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Fujitsu

Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

ETERNUSの製造現場「富士通ITプロダクツ(FJIT)」を探る
より良い製品をお客様に提供するために――品質にこだわるものづくり

  • 株式会社富士通ITプロダクツ
    • 製造統括部
      • プロジェクト部長  高柳 浩一
    • 装置製造部  GS/大型RAID担当
      • 担当課長  小根澤 慶昌

今回は、ETERNUS製品はどのように作られているのか、製品の品質向上のためにどのような取り組みが行われているのかなどについて、富士通ITプロダクツ(FJIT)の高柳と小根澤に聞きました。


――富士通ITプロダクツ(以下、FJIT)は、富士通のサーバ・ストレージ製品の国内生産拠点である。それまで国内に分散していた製造工場を1カ所に集約することでハードウェア製造工程を効率化しようという方針のもと、2002年4月に設立された。ETERNUSはFJITで製造され、全世界のお客様に向けて出荷される。

ETERNUSはどのように製造されるのか?

(高柳)製品の構成や規模によって異なりますが、ハードディスクなどの部品が揃ってから、組み立て、試験、出荷などの4つから5つの工程を経て製造します。大型装置の場合、着手してから出荷まで数日程度かかります。

工程におけるストレージ特有のこととは?

(高柳)他製品に比べて、ストレージ製品は組み立てよりも試験に時間を要します。特に大型の装置の場合は、昼夜を通しての長時間の試験もあります。

(小根澤)温度を変えたり、温度と電圧の組み合わせを変えた特殊な環境下に製品をおくことで、正常に動作するかどうかを確認する試験もあります。時間はかかりますが、品質を保証することにこだわりを持って、さまざまな内容で試験を行っています。

(高柳)装置に使われる部品は、納入された時点で実際にそのまま使えるものです。しかし、「悪い品質のものは出さない」という方針で、あえて我々のところでも温度や電圧をかけて耐久性を測るストレステストを行うことで、部品レベルから品質を保証しています。

ストレステスト開始 <出荷前の最終点検―温度、電圧によるストレステスト>
実構成の組み立て完了後、最終チェックには、温度、電圧のストレステストを実施。4つの環境を組み合わせた専用の部屋で経過時間の推移もあわせて確認します。
ストレステスト クリア後
この工程をクリアしたものだけが、出荷されます。

――「品質を第一に」というポリシーは、富士通の歴史が培ってきたもの。FJITは設立以降この富士通の伝統を受け継ぎ、品質を確保するためにさまざまな取り組みを行っている。

品質向上のためにどのような取り組みを行っているのか?

(高柳)ストレージ製品は、ハードディスク、半導体、プリント基板、電源など、さまざまな部品から構成されます。当然ながら、それらの部品も設計や評価という工程を経て製品化されますが、量産体制に入り数が増えると、中には規格から外れるものも出てきます。まず、そのような部品に対して受け入れる段階で徹底的に試験を行うこと。そして、少しでも問題があった場合には、部品メーカーにフィードバックして、根本から品質をカイゼンすること。そういった地道な作業を繰り返すことで、品質を維持し、向上に努めています。

(小根澤)製造品質における直行率(製造した全製品数に対し、製造ラインに何の問題もなく出荷した製品数の割合)を上げるために、ストレージ製品の品質会議を定期的に行っています。富士通側にも参加してもらい、相互に情報を交換しながら、「品質の向上」という同じベクトルを持ってコミュニケーションを図ってきたことも、品質の向上に大きく貢献していると思います。

(高柳)製造部門だけでなく、設計部門、品質保証部門、そして部品メーカーが一体となって取り組んでいます。製造段階に限らず、お客様に製品を出荷した後でも、問題があれば必要な部材をすぐに送るなどしてタイムリーに対応できますし、設計部門に問題をフィードバックして技術担当者と一緒に解決を図ることもできます。これは、国内で製品を生産しているがゆえに可能なことです。FJITという国内生産拠点を持つことが、富士通の大きな強みになっているといえるでしょう。

高柳氏「頻繁なコミュニケーションが支える品質向上」問題があったときの社内関係部門や協力会社との解決に向けた迅速な対応は、国内で製品を生産しているがゆえに可能なこと。FJITという国内生産拠点を持つことが、富士通の大きな強みといえるでしょう。

――FJITのこだわりは品質だけではない。品質を保証すると同時に、製造工程をカイゼンして効率化し、リードタイムを短くするために生産革新活動を続けている。その中心となるのが2004年に導入したトヨタ生産方式だ。たとえば、FJITではサーバやストレージ製品を一個流しという手法で製造している。

一個流しとは?

