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Fujitsu

Japan

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

私たち、「安くて使いものになる」ストレージつくりました

今回は、2009年5月より販売開始を行ったETERNUS DX60/DX80が、企業ユーザーの要求にどう応えているのか。エントリーディスクアレイとしての"高い信頼性""低コスト"の視点から、開発にまつわるその具体的な取り組みについて、富士通の大山、中嶋、荒滝に聞きました。

(注)本稿は@ITで2009年9月に紹介した記事より、編集・構成しています。


  • 富士通株式会社
    • ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部 プロジェクト課長
      大山 貞之
    • ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部 ファームウェア担当
      中嶋 一雄
    • ストレージ事業本部 ストレージシステム事業部 システムハードグループ ハードウェア担当
      荒滝 新菜

――データの急速な増加への対応、バックアップ/リカバリー時間の短縮、システム全体のパフォーマンス向上、システムダウンの防止……。企業の現場では、これらの問題を、ますます高いコスト効率で解決することが求められている。こうした状況に対する答えの1つとして、富士通はエントリーディスクアレイ「ETERNUS DX60」「ETERNUS DX80」を2009年5月に投入した。

ストレージに関するアンケート調査を実施。その結果は?


2009年7月に実施したストレージに関するアンケート調査によると、ストレージ導入・運用上の課題として回答者の64.6%が「データ増によるストレージの拡張」を、また62.1%が「バックアップ/リカバリー時間の短縮」を挙げました。一方、ストレージ製品選択時の重視ポイントについては、コストの問題はもとより「連続稼働時の信頼性」「バックアップ時の処理速度」を挙げる方がいずれも50%以上という結果となりました。

この調査結果から確認できるのは、いま企業ユーザーは、とにかくコストの掛からないストレージを求めているということ、そして同時に、信頼性やバックアップといった部分での基礎体力が欠かせないと考えているということ。ある意味相反する課題とはいえ、企業としては当然追求していくべき要件とも言えます。

ETERNUS DX60/DX80は、こうした声に十二分に応えられる性能・機能を有し、エントリーディスクアレイという枠を超え"バリュー・フォー・マネー"を追求した製品です。

バリュー・フォー・マネーの追求 ~高信頼への道~

――ETERNUS DX60/DX80は、上位機種のDNAを継承している。その最大のポイントは信頼性にある。エントリーディスクアレイの分野に限れば、値段で勝負しても競合他社には必ずしも勝てないかもしれない。たとえそうであったとしても、富士通は高信頼性設計という部分をしっかり確保していこうと決めている。

信頼性は具体的にどう確保しているのでしょうか?


荒滝

「分かりやすいところでは、キャッシュの二重化、コントローラの二重化、キャッシュ内のデータの二重化など、システムを全部冗長化しています」(荒滝)。

電源ユニットやディスクドライブももちろん冗長化構成になります。これらの部品のいずれが故障した場合でも、システムを止めずに、いわゆる活性交換ができるようになっています。そして交換が終われば、その場で冗長性が回復します。

冗長化は設計面での対策ですが、評価の部分でも力は抜いていません。

「上位機種に比べれば安い部品を使わざるを得ません。しかし、1個1個の部品について擬似的に故障させ、壊れたときにどうなるかというテストを、 全チップを対象に行っています。これにより1つのチップが壊れてもシステムが止まらないということを検証しています」(中嶋)。

「部品を新規採用する場合も、信頼性保証部との協力のうえで、耐久性試験などにより使えることが確認されたものを採用しています。それにもかかわらず壊れた場合でも大丈夫なようにつくっていますし、検証もしています。つまり、設計思想、部品選定、検証のやり方は大型機とまったく同じです」(荒滝)。

ETERNUS DX60/DX80はETERNUS2000という製品の後継に当たります。新製品の開発に当たっては、ETERNUS2000においてフィールドで発生した重要障害をすべて分析し、同一の障害を発生させないことが徹底されました。

「富士通では製品出荷時に、不良品を振り落とすためのマージン試験を、全数を対象に実施しています。温度や電圧に関するチェックですが、エントリー製品もこの試験の対象としています」(大山)。

ただのエントリー・ストレージでは終わらない?


中嶋

さらに言えば、信頼性の確保については、エントリー製品ということからは通常思いつかないような用途も想定しています。

「エントリー装置であっても、単体としての信頼性を高め、スーパーコンピュータのような環境にも適用できるようにしています」(中嶋)。

「多数のドライブを積めば約120TBまで拡張できますので、中小企業だけでなく、大企業でも場合によっては使えます」(荒滝)。

また、今後ETERNUS DX60/DX80はファームウェアを拡張し、多数の筐体を束ねて処理を分散することにより大規模かつ高性能な環境を実現する「スケールアウト型」のストレージに進化させていきたいと考えています。記憶媒体としてSSDも予定しています。(注1

"バリュー・フォー・マネー"という観点でいえば、信頼性だけでなく、パフォーマンスや機能も重要だ。性能目標としては、前機種のETERNUS2000と比べて1.5倍以上を設定し、これを達成している。

(注1) 2009年10月にSSDを搭載可能にした。

バリュー・フォー・マネーの追求 ~低コストへの道~

――冒頭に取りあげたアンケート調査の結果では、ストレージ製品選択時の重視ポイントとして「導入コスト・保守コスト」が74.6%の回答を得て他を大きく引き離した。また「導入設定や運用管理のしやすさ」を重視する声も多く寄せられた。低コストの観点からは、価格にして数十万円から百万円を超えたあたりを最低構成価格とするエントリーレベルのストレージ製品が、いま大きな注目を集めている。しかし、エントリーディスクアレイにおいても求められる前述のような高信頼性、そしてハードウェア的な扱いやすさや環境面への配慮も重視される。

エントリー製品ならではの製品面での工夫は?


