日置電機株式会社様
本社外観
日置電機様はお客様視点の観点から基幹システムを全面刷新(PRESS RELEASE)されました。今回はその中の生産管理にスポットを当ててお話を伺いました。
多品種・少量生産から変種・変量生産へ。お客様ニーズにリアルタイムで応え、市場変化にも即応できる生産の体制づくりは、モノづくりにこだわる企業にとってひとつの理想型ともいえます。その実現に向かって全社一丸となって挑戦し、ITを活用することでより効率的な生産体制を構築されました。
[ 2006年12月27日掲載 ]
導入事例概要 | |
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業種: | 製造 |
ソリューション: | 生産情報システム |
製品: | GLOVIA-C PRONES V10 、ハンディターミナル |
PCサーバ: | PRIMERGY |
新社屋・製品展示ゾーン
昭和10年に創業し、電気計測器や電子回路基板の自動試験装置など、産業用機器の開発、生産、販売で年間の売上高150億円を超える経営規模にまで発展を遂げた日置電機株式会社様。1990年には長野県東部の中核都市、上田市を一望する高台に本社・工場を移転し、さらなる事業の拡大を目指している。
日置電機様は社会貢献活動にも積極的に取り組まれ、緑化推進、地元住民との親睦イベント、新社屋内の大ホールでのリサイタル開催、財団法人を設立し奨学金による学生の支援など多岐にわたる。さらに福利厚生の充実した雇用制度もあいまって、地元を代表する企業として厚い信頼を確立している。
日置電機様のビジネスは驚くほどの多品種・少量生産が特長のひとつ。お客様からのオーダーに合わせて必要な部品はサプライヤーに発注し、本社工場で組立・検査・出荷、というのが生産での主なプロセスだ。その製品は200種類以上、生産を支える部品は1万2千種類にも及び、その仕入れルートは多岐にわたる。
新社屋・大ホール
こうした条件の中で独自の生産体制を構築すべく2001年から「HiPS(HIOKI Production System:ハイピーエス)活動を展開、より高品質、低コストの追究はもちろん、生産リードタイムのさらなる短縮、市場ニーズの変化に敏感に対応できる変種・変量生産を目指し、生産現場の抜本的な意識改革や緻密な業務改善活動を着実に行ってきた。
課題と効果 | ||||
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1 | 生産リードタイム短縮にシステムの制約が足かせになっている | ![]() |
GLOVIA-C PRONES V10生産情報管理とハンディターミナルにより、お客様が希望する納期を遵守するという観点で意志決定の迅速化や個々の生産情報の見える化を実現。さらなる改革の推進が可能になった。 | |
2 | 調達や生産計画変更に対し、柔軟に対応できていない | |||
3 | 標準納期遵守率も向上できない | |||
4 | これらが販売機会損失やお客様満足度の停滞の遠因にも |
根岸 誠氏
日置電機株式会社様 執行役員 製造部長
荻久保 博之氏
日置電機株式会社様 総務部 情報システム課 課長
「明日、出荷する分を、今日製造する。それを、毎日やりましょうというのがHiPS活動の目標の一つです。これまではあらかじめ生産計画を立て、その日に予定した数量を製造するというやり方でした。でもこの方法ですと、当社のような多品種・少量生産では作りすぎてしまう。市場のニーズや動向に関係なく私たちの都合で生産しているわけですから、すぐに在庫があふれたり、逆に在庫ゼロの製品も出るなどしていました」と語るのは、生産現場の最前線でHiPS活動を推進してきた執行役員 製造部長の根岸 誠氏。こうした状況を打破するために根岸氏の指揮のもと、マルチオペレーターによるセル方式の生産体制をはじめ数々の改革が進められてきた。
こうした中で特にこだわったのが、納期だ。「お客様が欲しい時に、すぐに納品できる。それがお客様満足に直結します。ですから、最短のリードタイムで発送できるような体制を目指しました。HiPS活動によって生産リードタイムは平均で3日に短縮されたのですが、これを1.5日まで短縮しようと。その時、問題となったのが既存のメインフレームだったのです」と、今回のソリューションのプロジェクトリーダーを務めた総務部 情報システム課 課長の荻久保 博之氏が説明してくれた。
