気象庁マスコットキャラクター
はれるん
気象庁は「気象情報伝送処理システム」(以下、アデス)と「防災情報提供システム」を統合し、システム基盤を刷新した。
そのなかで、「FUJITSU Software Interstage Application Server」や「FUJITSU Software Symfoware Server」をはじめとする富士通のミドルウェアを活かし、気象情報亡失を防止し、異常時の待機系システムへの切り替え時間を従来の半分以下に短縮。信頼性と業務継続性を向上するとともに、自然災害発生時などの急激なデータ量の増加に対しても安定した処理能力を実現。防災気象情報を確実に提供できるシステム基盤を構築した。
[ 2014年6月6日掲載 ]
業種: | 官公庁・自治体 |
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製品: | ソフトウェア
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1 | 天気予報、注意報・警報など気象情報を確実に伝送したい | データの亡失を防ぎ確実なデータ保全を実現 | |
2 | 24時間365日ノンストップの安定稼働を実現したい | 待機系システムへの切り替え時間を短縮し信頼性と業務継続性を向上 | |
3 | 自然災害時などのデータ急増に迅速に対応したい | 急激なデータ量増加にも安定した処理能力を実現 |
気象庁は的確な気象情報の提供による自然災害の軽減、国民生活の向上、交通安全の確保、産業の発展などの実現を任務とし、海外にも気象情報を配信するアジア地域のハブ局としての役割も担っている。
近年特に防災気象情報の重要性が高まるなか、国民の命を守るため、2013年8月30日に「特別警報」を創設。数十年に一度の大雨や大雪、大規模な津波、火山噴火などが予想された際、災害発生の切迫性を伝えるために注意報から警報を経て段階的に発表される。
気象情報の集配信におけるシステムの中核は「アデス」と「防災情報提供システム」だ。
アデスは国内外の気象機関などとのデータ交換、および防災気象情報を行政機関や報道機関などへ配信するネットワークの中枢を司る。
防災情報提供システムは全国の気象台から各地の防災機関や地方公共団体などへ、警報、震度速報などの情報を配信する。
「自然災害はいつ発生するかわからない上、国内はもちろん世界中に高い精度の気象情報を絶えず配信しなければなりません。そのため、システムには信頼性の確保が非常に重要であり、24時間365日ノンストップの安定稼働が求められます」と気象庁は語る。
BCPの観点から、システムは東京と大阪の2局に分けて設置、回線も二重化されている。
2011年11月、気象庁は東京の両システムの統合とシステム基盤の刷新に着手した。
さらなる信頼性向上と最適化、観測データの高度化や予報の高精度化などに伴うデータ量増加(約3.3倍以上)に対応するための処理の迅速化などが目的だ。
その際の最重要点は、データの保全である。
「気象情報は利用者へ漏れなく確実に伝送しなければならず、亡失データの確実な検知は重要な課題です。そのほか、データ重複や追越の防止も重要です。例えば津波警報と解除報が逆にでてしまったら大変です。そのため、システムにはデータ保全を担保する仕組みが必要でした」と気象庁は話す。
両システムでは高信頼性確保のためさまざまな施策を講じており、その柱が共有ディスクを利用したホットスタンバイ構成の改善である。
特に今回のシステム統合・基盤刷新では、待機系システムへの切り替え時間短縮などに取り組んだ。
「24時間365日連続稼働が必須であるシステムで、保守や障害によるサービス停止時間の短縮は命題です。保守を含め、障害発生時の待機系システムへの切り替え時間は4分以内を満たさなければなりませんでした」(気象庁)
あわせて、システム統合にあたり、自然災害発生時などの急激なデータ量の増加にも安定して対応できる処理能力と業務継続性を実現し、また、予算内で最大限の費用対効果を得るため、富士通からデータベースを従来の他ベンダー製品から富士通製品へ変更することを提案。富士通のSEには短期間でデータベースをスムーズに移行する十分な自信があった。
今回のシステム統合・基盤刷新では、総合評価方式の入札を経て、富士通の提案が採用された。