ETERNUS DX60/DX80では、保守性を高めるためにバッテリーは排除しました。通常のストレージ製品では停電時でも、キャッシュ上のデータを消失しないように、電源を供給するためのバッテリーが搭載されています。しかしバッテリーは充放電の回数に限界があり、富士通ストレージの場合は3年で定期交換が必要となっています。そこでETERNUS DX60/DX80ではバッテリーに代えて、充放電による劣化をほとんど気にする必要のない電気二重層コンデンサを採用。5年間の装置寿命のうちに定期交換しなければならない部品を全廃したわけです。

同時に、従来のエントリー装置はバッテリーからの電源をキャッシュメモリに供給することでデータを保護していたため、バッテリーが切れた時点でデータは消失してしまっていましたが、今回の製品ではコンデンサからの電源供給を受けてキャッシュメモリから不揮発性メモリへデータを退避するように改善。停電時間の長短にかかわらず、確実にデータを保護できるようにしました。

また、コントローラモジュールや電源装置など、主要な部品には故障の発生を示すLEDを設置。このため、故障部品の交換作業は、LEDの点灯している部品を活性交換すればよく、管理ソフトを立ち上げたり、コンソール画面で確認したりすることなく、故障部品を交換することが可能です。

「さらにコントローラの故障耐性を高めるべく工夫を施してあります。コントローラの部品が壊れた場合に、そのコントローラの動作が全部止まると、非冗長の期間が長くなって危険です。このため、壊れた部品が関係する機能だけを止めて、コントローラとしての動作をできるだけ維持できるようにしています。これにより、交換までにある程度の時間的余裕を持たせられるようにしました」(中嶋)。

――サーバ機でもそうだが、エントリー製品は必ずしも独立したコンピュータルームやデータセンターに設置できないため、動作音が大きな問題になる。また、ランニングコストに影響を与える消費電力も気になる。これらの点ではどうか。

環境性能も向上しているようですね?


大山

コントローラ×2、ディスクドライブ×12で構成したETERNUS DX60を、摂氏25度程度の気温の環境下で計測したところ、消費電力は330W、騒音は42dBでした。これは同条件で計測した場合の他社競合製品と比較して、最高の値を示しています(富士通調べ)。

「ETERNUS2000の際にも消費電力はかなり削減しましたが、今回はさらに改善しました。電源周りでの効率改善に加え、回転数可変空冷ファンのギアを増やし、回転数制御の点で厳しくチューニングしました。これはファンの動作音が温度変化に対して急激に上がらないことにもつながっています」(荒滝)。

ETERNUS DX60/DX80は「エコモード」も搭載しています。これはMAIDと呼ばれる技術で、アクセスのないディスクドライブの回転を止めることによって消費電力を抑えるというものです。例えば筐体内バックアップ機能を使用している場合に、バックアップボリュームとして設定しているディスクドライブ群の動作を、バックアップ時間以外は止めておくことが可能です。

――ETERNUS DX60/DX80がエントリー製品であるかぎり、コストとの闘いは避けられない。開発陣はコスト削減にどのように取り組んだのか。

低コスト化は丁寧にしかも徹底して進められたようですね?


「部品の価格は1円・1銭単位で徹底的に削るという地道な活動を行いました。ただし、それによってこれまでの保証ができなくなるといったことがないようにしました」(荒滝)。

コントローラの1チップ化などによって部品点数も極力削りました。さらに、ETERNUS2000では交換を必要とするバッテリーが別ユニットになっていましたが、前述のようにETERNUS DX60/DX80ではこれに代わる電気二重層コンデンサおよび不揮発メモリの部分を1モジュールに一体化しました。空冷ファンの数も、10個から4個に減らしています。またファームウェアにおいても、例えば、装置監視制御のための専用監視プロセッサをSAS Expanderチップに一体化すべく、2つの部品のファームウェアを一体化するなど工夫を施しています。こうしたさまざまな取り組みによって大幅な構造の簡素化と低コスト化を実現しています。

ETERNUS DX60/DX80/DX90 ディスクアレイ

2010年1月 クラス最上位モデル ETERNUS DX90を発表しています。

――「ETERNUS DX60/DX80」はまさに「バリュー・フォー・マネー」を追求した製品であり、信頼性、保守性、機能性、そして低コストへ向けた開発者の思いが、さまざまな部分で形となって現れている。また、2010年1月にはクラス最上位モデル DX90を加えるなど、お客様の要望に応えるべく機能強化を実施し続けている。

(注)本稿は@ITで2009年9月に紹介した記事より、編集・構成しています。
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

次回 『ストレージ基盤ソフトウェア「ETERNUS SF」の開発秘話と将来の展望


【ご紹介製品技術情報】
バックアップ時に業務を止めず運用コストを削減する ディスクアレイ ETERNUS(エターナス)DX60/DX80/DX90 登場

掲載日:2010年12月17日


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