日々の受注に対応して生産体制を確保するには、部品の発注データや生産計画を日次で処理することが必要になってくる。しかし、従来から稼動していたメインフレームでは発注や仕入れなどのデータをバッチ処理していたため、どうしても集計に時間がかかり、それがリードタイム短縮の足かせとなっていたというのだ。
その当時はHiPS活動の開始から3年が経過し、生産現場の改善は限界を迎えてきていた。さらに上のレベルを目指すためにITの活用が不可欠との結論に達し、生産管理を中心とする新基幹システムの導入が図られることとなった。
「お客様視点のシステムにしよう、という大きな目標がありました」と、荻久保氏は導入にあたっての基本コンセプトを語る。単に生産効率の向上を図るだけでなく、受注から納品、納品後のメンテナンスに至るまで幅広く対応し、お客様満足の向上に寄与するシステム構築が目標とされた。
「技術的な面では、母体とするMRP手法、マスターデータの移行や他システム(PDM、EDI、原価)との連携など、課題は数限りなくあります。こうした問題をすべてクリアして、予定通り稼動開始できるベンダーはどこか、と考えました。そうすると、もはや富士通さんしかありませんでしたね。」と荻久保氏は語る。続けて「パッケージの完成度も重要ですが、システム構築するのも、活用するのも"人"です。目的に対して妥協したくなかったこともあり、富士通さんへはかなり厳しい要求をしました。その都度、営業の方をはじめSEの方が来社して解決策をお互いに本気で議論し合うことができました。そのことが良い緊張感を生み、信頼関係を築くことができたと感じています」と説明してくれた。
また、推定在庫照会、受払情報、ロットトレース機能など豊富な機能が標準で用意されていた点も、PRONESを選択した大きな理由の一つだったそうだ。これらの機能は実際に現場で使われ、非常に役立っているという。
このような経緯から導入が決定されたGLOVIA-C PRONES V10だが、構築にあたっては日置電機様の生産工程に合わせて仕様変更がなされた。「同業他社と差別化したHIOKI独自の生産管理システムを構築したいので、富士通さんの仕様もこれに合わせてもらわないと困る、というスタンスでお願いしてきました」と荻久保氏。工程を洗い出すために生産の各部門の担当者がワークフローや操作マニュアル、運用方法などをファイルにまとめなど、工場全体を挙げてのシステム化に取り組んだ。
こうして取り入れられた独自の仕様のひとつに「設変対応」がある。日付や部品、在庫などの設定変更を柔軟に行えるしくみだ。「例えば部品で、登録コード上は別々で、どちらも同じように使えるというものが存在します。それらを柔軟に紐付けするのが在庫設変です。同様に、部品調達や生産計画の日付や調達ロットなどもシステムの中で紐付けできるようにお願いしました」と荻久保氏は説明してくれた。こうして、日置電機様の生産ノウハウが随所に込められた生産システムが構築されていった。
ハンディターミナル
もう一つ特徴的なのがハンディターミナルだ。生産が決定すると、従来は、作業時間等は日報で、作業指示は別の紙でと、それぞれバラバラに管理されていた。そのため、各製品の原価を算出するにも時間がかかり、またその精度も決して高いとはいえなかった。
そこでこうしたプロセスをハンディターミナルによるバーコード管理で一元化したのだ。作業指示書にあるバーコードを読み取ると、必要な部品の一覧がハンディターミナルのディスプレイに表示される。その部品を集める際も、現品票のバーコードを照合することで出庫ミスを防ぐことができる。そしてどんな製品を作ればいいかも表示される。
また、読み取った瞬間から誰がどの作業を開始したかが登録される。作業者が別な作業を開始すべくバーコードを読み込んだ瞬間、前の作業時間のカウントは終了し、新しい作業時間のカウントが始まる。
このようなハンディターミナルの活用により、製造にかかる部品単価、作業時間などが各製品に対してリアルタイムに集計できるようになった。日置電機様のような超多品種の製造でも、いつ、誰が、何を作って、その原価はどのくらいだったのか、すべてにわたって詳細に把握することが可能になったのだ。
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