(高柳)一個流しの利点は在庫も少なくでき、リードタイムも短く、問題発生時も素早く対応できるので、品質も向上します。更に、複数個の製品をラインに流して製造すると、使用する部品を取り違えるといった問題が発生する可能性があります。一方、1つの製品をラインに流し、完成した後に次の製品の製造に入る、という一個流しの生産方式では、そのような問題は発生しません。また、問題が発生しても何が原因かを特定しやすいというメリットもあります。1つずつ順番に製造することで工程を効率化し、品質を向上しようという手法です。

一個流しなどのトヨタ生産方式の導入による効果は?

(小根澤)1つずつ製品をラインに流すことで、製造過程における無駄が見えてきます。試験における項目の重複や無意味な多重チェックといった無駄な作業を排除することで、品質向上のためのシンプルで本質的な製造プロセスが確立されます。また、実際に実践することで、ああこういう効果があるのかと多くのことを学んできました。
ただ、一個流しはあくまで手段の1つです。我々がトヨタ生産方式により実現したいのは原価の低減です。より良い品質の製品をより安く、より早くお客様に提供するということが我々の使命だと考えています。

トヨタ生産方式の導入において苦労したことは?

小根澤氏「高品質で、より安く、より早く」

(小根澤)導入目的はリードタイムの短縮ですが、同時に品質を堅持しなければなりません。そのためには工程で手間を省くだけではだめなのですね。お客様と接するフィールド担当からデータをいただき、工場内で得たデータとともに検討して、工程を効率化しつつ、品質を堅持するために、より効果的な試験をどのように組み合わせていけばよいか、富士通側と何度もディスカッションを重ねました。

(高柳)トヨタ生産方式は突き詰めると、それまで富士通で実践してきたものとはまったくかけ離れた方式です。当初はその用語や仕組み、考え方を理解し、それを現場に落としていくことが大変でした。
導入して8年目ですが、コンサルタントにはまだまだ無駄があると指導されます。たとえば、パソコンに入力して画面が表示されるのを待つ1秒間や部品を取りに行くための2、3歩も無駄だと指摘されます。途中でパソコンを操作しなくても試験を実行できるシステムを構築したり、最初から部品を手元に置くような作業環境を整備したりなど、無駄を省き、効率的な作業を行える環境の整備に苦労しています。しかし、これまでに学んできたことを土台にして、新しい装置の製造ラインでは次のステップに進めるという状態にはなってきています。

(小根澤)革新は止まらない、永遠に進歩しつづけることだと思います。常にカイゼンしていこうという「意識」がないと何事も進化していかない。我々は単にものづくりをしているのではなく、人づくりをしているのだなと最近感じています。

――どのようなカイゼン策を導入しても、意識を持って実践しなければ効果がない。FJITでは、トップから現場の担当者まで強い意識を持って品質の向上や工程のカイゼンに取り組んでいる。

ものづくり=人づくりを実現するために必要なことは?

(高柳)現場の担当者が何を考えているかを理解し、十分なコミュニケーションをとることです。
以前は、何か問題が起こると現場の担当者が責められる傾向にありました。けれど、最近では、問題が起こる原因は、現場の担当者ではなく、問題が起こるような環境や仕組みにある、つまり現場をちゃんと指導・監督できていないリーダーや幹部社員のせいだという考え方に変わってきました。
失敗すると怒られると思うと、問題があっても正直に言えないし、つい隠してしまいます。しかし、現場ではなく指導側が悪いという考えが浸透すれば、異常があったり失敗したりしたときに自分から手を挙げて申告してくれる。そういう風土を形成していく必要があります。
製造ラインでは、何か問題が発生したときにライトを点灯して異常を知らせるアンドン方式(注:FJIT現場レポート参照)を導入しています。導入当初は、自分が悪者にされると思うためか、なかなか利用されなかった。責任は指導側にあるという認識がだいぶ浸透した今では、担当者が積極的にアンドンを利用してくれます。
品質を確保するための第一歩は「気づき」だと思います。ねじ1本を締めるにしろ、「いつもと違う」という異常に気づくか気づかないかで、その後の品質が違ってくる。そのためには、現場の担当者の感性を磨くことが大切です。