システム基盤はアプリケーションサーバに「Interstage Application Server」、データベースに「Symfoware Server」、統合運用管理ソフトウェアに「FUJITSU Software Systemwalker Centric Manager」、クラスタソフトウェアに「FUJITSU Software PRIMECLUSTER」などのミドルウェアを導入。サーバ、ストレージなどのハードウェアも富士通製品を採用した。
アプリケーションサーバやデータベースなど、富士通のミドルウェアは国内のエキスパートがワンストップで直接対応する。「万が一の障害発生時には、ミドルウェアの深いレベルまで素早く対応してくれるので安心できますね。導入実績の多さにも信頼をおぼえます」と語る気象庁。
富士通の提案力やサポート力も高く評価する。「富士通のSEは気象庁の任務をよく理解して、最適な提案をしてくれました。充実したサポート体制も、システムの24時間365日安定稼働が求められる私たちにとって心強いです」(気象庁)
新しいシステム基盤で特長的なのは、データ保全のため、各業務アプリケーション間のデータ伝送の制御に、Interstage Application Serverによる非同期通信基盤でキュー管理を行う方式を採用したことだ。
非同期通信基盤のキューやデータの実体は、Symfoware Serverに保存する。
障害発生時のシステム切り替えにおいても、富士通のミドルウェアを利用して信頼性の向上を狙った。
「Interstage Application Server、Symfoware ServerとPRIMECLUSTERの連携によって、共有ディスクから待機系システムにデータを引き継ぎ、高速切り替えが可能なホットスタンバイ構成が効果的でした」と気象庁は説明する。
同時に、Systemwalker Centric Managerによって、システム全体を一元管理する体制も整備。配信テーブルやリソース状態を可視化する仕組みも導入し、システムのさらなる安定稼働を図った。
【気象庁様導入事例 システム概要図】
アデスと防災情報提供システムを統合したシステム「新アデス」は、2013年10月および2014年2月3日から3月14日にかけて、国内外の提供先機関を順次切り替え、情報提供を開始した。
新システムにおける各業務アプリケーション間のデータ伝送については、「Interstage Application Serverを軸とする非同期通信基盤によって、データ亡失を防ぐ仕組みを確立できたのが大きいですね。その結果、大量の気象情報のデータを漏れなく確実に伝送できるようになりました」と気象庁は強調する。
障害発生時のシステム切り替えにおいても、共有ディスクに格納されている非同期通信基盤のキューを継続利用できるため、素早くデータを引き継げるようになった。「従来のシステムでは8分近くかかっていた待機系システムへの切り替え時間が半分以下、目標である4分以内に短縮できました」と気象庁は笑みを浮かべる。
データベースに関しては、富士通のデータベース移行ツールを活用することで、移行作業にかかるコストダウンと期間短縮を図り、従来の他ベンダー製データベースからSymfoware Serverへスムーズに移行できた。
また、データの処理能力についても「気象データは瞬間的に大量のデータを処理しなければならないケースが頻出しますが、確実に処理できるので頼もしいですね」と気象庁。
「富士通の各ミドルウェアの有効活用によって、データ保全や信頼性の要求仕様を満たすシステムが短期間で構築できました。その上、内部のデータ処理能力も向上しました」(気象庁)
気象庁は今後、大阪の同システムの統合も同様に進める予定だ。そして、「システム基盤はミドルウェア製品群に任せて、私たちはその上位となる業務アプリケーションの企画や提供する気象コンテンツの開発により注力します」とシステム構築の全体的な方針を徐々にシフトしていく考えだ。
これからも気象庁は富士通と構築したICTシステムで的確な気象情報の提供を通じ、日本と世界に貢献していく。
省庁名 | 気象庁 |
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所在地 | 東京都千代田区大手町1-3-4 |
設立 | 1956年7月1日 |
長官 | 西出 則武 |
職員数 | 5,225名(平成26年4月1日) |
任務概要 | 的確な気象情報を提供することによって、自然災害の軽減、国民生活の向上、交通安全の確保、産業の発展などを実現することを任務とする。また、世界でも先進的な気象機関として、気象業務に関する国際協力も行っている。
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