
  • 事業内容:
    情報関連機器、電子デバイス、精密機器などの開発・製造・販売・サービスに携わる。製造工程の多くは海外に移管されており、プリンターの製造ラインはインドネシア、中国、フィリピンの3カ国にある。