現場の担当者の意識に変化はあるか?

(高柳)現場の担当者が仕事に対して高い意識を持つようになりました。たとえば、始業前に準備を行い、始業と同時に仕事を始められるように努力するなどの自主的な行動です。トヨタ生産方式を実践してきて、1分、1秒を無駄にしないという意識が根付いてきているのだと思います。

(小根澤)製造においてはQCD、つまり品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)が重要です。品質を維持しながらお客様への納期を守るためには、非常にタイトなスケジュールをこなさなければならない場合もあります。それでも、使命感を持って諦めずに取り組んでくれます。納期までに製品を出荷できたときには、良いメンバーと仕事ができて本当によかったなあと心から思います。

(高柳)QCDに対して高い意識を持った人がいると、周囲もその人に引っ張られて意識するようになります。非常に心強いです。

――カイゼンの道に終わりはない。FJITでは、今後どのような取り組みを行っていくのだろうか。

今後の展望は?

(高柳)品質をさらに上げていくためには、ICTを活用した自動化が重要だと考えています。人間の目で確認作業を行うと、やはり何十万回に1回は見落としが発生する。以前、製品名のラベルを貼り間違えて製品を出荷してしまったことがありました。この失敗から教訓を得て、画像認識処理によりラベルの判定を行い、貼り付けミスを防ぐ仕組みを導入しました[画像認識システム(外観確認の自動化)]。このような形で自動化を進めて、品質の向上はもちろん、リードタイムの短縮を図っていきたいです。

(小根澤)少ない人数でも生産変動にフレキシブルに対応できる製造ラインを作りたいです。これはトヨタ生産方式を進めていくことで、可能になると考えています。

(高柳)あとはエコですね。今までは作業手順のチェックを紙ベースで行っていましたが、装置1台につきチェックシートが1枚でも1ヵ月単位ではそれなりの量になります。紙を使わずに、パソコンの画面に作業手順を表示し、作業が完了したらキー入力していくようにカイゼンしています[さくさく手順書作成ツール][作業ナビゲート導入]。このようなエコのためのカイゼンをFJIT全体で進めていきたいです。

最後に仕事に対する熱い思いを聞かせてください。

(高柳)ETERNUSは、企業や官公庁など、社会のあらゆる場所で使われています。社会システムで安定して稼働する製品を製造することは企業として当然の義務ですが、我々自身がそこに少しでも寄与したいと考えています。
FJITは、品質を守る最後の砦です。この砦をどのように守っていくか、工場のみんなが砦の番人として品質向上に取り組みながら、ものづくりをしていければと思っています。

(小根澤)製造部門としてチームで良い製品を作っていきたいです。ETERNUSの製造チームが世界で一番強いものづくりの集団であれば、さらにお客様からの信頼も得られるでしょう。品質、コスト、納期のすべてに強いものづくりの集団を目指していきたいと思います。

――生産革新活動に終わりはない。ETERNUSの製造ラインではひとりひとりが品質向上を意識し、日々の作業でカイゼンを重ね、努力を続けている。富士通は今後も、品質へのこだわりを持ったものづくりの現場からより良い製品をお客様に提供していく。

(注) 取材日:2011年7月21日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日、または公開日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

>> FJIT現場レポート
「ストレージの製造過程を見学してきました!」はこらち

次回 「ETERNUS ディスクアレイの小型化・省電力化の軌跡
~環境や使いやすさにも配慮、実現させた技術と熱意」

掲載日:2011年9月13日


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